木造の瞬間 を迎えて

はじめまして。

発売から大分遅くなりましたが、藍坊主のミニアルバム『木造の瞬間』への想いを言葉にしないと衝撃でどうにかなってしまいそうで、何度も何度も聴きながらゆっくりまとめました。
言葉で伝えることがうまくできなくなってしまうくらい、一曲一曲に心が動かされ、読み辛い文章になってしまいました。
元々の文章力のなさもありますが…。

以下、個人的解釈とか感想。感覚やイメージが多く、抽象的です。私が考えたことを、そのまま文字にしているだけです。「」は歌詞からの引用です。
藍坊主の曲を聴いてはじめて、“バンドの音をしっかり聴きたい”と思った人間です。楽器の区別、名前、音、技法などほぼ全てがわからない状態で書いております。間違っていたら、すみません。

【群青】
はじめの耳鳴りみたいな音からもう、胸が熱くなる曲。
聴けば聴くほど、hozzyさんの比喩表現にゾクゾクする。独特で、でもわかりやすい表現が癖になってしまいそう。
一言目からもう好き。そもそもベーコンって空の表現に使う言葉じゃないと思ってた。なのに、脳内には「真空パックされたベーコン色」した空の色がありありと浮かぶ。
戸惑いや身の置き場のなさ、迷い、思春期のモヤモヤや若い恋の苦しさ……
終わったのは恋だけじゃなさそうだ。きっと、子供の時代も終わったんじゃないか。
大人になる一瞬手前の、尖った時期というかなんというか。
中でも「三年後」というフレーズが、大人と言いつつまだ中学校や高校の三年周期が頭にあるようで、心の底がざわざわする。なぜか自分の、高校時代に見た、夕焼けに照らされた水の輝きを思い出す。
急に語りかける口調になるのに、相手に聞いて貰おうとはしていなさそうなところだとか、曲を聴いてるのに夜に向かっていく空が眼に浮かぶところだとか。勝手で、何かにもがいていて、なによりも強く輝いている、そんな印象を受けた。
群青は、ぼくらの青春であって、それぞれに鮮烈な青をみせている。ひとりひとりの青も綺麗な一色じゃない。暗いところもあれば底抜けに明るいところもある、点描みたいに感じた。

「ぼくらの恋」のコーラスがすっごく好きだし、一曲通してドラムがめちゃめちゃかっこいい。ピアノの音が硬くて脆い心を表しているように聞こえた。ギターの余韻が残っている状態で歌に入るところに鳥肌が立ったし、「クソみてえに奇麗」というフレーズには後頭部を思い切り殴られたような衝撃を受けた。

【ダンス】
サビがすごくすき。なによりもボーカルが目立っているのに、全部の音がかっこいい。
ピアノが綺麗。ダンスしてるみたいな動き。あとエレキかな?音の運びが好き。
歌詞が深く深く考えさせられるもののように感じたから、考えてみた。
まず、最初に出てくる糸は芥川龍之介の蜘蛛の糸かと思う。あれは掴んでちぎれてしまうけど。
そうして「トリトリじゃんけん」、運動が苦手な子が残っていく。寂しいし、辛いし、ちょっと悔しくて恥ずかしくて、劣等感が植え付けられる。でもそれって結局は、他人からの評価なんだろうなと聞いていて思った。
「雁字搦めの糸」って、視線みたいなものなのかなと思う。他人からの、評価の視線。“世間”とかいう、誰かのものさし。自分の評価。
幸せって、誰にとっての幸せなんだろう。どんなことが幸せなんだろう。幸せの糸かもしれないけれど、それも誰かからの言葉であって、私の幸せはあなたとは違うかもしれない。
社会にいる限り誰かからの評価を受けるし、“一般的に”“当たり前に”“世間は”っていうものさしは当てられ続けるけど、真っ暗にしちゃったら何にも見えなくなる。
何も見えないからこそ小さな石にも躓くし、目の前も見えなくなるけれど、先入観とか、誰かが決めた一般的な価値観とかそういうものを捨てられたら、目に見えない何かに触れられる気がする。
周りに流されないって難しいけど、私の人生は私のものなんだから、自分の信念を貫けば見えるものが必ずあるんじゃないか。そんなことを考えさせられる歌詞だった。

【嘘みたいな奇跡を】
よく動くのがギターで、支えてるのが多分ベースかな?と思うんだけど自信が無い。コード進行があたたかい音なのかな。高い音の楽器が遠く広い空を思わせるのかな。
音に関して知識がないのでなんとも言えないけれど、全ての音があたたかくて、歌詞が切ない。嬉しい時も辛い時も一緒にいてくれた人。まさに“病める時も健やかなる時も”な相手だったんだろうと思う。はじめの歌詞が全部ひらがなで書かれているのも、優しくてまっすぐで、どこまでも素直で素敵。
コーラスの「だから」「心配しないで」がきれいで、テンポは速く感じるのに温かくて悲しくて、遠くて儚い音が心に沁みる。
男女なんだろうけど、ほぼ家族のようなイメージだからか、聴いていると特定の人を思い出してしまって、その人との思い出があふれて、この曲がちゃんと聴けなくなってしまうことがある。
とくに、「終わりで終われないよ 忘れたくても消えないよ」の歌詞は、感情移入してしまってつらい。お別れだけど、忘れたり消したりしてしまうんじゃなくて、強すぎる想いが相手に届きそうな、悲しいけれどあたたかい別れ。
天国に向けた手紙のような、そんな切なさと美しさに溢れている曲に思えた。

【同窓会の手紙】
ぽつぽつ呟くような歌詞。演奏も、あんまり動かないでぽつぽつと。時々ギターが動くのが心地良い。
からのサビ。叫びのようにも聞こえて、どきんとする。「いるのかな」の音の動きが好き。
雨の埃っぽい匂いやパラパラとビニールシートに当たる音まで感じられる。ビニールシートの下って、ちょっとあったかい。そんなことまで思い出した。
口笛?所在無げに聞こえる。好き。
「捨てた」という言葉、ほかの全ての音がなくなる一瞬、なんでか心の隅がつつかれるようなせつなさを感じる。そうしてすぐに入ってくる音に胸焦がれる。音を広げず最後も呟くように終わっていく。
あたたかい音のはずなのに都会のイメージというか、無機質さや空しさ、気だるげな感覚になる。ただ、「僕らは最強の空を作ったよな」のところだけは違って、あのおさない頃の輝き、みたいなものを感じた。

【トマト】
「乾いた歯ブラシはもう湿らない」
この一行目からどきっとしてしまった。
一緒に生活していたときと同じ暖かさがまだフローリングに残っている。外の光で少し明るい、乾いた風呂場がひんやりしている。外からの風が白いカーテンをふわふわ揺らす。遠くの電車や信号の音が聞こえてきたり、電化製品のモーター音が聞こえる以外は静かな午後。じりじり心を浸食していく寂しさと、残された生活の跡と、思い出と、これからの生活。やけにゆっくり流れていく時間。太陽の暖かさや緩やかな時間が包み込んでくれるけど、失ったものが大きくてぽっかり穴が空いている。そんなイメージが流れ込んできた曲。
なのに、あたたかくて柔らかい初夏のしとしと雨のような曲。
ミニアルバムのなかで、いちばん、整理がつかないまま急に、すとんと大切なものが抜け落ちてしまう別れのように感じた。

途中のスネアが好き。たたたたん、と聴こえるのが心地良い。コーラスが綺麗。弦が優しく動き続けていて、じんわり脳内に染み込んでいく感覚。
この曲を聴いていて、hozzyさんの歌い方ってすごく柔らかくて優しいだけじゃなくて、話すように、語りかけるように聞こえてくるなあと思った。「もう君は遠い」のところとか、とくに。だからこんなにも心に響くのかな。

【かさぶた】
力強くて青くてまっすぐな、プラスのパワーがもらえる曲。
10代ほど若くはなくて、周りも見えているけれど、でも力いっぱい、突き進んでいける。そんな大人の曲だと思った。
自分の信念を折って生活しているからか、眩しく見える。こんなふうになりたいと思う。そんな私に、今からでも遅くないよと、折ったけれど捨ててはいない、残ってるものを燃やせばいいよと言ってくれるような。きっと気のせいだけど。
でも、そのくらい勇気をくれる曲。
果てしなくギターがかっこよくて、がむしゃらなスピード感がやみつきになってしまう。

すっと心に入ってくるけれど、高音や音のでこぼこしているところが、突き刺さって衝撃になる。歌声と一緒に、楽器も叫んでいるように聞こえる。
「また巡りまわって綺麗な夜の中を」の音の上下がすき。ドキドキする。
「ここじゃないとこ 僕じゃない場所」を求め続けることは難しくて、でも、やめてしまうときっと心のどこかが固まってしまうんだろう。

【ブラッドオレンジ】
視界が燃えるようなブラッドオレンジ色に染まる。懐かしさや切なさや暖かさに心が締め付けられて、目頭が熱くなる。
大好きな曲、藍坊主に一瞬で惹かれた曲。
全身を強く打たれたような衝撃が走って、MVを何度も見た。忘れられなくなって、どんどん藍坊主が好きになった。そんな曲だからこそ、どう感想を書いていけばいいかわからない曲。

別れが待ってるけど、そのあとには新しい世界が待っている。希望が感じられる曲。
「列んでるランドセル こっから見ると蟻みたいだ」素朴で何気ない景色が、夕焼けや心境と重なって特別に輝いて見える歌詞。子供と大人の間から、大人になる頃のまっすぐさと未来への気持ちで輝いてる様子が浮かんだ。
キーボードの音の運びが好き。ぽろんぽろんと運ばれると楽しいようで切ない音が聞こえてくる。
「落ちてく西日が」からの盛り上がりに胸が苦しくなる、コーラスとの掛け合いでおかしくなりそう。直前のギターもかっこよくて、最後の音の伸びがたまらない。
ベースとドラムの音が胸に響く。かっこよすぎる。

おわりに
曲に、藍坊主に出会えた奇跡がなければ、今の私の生活が、こんなに色と音に溢れたものにはならなかったと思えるくらい大きな出会いでした。
今後はさらに聴き込んで、ブックレットもしっかり読んで、他の方の感想も拝見して、木造の瞬間を味わっていきたいと思っております。
最近好きになりましたが、藍坊主最高。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

20180211えん

追記 ハッシュタグ(20180216)
#藍坊主 #木造の瞬間

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