理由は多々あれど。

僕が旧職場を辞めるにあたって。
理由は幾つもあった。シンプルではあるが、そんなに単純な事でもない。
迷いがなかった訳でもない。
でも(よく言われる)鐘が鳴ったというか、「辞めなければ」と言う気持ちが強くなった。
だから「辞めます」と劇団にお願いした。実際に退団する一年前のこと。

あまりオオゴトにしたい訳でもなかったけれど、隠すことでもないので、演出やスタッフの諸先生方には個別に挨拶し、生徒はキリが無いので組長さん・副組長さんと主演さんにだけはお話しした。結局、いつの間にか皆にバレてしまったけれど。
もちろん反応は様々で、それは有り難かったり面白かったりしたのです。まぁ、それはまたの機会に。

ただ、宝塚歌劇を愛していたし、愛したままで辞めたいと思った。*なんだか生徒の退団の言葉みたいですね☆
宝塚に夢を遺したまま辞めた方が、僕にとって宝塚は何時までも「夢の国」なのだから。

とある生徒さんに「もう宝塚嫌いになったん?」と訊かれたが、そうではない。先の言葉を彼女に返したら、「そうやね。やり尽くせることは無いものね」と。
やってみたい演目も、組んでみたい生徒も沢山いた。
ただ、時期が来ただけなのだ。

だから、宝塚への愛情も興味も失ってはいないけれど、離れて過ごす日々の時間の中で薄れてはいく。でも決してなくならないことも僕は知っている。
「もう一度、興味を持つ」なんてことは無い。だって持続したままなのだから。
そして、どちらかと言えば自分勝手に辞めた以上、それなりに距離を置かなければ、とも思っていたりもする。仕事で関わる事も無いから、観劇回数も減る(仕事として優先してみるべき演目があるからだ)。
それでも。それだからか。OGの皆さんに関わったり、たまに宝塚の残り香の中でこなす仕事があると面映ゆいばかり。でも、有り難く嬉しいのも事実だ。
キラキラとした儚い輝きを、幻の中にでも、いまだに垣間見る。

確かに言えるのは、僕自身の人生において。
宝塚に入れて良かったし、宝塚を辞められて良かった。
これは、退団したOGたちと分かち合う感情の一つでもある。
宝塚にいたら出会えた人もいるだろう。
でも、宝塚を出たから巡り合った人もいる。
それでいいんじゃないかな。

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