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シニアこそ、Smart home生活  #デジタルで変わったこと

 8ビットパソコンが日本国内でも話題となり、我先にと高価なパーソナルコンピューターを入手していた時代、それが1980年代だった。当時の私は20代でメインフレームと呼ばれるコンピューターのエンジニアをしていた。勿論、携帯電話も登場していない時代だ。その後のITテクノロジーの発展は目を見張るものがあった。エンジニアの中でも追随できず、落伍していく者も多かったように記憶している。

 IT業界の競争も激しさを増す一方で、通信業界も劇的に変化していった。持ち運べる電話、すなわち携帯電話は富裕層のものだとばかり思っていたら、あっという間に庶民の手が届くような価格で提供されるようになってしまった。パソコンも同様に高価なものではなくテレビ同様に価格も下がり誰でも手に入れられるようになっていった。そして、現在、携帯電話そのものが過去のものとなりスマートフォンが世の中の標準になってしまっている。もはや電話機ではなく、手のひらの上のコンピューターである。携帯電話が登場した時に、アップルのジョブズ以外で今の環境を誰が想像していたのだろうか。少なくとも私には想像すらできていなかった。日々のテクノロジーの変化に遅れをとるまいと必死にもがいていただけのような気もする。

 あれから40年以上の年月が流れ、私自身引越しも何度も繰り返し、家電やパソコン、スマホを幾度となく買い替えてきた。今振り返ってみるとスマホは財布以上に生活の中で重要な位置を獲得しているように思う。我が家では、引越しと同時にエアコンを4台購入したが、全てがネットワークに接続されている。加えて、リビングの照明、空気清浄機など通常のパソコンやタブレット以外でもネットワークに接続されている家電が増えたのだ。家庭内LANを確認すると実に20台以上の端末がネットワークに接続されている。当然、その恩恵を享受しながら日々の生活を送っているのだが、普段は当たり前だとしか思っていない。そしてそんな生活が日常として定着している。

 我が家では犬も飼っている。なので、ペットを家に置いて外出した際に、部屋の温度チェックや暗くなる前に照明をつけるといった行為を外出先のスマホから実施している。ちょっと前だったら、気になるから早く帰らなければと思っていたことだろう。また、時にはWEBカメラで元気な姿も遠隔から確認や話しかけもできてしまうのだ。

 極め付けはスマートスピーカーかもしれない。何かあれば、スマートスピーカーにお願いすることで結構解決してしまうことも多い。音楽をかけることは当然だが、定期的な薬の投与をリマインダーにセットしておけば忘れることもないので、ペットのフィラリアの薬の投与日をセットして忘れないようにできている。

 今、デジタル化の恩恵は日常生活をかなり侵食し始めていると感じている。侵食という言葉はいいイメージはないが、どこかに不安を抱いているということを考えれば正しい表現ではないかと思う。不安の一つに、最近ペンを握らなくなってしまったことが挙げられる。スマホで検索し、必要ならスマホにメモをとる。それが便利で時間の短縮にもなるからだ。だが、その反面、いざ自分でペンを取って漢字を書こうとすると、なかなか漢字が思い出せないのである。漢字を読むことはできても書けなくなっている自分に気づき、唖然としたこともあった。だが、人間は慣れるものである。いつしかそのことも当たり前として自分の中で消化してしまった。

 便利になるということは功罪両面があるとは思うが、圧倒的に生活が便利になることは間違いないと感じている。物議を醸し出しているマイナンバーカードもできればデジタル化してスマホに取り込んで欲しいと思っているし、確定申告のe-TAXも重宝している。何しろ混雑する税務署に足を運ぶ必要はないのだから。つい最近のことでいえば、定額減税における処理もそうだった。私の家庭はすでに年金生活に入っているので、所得税を全て減税してもまだ足りない。そんな時、マイナンバーカードを使って自宅から減税できない分の調整給付金の申請も難なくできてしまった。翌月には振り込みまで完了した。実に楽ちんである。今は年寄りこそITスキル、いやスマホのスキルを身につけることで豊かな老後が見えてくるのではないだろうか。

 我が家では最近新車を購入した。そして驚いた。安全を守るためのセンサーの多さに。車の周りは全てセンサーによって守られていると言っても過言ではない。しかも、スマホとも当然のように連動してくれる。鍵をかけ忘れていないかなどということまでスマホに通知してくれるのだ。「なるほど、新車の価格が高くなっているわけだ」と妙に納得してしまった。出かける前は行き先をスマホで検索し車のナビに送る。実に効率的に時間が使える。今では、家の中だけではなく移動手段の車の中でもスマホは必需品になってきたと感じている。

 デジタル化が進むことによって、少なくとも私の生活は一変した。家の中も車の中も。そして、このことは今後も加速していくのだろうと思っている。今、この原稿を書くのもパソコンに向かってキーボードを打っているだけである。紙に書いていたならば何枚も紙を無駄にしたかもしれないが、デジタルであれば何度でも書き換えられるのである。最もコストを考えた時に、一番変わったのは取り放題が実現できている写真かもしれない。フィルムを使っていた時代には考えられないことである。

 オールインワンのスマホの進歩にこれからも期待したい。我々の生活の質の向上のために。できれば、これからも懐に優しい価格でテクノロジーが進化していくことを切に願う。死ぬまでその恩恵を享受するために。

おわり



#デジタルで変わったこと


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