観た。2020/11/14『RENT』、2020/12/21『オトコ・フタリ』、2020/12/22『両国花錦闘士』、2020/12/24『ピーター&ザ・スターキャッチャー』

社会情勢が社会情勢だけに。
そして色々なスケジュールが交錯して、何故だかとても忙しくなってしまった2020年。例年よりは観劇が減ってしまいました。そんな中で厳選?された演目……いえいえ、これもすべて御縁です。諸々の巡り合わせで拝見出来ました。

シアタークリエにて『RENT』。
言うまでも無く素晴らしい作品です。勿論、何がしかの粗っぽさはあるのだけれど、それを凌駕する熱量と世界観。名作を名作たらしめる理由とは、完全無比な造りや整理整頓された構成にある訳ではなく、創り手の奔放なエネルギーと鮮やかなイメージが如何に放出されるか、だと思います。
エンジェルは同じ事務所の上口くん、ぐっちゃんでした。
エンジェルは最高級に素敵な役。なので、それを演るぐっちゃんは見ておきたかった。そして、期待に違わず、丁寧に大切に生きていました。
描かれる世界は、芸術家志望の若者たちの鬱屈した想いが充満したNYの片隅、時代は死に至る病に覆われた世紀末。生と死の騒々しい混淆。
現在では些かファンタジーな設定にも思えるかも知れないけれど、かつて、そんな、ヒリヒリとチリチリと皮膚を焼くような死と隣り合わせの熱い暗闇がありました。憂いに濡れて苛立ちに渇いていた。そんな時代の空気が作品には横たわっているのです。

やはりシアタークリエ『オトコ・フタリ』。
途中に中島みゆきさんや米津玄師さんの歌は入るけれど、ストレートな三人芝居です。
高名な画家のもとに転がり込んできた青年、その画家の家政婦。その三人の奇妙な共同生活と言った道具立て。
三人それぞれの物語がタテの糸とヨコの糸です。
軽妙に淡々と進む愛らしさとのどかさに、過去の傷と暗い思いがよぎる作品でした。ふんわりとほのかに明るい、午後の翳りにまどろんで垣間見た夢、そんなような。

明治座さん『両国花錦闘士』。
岡野 玲子さんの原作って、もう20年も前なのですね。
90年代のバブリーな残り香をふんだんに撒き散らして、終始アゲアゲでハデハデ、ワシャワシャと賑やかにパワフルな舞台でした。舞台に溢れ返るお相撲さんたちが逞しくもバカらしく、愛らしい。
個人的には、大好きなりょうさん(お会いしたことはございません)が大活躍で本当に嬉しかった☆

新国立劇場の小劇場で『ピーター&ザ・スターキャッチャー』 。
想像力を喚起する語りやギミックで展開される玩具箱のような舞台でした
そして、真っ直ぐで力強いエネルギーがスコールのように大暴れしていました。
そのスコールは、やがて鮮やかな冒険の虹を観る者の心にもたらすのです。
少年ピーターが「ピーター・パン」になるまでの物語。「ネバーランド」となる島で経験する大冒険。そして出会いと別れ。
いつだって少年の冒険は黄昏の香りで甘く苦く終わるのです。
そんな口の中に残るモヤモヤを何度も味わいたくて、可能な限り少年の時間を引き延ばしたいと思ってしまうのですね。
やはり同じ事務所に所属の入野自由くんが主演。
自由くんは、この世の(と言うと大袈裟だから、作劇上の空間の)歪みを正す力がある人ですな。彼の朗らかな明るさが世界を照らし、混乱した世界を整える。真っ当なものを真っ当に思わせる力があって、それにいつも敬服するのです。

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