アンプラグドの流行/井上竜仁

1990前半、音楽界で「アンプラグド」が大流行しました。「アンプラグド」とは、電気コードを外した生の音、を意味します。

エリック・クラプトンがグラミー賞を独占

ブームを不動のものにしたのは、その名もずばりのアルバム「アンプラグド」が世界で1500万枚売れたエリック・クラプトンです。

1970年発表の代表作「いとしのレイラ」を生ギターの伴奏で静かに歌い上げるなど落ち着いた雰囲気を出し、1993年開催のグラミー賞で主要6部門を独占しました。

1993年6月には、パワフルさで知られるロック歌手ロッド・スチュワートが「アンプラグド・アンド・シーテッド」を発表し、話題になりました。

「レトロな時代」でベテランにもチャンス

「アンプラグド」は、ロック以外の世界にも大きな影響を及ぼしています。

好まれるのは、機械的な電子音に疲れた耳に生の音が心地よいからだといわれますが、別の理由も考えられます。

「アンプラグド」の主な手法は、持ち曲を、生音を重用した編曲で違ったふうに聞かせる、一種の焼き直しです。そんな、「過去を振り返る」流れが有力な「レトロな時代」というわけです。

そこでは、振り返るための素材が多いベテランに、活躍のチャンスがあるともいえるでしょう。

ポール・ロジャースのツアー

バッド・カンパニーの一員だった1975年以来、18年ぶりという大物ロック歌手、ポール・ロジャースも、そんな一人でしょう。

ポール・ロジャースは、ブルース史に残るマディ・ウォーターズの作品を歌ったアルバムを発表したことに伴うツアーを行いました。

井上竜仁