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ランニングと暑さ対策【その1】暑さを読む — 猛暑日のランニングは控えよう —

こんばんは!
ONE TOKYOスタッフのまゆゆです(^^)
日が暮れてもやっぱりまだまだ暑いですね。笑
7月はONE TOKYOでも暑さに気をつけながら
様々な会場でイベントを開催しました♪

7/10『ONE TOKYO TIME TRIAL 10K & 5000m』
 ペーサーとして川内鴻輝さんが来てくれました!
7/17『ONE TOKYO SPECIAL SESSION in織田フィールド』

夏のレベル別プログラムを開催!
 齋藤太郎さん、森川優さん、鈴木隆介さんが来てくださいました!

まだまだ厳しい暑さが続くと思いますので
ぜひ今回の理事長のnoteで
夏の「暑さ」について
1つ2つ知識を身に付け、
安全に楽しくスポーツやランニングを
行っていただけたらなと思います!

********

みなさんこんばんは、
東京マラソン財団理事長の伊藤静夫です。

今年の6月末から7月にかけて、
東京都心においても
気温35℃をこえる猛暑日が9日間続き、
観測史上類例のない暑さとなりました。
猛暑日、真夏日(気温30℃以上)は
年々増加傾向にあると伝えられ、
地球規模での気候変動による影響が
原因との指摘もあります。
もう少し猛暑日は続きそうですので、
日々のトレーニングに励むランナーは、
暑さへの注意を怠ってはなりません。
そこで、このONE TOKYO noteをお借りして、
ランニングと暑さ対策について、
著者なりに話題提供して行きたいと思います。
なお、先に取り上げてきた
「マラソンのペース配分」についても
引き続き並行して進めて行くつもりですので、
こちらもお付き合い下さい。

日本スポーツ協会「熱中症予防ガイドブック」

さて、暑いときのトレーニングでは、
多くの汗をかき、体への負担も増します。
いつものスピードで走っていても、
よりきつく感じ、
ペースも上がらないでしょう。
このような暑いときのトレーニングでは、
まずは無理をしないことが大原則です。
そのうえで、環境温度に応じて、
トレーニングの内容や強度を調整することが大切です。
そこで今回は、暑さ対策の前提として、
その日の「暑さをどう読むか?」を
テーマに取り上げました。
夏のトレーニングにおいて、
私たちは環境温度をどのように理解し、
トレーニングに活かしていけばよいのかについて
考えてみます。

日本スポーツ協会は、1994年から
「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
を発刊して、
熱中症予防への啓発活動を続けています
(著者も当初よりメンバーの一人として参画してきました)。
図1は、このガイドブックに示された
「熱中症予防運動指針」です。
図の左に、三つの温度計が示されています。
この環境温度をどのように読み、
理解し、そしてどのように運動をしたらよいか、
を解説しています。
三つの温度計は、
左からWBGT、湿球温度、乾球温度。
天気予報などで私たちが日常なじんでいるのは、
乾球温度すなわち気温です。
ここでは、気温をもとに話を進めます。
なお、環境省などの
公的機関が出している熱中予防ガイドラインも、
おおむねこのスポーツ協会の指針が
ベースになっています。
スポーツ協会のガイドブックでは、
とくにスポーツ活動に関わる注意点が
丁寧に解説されていますので、
参考になることも多いと思います。
ランナーの夏のトレーニングでは、
是非この運動指針に基づいて
実施することをお勧めします。

図1 熱中症予防運動指針

WBGTについて

図1に示された温度計のうち、
WBGTはなじみが薄いかも知れません。
同じ気温であっても、
湿度の高いときには蒸し暑く、
不快に感じることでしょう。
湿度が高いと、
せっかくかいた汗も蒸発が妨げられ
放熱効果が下がるからです。
また、日差しの強い日と曇りの日、
あるいは室内と屋外で暑さの感じ方は
違ってきます。
これは、太陽の輻射熱の違いによるものです。
さらに、気流も影響し、風のあるときの方が
しのぎやすく感じます。
このように、同じ気温でも、
湿度、輻射、気流という
異なる物理的要素によって
私たちが受ける熱ストレスは変わってきます。
そこで、以上の4要素を一つにまとめた
温度指標として考案されたものが
WBGTです。
最近では、「暑さ指数」とも呼ばれています。
環境温度を「読む」場合、
WBGTが理想的ですが、
実際のスポーツ現場での利用は
まだ限られています。
しかし、通常の気温でも
環境の熱ストレスを「読む」ことは
十分可能です。
その場合、気温とともに、
その日の湿度と日差しも考慮に入れます。
湿度の高い日、日差しの強い環境では、
図の1の指針の一つ上のランクを参照してください。

猛暑日:運動は原則中止

さて、
日本スポーツ協会の運動指針で
注目したいのは、
気温(乾球温度)が35℃を上回る日(WBGT 31℃以上)、
すなわち「猛暑日」には
「運動は原則中止」にしていることです。
特に、子どものスポーツ活動は
「中止すべき」と強く警告しています。
すでに6月から、
私たちは嫌と言うほど猛暑を経験してきました。
「猛暑日にはトレーニングを控えるべき」
という指針にうなずく方も多いでしょう。
しかし、なかには暑い時こ
そ頑張りたいという勇猛な方も
いらっしゃるかも知れません。
そこで、なぜ35℃以上の気温では
運動中止か、を改めて考えてみます。
ランニングをすれば、
走る速さに応じて
必ず余分にエネルギーが必要になります。
しかし、この生み出されたエネルギーの
全てがランニングに向けられるわけではありません。
ランニングの推進力になるのはおよそ
20〜30%に過ぎません。
残りの70〜80%のエネルギーは、
余分な熱として
体の外へ出さなければなりません。
速く走るほど、
大きなエネルギーが必要になるので、
それだけ放熱すべき熱量も大きくなります。
そして重要なことは、
環境温度が高くなるほど、
この放熱が困難になってくることです。

猛暑日:発汗が唯一の放熱

図2は、異なる気温で運動したときの
産熱と放熱のバランスをあらわしています。
放熱経路には、
おもに発汗による蒸発性放熱と、
輻射や対流などの物理的な放熱とに
分けられます。
この二つの放熱経路は、
気温が上昇するにつれ、
そのバランスが大きく変化することに
注目して下さい。
気温が低い場合であれば、
放熱はそれほど難しい課題ではありません。
輻射、対流といった物理的経路で
熱は勝手に逃げて行くからです。
ところが、外気温がしだいに高くなると、
物理的な放熱量は減少し、
必要な放熱量をまかないきれなくなります。
そこで体は、積極的な放熱機能を発揮します。
皮膚血管を拡張させ、
汗をかき、汗の蒸発による気化熱によって
放熱を増大させるのです。
これで、何とか放熱が確保でき、
体温を維持できるようになります。
ところが、外気温が35℃をこえると、
外気温は皮膚温(33〜35℃)より高くなってしまいます。
すると、これまで放熱に貢献してきた
物理的な放熱経路は、その収支が逆転し、
外の熱が体の中に入ってくることになります。
こうなると、熱の放散は、
ひたすら汗の蒸発に頼らなければなりません。
ヒトの発汗機構は、
他の哺乳類に比べても際立って優れていますが、
体内の貴重な水を消費しなければならない点では、大
変コストのかかるシステムでもあります。
また、汗の材料になる水を汗腺に供給するためと、
体内の熱を体表に運ぶためとの二つの目的で、
皮膚への血流を増やさなければなりません。
むろん、ランニングのためには
筋肉への血流は欠かせません。
したがって、限られた血流を筋肉と
皮膚で奪い合うことになります。
当然、体への負担も著しく大きくなります。
このように、気温35℃をこえると、
体への負担は急激に増すことになります。
それでもランニングを強行すれば、
体温調節機能は限界に達し、
体温を維持することも困難になってきます。
脳は、この緊急事態を検知して、
これ以上運動をしないように強く抑制をかけます。
猛暑日には、運動したくないという気持ちが働くのは、
至極合理的な生体反応と言えます。
以上が、猛暑日にはトレーニングを避けた方がよい理由です。

図2 環境温度と運動中の産熱・放熱のバランス

(PÉRIARD et al, 2021, Physiol Rev 101: 1873–1979から引用)

まとめ:無理な運動が熱中症に

速く走るには
大きなエネルギーを必要としますが、
それだけ余分な熱を
外に逃がさなければなりません。
このことは、あらゆる動物の
宿命でもあります。
そこで動物たちは、
様々に行動を工夫し暑さを避けます。
サバンナの捕食者ライオンは、
暑さを避けるため、日中は狩りをしません。
我々人類はかなり特殊で、
比類ない優れた発汗機能を進化させ、
暑さにはめっぽう強い動物となりました。
初期人類は、日中の暑さでも
狩りをしたと考えられています。
しかし、さすがに35℃以上の猛暑は、
人類の体温調節機能の限界をこえており、
そこでの活動は避けたことでしょう。
古代の人は、温度計を持ちません。
その代わり、体内センサーが熱ストレスを読んで、
支障なく活動していたと考えられます。
温度計が普及した今日であっても、
熱中症は決して稀ではありません。
ヒトは暑さに強い。
それだけに、暑さに無理がききます。
その無理がたたって起きるのが熱中症です。
「暑さの読み違え」と言ってもいいでしょう。
次回は、そのランニング中に起こる
熱中症について考えてみます。
最後までご覧いただきありがとうございました。

********

みなさんいかがでしたか??

ニュースでも熱中症警戒アラート
なんて言葉をよく聞いたりしますが、
アラートが出ていない時でも
この暑さ指数は
今の暑い時期のトレーニング内容や量を調整する
良い指標になるかと思いますので
ぜひ今後も参考にしてみてください♪

最後までご覧いただきありがとうございました!
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