見出し画像

飛び立つタイミングを失った蝉

今年に入って、まだ蝉の鳴き声をきいていないように思う。転職してから、東京の真ん中にいる時間が長かったからだろうか。それとも、6月からはじまった突然の暑さに飛び立つタイミングがわからないのだろうか。

飛ぶタイミングは重要だ。蝉には下界で過ごせる期間がたった1週間しかない。ここぞというときを選びたいのだろう。それは6月下旬では、時期尚早なのかもしれない。

夏生まれのわたしは、もうすぐ25歳になる。年齢だけをきくと、立派な大人だ。大人であることを、否定できない年になった。

25というと、6年生のときにみた『ブザービート』の北川景子さんより年上だ。わたしも大人になったら、彼女のように友達とルームシェアをしたりするのかなという感じで、今よりもちっちゃいわたしは憧れていた。

けれども現実はどうだ。思ったより、子どものままじゃないか。わたしはまだ実家暮らしである。

家の立地もあるのだろう。すぐ隣が東京であるならば、必ずしも新しい拠点をもつ必要はないとも言える。そして結局、そのまま実家にとどまっているのだ。

実家のよさは認める。とても住み心地のよい安全地帯だ。
自分でやらなくても、1週間後に同じ服をきることができるし、食事にも困らない。そのうえ、胃が痛くなったときには心配してくれる人がいるし、明かりをつけたまま寝ても消してくれる人がいる。

けれど、どこか後ろめたさを感じていた。わたしは本当にこのままでいいのかと。なにも自分でやらないまま、大人を続けていっていいのかと。

飛び立つタイミングを失った蝉とは、わたしのことだったかもしれない。

そして先日から、転職活動をしている。ちょうど1週間前、予期せぬかたちで会社を辞めることになったのだ。だから次の仕事を探している。

わたしには、きっと今だったのだろう。

飛べっ

自分で自分のことをできる大人になるために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?