憧れの人を写経する。

文章をかく人のなかで、憧れている人は何人かいるけれど、そのうちの一人が平野紗季子さんである。小学生の頃には、プロフィール帳のような体裁をしている食日記をつけていたという、ちょっと異常なまでに食べ物がすきという方だ。そして、彼女の食への偏愛がこぼれでる文章が大変すきなのである。

2018年に買った、雑誌「POPEYE」の別冊付録としてついていた彼女の小冊子をいまでも大切にもっている。本は片手で収まるくらいのサイズ感で、オレオの上下どちらか1枚分くらいの薄さである。この冊子であれば、彼女の文章を軽々と持ち運ぶことができる。そんなところが気に入っている。

最後の1ページには、紗季子さんがロイヤルホストをすきな理由がかかれていた。それを写経することにした。もう4年も前に一度よんだものだけど、よかったという読後感だけは、いまでも覚えていたからだ。

写経というのは、その人の文章をそっくりそのまま書きうつすことなのだけど、やってみるのは記憶の限り、はじめてだった。

本に印字されている文字を、Wordにうっていく。いつもとは違う変換の仕方に、パソコンの予測変換が戸惑っているのがわかった。「わたし」という字は「私」に変わり、句読点はいくぶんか少なめだ。文章に、息継ぎをぎりぎりまでしない水泳選手のようなストイックさが垣間見える。

とくに、歌詞を文中に引用するときには「@YUKI」などとすると可愛げがあっていい。今度わたしが、@をつかったときには、紗季子さんの真似をしているのだなと、くすっと笑っていただければ幸いだ。

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