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僕らのホームベース(22.12.31)

 大学を卒業して4年経った。なにかと大学の街には毎年1度は帰ってきているが、毎度毎度高速道路を通るたびに元恋人や友達のことを思い出してはうるうるしている。今日も大学でお世話になったライブハウスでライブをするからうるうるしていた道を走らせるが、その道から見える大学の名前を眺めても何も思わなかった。時の力はすざまじいものである。今日知っているメンツはどのくらいいるのだろうか。そう思いながら車を走らせた。

 大学OBなら思うことがあると思う。4年経ったらメンツも完全に入れ替わって、誰が誰だかわからないあの現象を。第2の故郷だと思っていたこの街にもいよいよ用事がなくなってきたなと寂しさを感じつつ、運転していると見慣れたライブハウスが見えてきた。あの時入り浸ったライブハウスだ。思い出の詰まったライブハウスを見るとなんだかホッとして嬉しい気持ちが湧いてくる。

懐かしのライブハウス

 中に入るとお世話になったスタッフの方々が見えた。やけに心が安らぐ。知っている顔を見れることがこれほどまでに嬉しい事を知った。確かにメンツは入れ替わり、知らない人も多い。しかし、同期が4人いて後輩にも会えた。
「うわ~久しぶり~!なんか知っとる顔いると落ち着くわ~!」
と同期も気持ちをこぼす。僕だけじゃ無かったようだ。みんな同じ気持ちなんだな。プチ同窓会みたいで良い。

 スタジオに入るとドラムの師匠げんやさんから
「ハンマーがやけに上手くなっとる」
と爆笑しながら言われた。
自分はTwitterでよくスタジオ後自分の下手さに嘆くツイートをボロボロと吐き出しているが、どれだけ下手でも後に始めた人が追い越していっても絶対に諦めたくなかった。最近はどでかい劣等感に苛まれながらも、自分の悩みや下手な部分をノートに書いて上手くなれる道を模索している。その結果が周りの人に認められたのだと嬉しくて泣きそうになった。それで少し気が抜けたのか、1曲終わると
「最初のは良かったけど今のはダメ、スネアが弱すぎる。前のめりになって叩くのは良いけど、前のめりだとスネアを叩く幅がなくなって弱くなるから。振り上げる時は気持ち背筋伸ばす感じで行こう。」
といつもの感じで指摘をもらった。大好きです。全部メモしました。

 スタジオも終わり、ついに出番が来た。転換でステージに上がる。ほとんど知らない顔だ。大学の時を思い出す。身内のライブ感。同期のメンバー。みんなどこで何をしているんだろうか。

 ギターの西田さんが僕の方に寄ってきて背中を叩く。
西田さん「ハンマー広島ラストじゃけぇ存分に楽しめよ」
わい「テンポ倍々でいきますわ(笑)」
西田さん「行けるならええよ(スピード狂)」
わい「勘弁してください」

MC無しでやりきった。曲の繋ぎ目を打ち合わせ通りに。あっという間だった。新幹線に乗ってる、いや、新幹線になった気分だった。げんやさん、西田さん、おっきーさんが「いやぁ楽しかった」と笑っていた。ペダルを持ってステージを降りると
「めっちゃかっこよかったっす!!」
と後輩が言ってきてくれた。新幹線はめちゃめちゃ嬉しくてボロ泣きしそうです。本当に楽しかった。



夕暮れ。渡り鳥もこんな気持ちなのかなとハンドルを持つ手が震えた。いつか俺も誰かが帰って来れる場所を作って守り続けたいなと思う。





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