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新井英樹の「キーチ!!」を読んだ後にBL漫画を読んだら温度差で吐きそうになった。

以前AV女優の最上一花さんが「宮本から君へ」のことを呟いていた。「作者本人が引用リプ送っててくれたことに今更気づいた!」みたいな呟きをしていて、そこから「キーチ!!」という漫画の存在を知った。(「宮本から君へ」はなんか肌に合わなさそうだったが、「キーチ!!」は直感的に合うと思った)ネットに転がっているコマを見てワクワクした。体の表面から芯まで熱くなるような感覚を覚えた。たった一コマ見ただけなのに。

以下ネタバレあり。

2巻まで読んでみたけど、確かに最初は読みにくかったが両親が殺され(ここはウィキや感想で読んだから知ってた)キーチが泣くところは僕も本当に泣いた。彼は三日三晩寝ず、三日三晩眠り、三日三晩泣いた彼は本能のままに動き感情の正義のままに全てに接する。

浦沢なんとか先生のNHKの番組、奇跡的に新井英樹先生ゲストの回がレコーダーに録画されていた。途中まで見た。漫画家ってすごい。そのへんの芸術家よりもよっぽどすごく見えるのは、やはり目に明確に見えるからなのか。人類、視覚が一番なんだろうか。ってかぶっちゃけバンドマンとかって楽器弾けるだけ、歌歌えるだけ、作曲できるだけやん。作曲担当、楽器担当、歌担当、編曲担当って分かれてて、みんなで一曲を作り上げる感じ。音楽って目に見えないから分かりづらい。…のになんでバンドマンはモテるのか、本当に謎。歌詞で「君はひとりじゃないよ」的な大したことしか言わないくせに。あれはステージに立つ人間が異次元のものに見える魔法にかかってるだけで、結局はただの錯覚なのだろう。漫画家って描くだけじゃなくて話まで作ってるんだから(細かいことを言うとアシスタントや編集の力も加わっているのだが)それを一人でやり遂げるのは本当にかっこいい。

先日買ったBL漫画「みなと商事コインランドリー」を手に取る。最近のBL漫画っぽいとても可愛らしい絵柄で、夏を感じさせる爽やかな男2人が並んだ表紙。ジャンルは違えど先程読んだ「キーチ!!」と同じ“漫画”という芸術作品。同じ紙の上の生きた人間。生きてる人間の街や風景が日常として作者の脳内のページを広げ丁寧に、時には乱暴的に落とし込んだものが漫画。同じ紙の上の世界なのに、こうも揺蕩う空気感が違うのか。この激しい温度差。調子が狂ってくる。感情が体調不良になる。

「キーチ!!」も「みなと商事コインランドリー」も、ファンタジーといえばファンタジー。でもリアルと直結してるところも多い。

「キーチ!!」は現実ピラミッドのトップに立つ人間の欲望により破壊されていく一般人の日常。それが当たり前すぎて誰も気づかないことに気づいていた、でも誰も気づかないふりをしている。それに対する激しい怒り。声をあげたいのにあげられない。そんな自分に「声が枯れようが叫べ、出なくても叫べ」と激しく殴ってくる。野生的で獰猛、しかしいざという時は冷静。まさにヒーロー。

「みなと商事コインランドリー」はセクマイゆえの悩みや臆病さ、若くて青くて真っ直ぐな感情。歳の差の恋愛。叶わない恋愛。余計苦しむことを分かっていながらそれでも誰かに憧れてしまう。

僕たちが漫画から得られるものは計り知れない。太陽に届くくらいの想いが紙の上で呼吸をしている。漫画を読む度に漫画と自分との摩擦熱が空虚を埋め、明日へ導く。僕にとっての希望は音楽なんて不確かなものではなく、漫画の方なのかもしれない。

漫画のような音楽、音楽のような漫画が好きです。

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