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気まぐれエッセイ

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時に幸せを、喜びを、 時に苦しさを、寂しさを、 その日その時ありのまま、気まぐれなエッセイたち。
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#ことば

自己顕示欲にまみれたこの指は、 ついさっきまで幼い子どものあたたかな体温を感じていた。 煮詰まったこの頭は、 ついさっきまで自由に美しい言葉を愉しんでいた。 小さな画面を凝視するこの二つの目は、 ついさっきまでにこやかな風景を見つめていた。 何かがずっとある、賑やか過ぎるこの目の前は、 少し前まで、何もなかった。

生きている途中

夜、静まりかえった道を、もくもくと歩き続けるのが好きだ。         沿道の木々や土は、香り豊かなことに気づく。   光は、どこかに進んでいるのだということに気づく。   夜の靄が身体を包み込み、虫の音と共に身体の芯に染み渡ってくる。   どこからかやってきた蜘蛛の巣が腕に絡み、ぞわぞわっとする。   車の音や、ふと目に入った木々に、ゾッと恐怖が沸き起こる。   遠くに望めるビルやホテルの明かりに、私は確かにこの町の一部なのだということを実感する。         歩くこ

便利になるほど、自分を信じられなくなっていく

私のGoogleカレンダーには、 たくさんの予定と、その予定で忘れてはいけない事項と、タスクと… たくさんの情報が入っている。 大抵のことは、Googleカレンダーをチェックすれば問題なく思い出せる。 なるべくGoogleカレンダーに全てのことを書き込むようにしたのは、 脳の容量の節約のためである。 人間は126bitまでの情報量しか処理できないとされており、 「これ覚えておかなきゃ」という雑念はなるべく排除した方が、目の前の物事に集中できる。 効率化を目指す

強い不安と共に生きている気がするのです。

何か結果を出すために活動を続けるのは、 無条件に自分を信じることができず不安だから。   理論武装をするのは、 結果が読めずにコントロールできないのが不安だから。   一発芸を27個持っているのは、 27回までの無茶振りに答えられない自分が不安だから。   熟語や横文字をよく使うのは、 簡易な言葉を使って、表したい意味合いを伝え逃してしまうのが不安だから。   頻繁に悩み、数日寝て過ごしたりするのは、 大きな身体・精神的ダメージを、気付いた時には負っていた、というのが不安だか