恋人繋ぎとマーガリン入りレーズンパン
恋人が手を繋いで歩いている。急速に深くなる秋の醍醐味の、恋人繋ぎである。お互いに手の温もりを感じることで2人の実感が湧く、幸せ爆上がりのアレだ。仕事前マーガリン入りレーズンパンを片手に持っているわいには眩しすぎる光景である。眩し過ぎて失明しそうだ。うわぁ〜目がぁ〜。
2人はニコニコしながら話していた。何を話していたんだろうか。ちょっと気になる。幸せそうな2人は深い秋の冷え込みに負けない暖かさを生み出していて、完全に無敵状態だ。手に持っているマーガリン入りレーズンパンのマーガリンすら溶けていきそうである。くぅ〜!羨ましい〜!
こんなことばっかり呟いたり考えたりしていると永遠にできない気がする。彼女欲しいと連呼しているやつにできた試しがない。本当に欲しいなら黙っておくべきか…とは毎度毎度思っているが、喉元で止まらずに口から出てしまっている。
「はぁ、彼女が欲しい…」
休憩中最後のマーガリン入りレーズンパンを持ったままうつ伏せてしまうのも仕方がない。心の底から恋愛したいのだ。
「10キロランニングを再開しよう」
やはり自分磨きしかない。怪我と風邪を引くまではやっていた10キロランニング。かなり締まって良かったが、大体一回止めてしまうと再開するタイミングが掴めなくて、そのままフェードアウトとしてしまう。辞めてから2ヶ月、確実に膨らみつつあるのに体重は変わらない。筋肉だけ落ちて脂肪は付いている状態だろう。かなり深刻な状態だ。早く再開しなければならない。
拳を硬く握りしめて走る夜道。彼女と手を繋ぐときはそっと優しく。強く優しく。これがモテ男子の特徴だ。たぶんおそらく。明日からおにぎりひとつにしよう。今日で終わりだ。マーガリン入りレーズンパン。
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