カネコアヤノで究極体

 暑い。機械の殺菌でお湯を80℃以上沸かして循環させる。温泉街かと思うくらい湯気がボアボア。30分後にはコックを開けて排水、90℃くらいまで上がっている。洗浄の仕事になるのだが、すでにメーター振り切ってる車のような仕事ぶりなのに、大日本帝国軍上層部かと思うくらいの上からの無茶な命令を下されているから、排水中も突撃して仕事をしなければならない。水位は8センチくらいで足がアチイ。長靴の中が熱気で満たされて痛い。湯の中に漬けるステンレス製のでっかい板を4枚取り出す。これまたアチイ。1メートルくらいの板を焼きたてのさつまいもを素手で取るときみたいにアッチッチッチする。

 この仕事内容なのでみんな嫌そうな顔。でも僕は違う。大声のカネコアヤノである。ニコニコ。「音楽が終わるとぉ同時に」のとぉ〜の部分が大好き。「感動している些細なことで〜♪」無敵だ。湯気で前が見えない状況で熱唱。気持ちいい。足元はバカ痛い。カネコアヤノが響く部屋。

Bobさんのしゃかしゃか→曲サイコウ

 「なんで楽しそうなんですか?」

 柔軟剤のいい匂いのおっちゃんアルバイト。「カネコアヤノを熱唱するとなんでも楽しくなりますよ。」
「カネコアヤノ、有名な人ですか?」
「あいみょんではないけど基本あいみょんのように一人で弾き語りしている女の人です、ほんとめっちゃいいんですよ…(くどくどくどくど)」
「カネ、なんでしたっけ」
「カネコアヤノです」
「聴いてみます」
ニヤリ。

 休憩に入った。汗で冷えてキンキンに寒い。おっちゃんがクーラー20℃にしているから内心「バカヤロォ…」と唱える。歯がカチカチ。うつ伏せになってお腹と床の空気が逃げないように両腕を横につけると、なんとか凌げる。イヤホンで音楽を聴く。カネコアヤノだ。眠い時は聴こえるか聴こえないかくらいの音量で聴くと子守唄のようで安心する。おすすめ。はふぅ、ぐっすり。休憩で寝れると後半戦もアクセル全開メーター振り切りで仕事ができる。ありがとうカネコアヤノ。頑張ってくるよドルルン。

 オフィシャル先行でカネコアヤノ武道館当落発表だったようだ。カネコアヤノファンの通知登録は300人くらいまでしていて、常に通知がくる。
「当たったー!!」
「LP付き!ワクワク」
「カネコファンの人会いましょう!」
デヘヘ。楽しそうで良い。フォロワー200人くらいは行くよってのをみた。…え?
僕は休みが取れるかわからなかったから申し込まなかったが、1月で辞める約束を取り付けたからいける。ファミマ先行頼むで。


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