季節は今も昔も変わらない

ごん、ゴロゴロゴロゴロ、こーんっこんっこんっこんっ。
「また落ってきたんかいや」
山の小粒栗が落ちてきたようで、おばあが反応する。栗が何個落ちているかと思うとワクワクした。道路に転がる栗を集めてボウルにポイっ。虫食いの栗は水に浮くからボウルに水を入れて浮いたやつを捨てる。虫食いはニガイ。売ってあるデカい栗も美味しいが、小さい栗もほのかに甘くて美味しくて好きだ。日々貯まる栗に愛情が湧く。指で転がしたり、目の上に乗っけて遊んだりした。秋。

 「ただいま」
 「おかえり、しげちゃん芋食うか?」
 「んー、ええわ」
 「なんだいや、いらんのんか、どうしたんだ芋嫌いか?おばあちゃんは食べるで?」
 おばあは芋食いを誘ってくる。巧みな誘いとさつまいもの美味しそうな匂いにつられてモグモグ。台所で座るおばあと食べるさつまいも、窓から日差しが差し込む夕方。お風呂から上がるおじいの声。秋。

 村に子供は僕と兄と兄の同い年の友達、マメ。木の棒でチャンバラごっこしたり、枯れた草むらに入ってバシバシ斬っていく。バッタが驚いてピョンピョン。青い草はしぶとい、切れずにへし折れるだけ。悔しい。兄が竹をカッターで加工して剣みたいなのを作ってきた。青い草も切れるし本当の刀の形をしていて羨ましい。ずるいでそれ!貸してや!秋。

 ゲームボーイアドバンスは日差しで画面が見えない。ゲームは外ではやりにくい。ポッケに入れて魚釣り。向かいの山の日の当たり具合で時間がわかる。そろそろか。チャイムの時間がずれて、曲も夕焼け小焼けの秋仕様に変わっている。ちゃんと帰るよ、おばあの孫だから。秋。

 ゴミを燃やすおじい。近くに河原石製かまどを作って焚き火をする。おじいはすぐに帰る。日が暮れて寒くなると火が優しくて中々離れられない。遠くでおばあの探す声が聞こえる。離れたくないなぁ。「かんぱちのさしみがあるで帰ってこいや」水ぶっかけて踏んづけて走って帰る。秋

 河原階段に座る。コーヒーとおにぎりを買った。たまには外で食べるか…。夏っ気もすっかりなくなった風に吹かれて空を見る。秋だったんか。買ったコーヒーを開けることなく食べ終わった。秋。


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