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推し活にめざめる
わたしはいわゆる「推し」をつくらないようにしていた。アイドルを応援することで、自分の人生をおろそかにしそうで怖かったのだ。だから当然、アイドルなどの推しがいる人がいう「推しが幸せなら幸せ」だとか、「推しはみんなのもの」だとか、そういう推しを公共財化するという考え方にも疎かった。
けれど今日、わたしにも推しができてしまった。できてしまったというより、実はずっと推していたことに気づいたという方が適切かもしれない。
12時半すぎ、食堂にいくと「Bランチ」が売り切れていたのだ。日替わりで変わるBランチのメニューは、カニクリームコロッケだった。
カニクリームコロッケ。わたしは一番好きな食べ物だ。オレンジ色のさくさくとした衣に、とろっととろける白いクリームがたまらなく好きなのだ。
なのに売り切れ。時刻はまだ12時半なのに。結局わたしは、食堂をあとにして近くの中華料理屋でお昼を食べることにした。
その夜、食堂に行ったというお姉さんが、みんなカニクリームコロッケを食べていたと言っていた。
それを聞いて、わたしはなんだかちょっとうれしくなってしまった。ははん。やっぱり、みんなカニクリームコロッケが好きなんだ。だとしたらしょうがない。人気ものなのだもの。わたしは食べられなくても、カニクリームコロッケがみんなから好かれてることがうれしい。そう思った。
これはきっと、推し。
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