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いまわたしは、靴ひもを結び直している。

だれかと並んで歩いているとき、靴ひもがほどけることは稀にある。

そういうとき、わたしはその場に立ち止まり、上体をかがませ、急いで靴ひもを結び直す。その間、隣を歩いていた人は前へと進んでいる。わたしは結び終わると、小走りでその人へと追いつく――。

わたしは今、靴ひもを結び直しているのだと思う。

今年の1月末につとめていた会社をやめて、そのあと転職した先は、3か月でやむを得ず辞めることになった。

ずっと新卒から同じ会社につとめている人はもう2年半以上の間、働いているが、わたしはどうだ。大学を卒業してから無職でいるのも、5か月目になる。無職の期間が長くなればなるほど、同級生たちに追いていかれている気がした。

だからわたしは今、靴ひもを結び直しているのだと考えることにした。ちゃんと結ばなければ、またほどけてしまう。だから慎重に慎重に、またほどけないように結び直している最中なのだ。

そして靴ひもをきれいな蝶々の形にできたのなら、小走りで追いつけばいい。それだけのことだ。

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