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落ち込んだときに会いに行くあの人。

自分が褒められたときのことを、思い出すことってない?
わたしの場合、とくに落ち込んだときに、よく思い出している。たとえば-30になった自己肯定感を、せめて-15くらいには回復させたい、そんなときに使っている。

たとえば、大学1年生の講義中にみた「あの人」。講義中に教授がスクリーンに「1本の動画」を映しはじめた。画面に大きく登場したのは、自分が今使っている”ケータイ”を作った人だった。
再生ボタンを押すタイミングで、ふと、動画の時間を表示するバナーが出てきた。そこには小さく”15”の文字がみえる。この動画、15分以上あるのか……。思いのほか長かった動画に、少しばかり落胆してしまう。大学時代のわたしは、YouTubeをあまりみない学生で、動画といえばバンドのMV、その大半が5分以内で終わるものだったから。そのうえ、前回の講義はマトリックスの図を書いたりして、きちんと経営の勉強をしていたような記憶があって、唐突なスティーブジョブズには、余計に戸惑ってしまった。

いつもの3倍も長く、そして理解のできない動画だからといって、居眠りするわけにもいかなかった。なぜならこの授業は、最後に感想を提出するタイプの講義だったのだ。動画が流れているこの時間内に、さささっと書き終えて、講義終了と同時に勢いよく教室を飛び出してやる。そう誓った。

このとき再生されたのが、このスピーチだった。

結局その動画がおわっても、感想シートは真っ白のままだった。だって、ジョブズがすごく良いことを言っているんだもん。その日から、彼は私の英雄になった。
とっくに感想を出した友達たちを待たせながら、わたしは感想シートに、こんなことを書いた。

今日先生がスティーブジョブズのスピーチを見せてくれたのは、この先どこかでこの動画が役に立ってくれるからなのかなあと思いました。

わたしの感想文より(うろ覚え)

1年後、ゼミ生として入ったわたしに向かって、先生は、この感想の感想を述べてくれた。
言葉こそ忘れてしまったが、たしかに褒められた瞬間だった。

スティーブ・ジョブズのスピーチは、その内容だけでも十分に素晴らしいにもかかわらず、わたしには「褒められた思い出」というトッピングまでのっている。
だからわたしは、もっぱらこの動画に戻ってきてしまうのだと思う。

落ち込んだときには、褒められた思い出を召喚すること。おすすめです。


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