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初めて文庫同人誌を作った記録

先日初めて同人誌を作り、イベントに参加してきました。
入稿って何?レベルの初心者でしたが、本文を書く以外の作業は基本的にプロに外注することで無事に本を出せました。こういう作り方もあるよという参考になればと思い記録しておきます。

はじめに私のこと

腐女子歴は長いけど、二次創作歴はトータルで二年弱。今のジャンルに来るまでに十年近くのブランクがあります。
オフの同人は十年前に一度アンソロに寄稿したのみ。その時は主催の方が何もかも整えてくださったので、私はスマホで本文を書いて送っただけでした。

その後はリアルのライフイベントが立て続いてオタク趣味から遠ざかっており、なんとなくこのまま腐女子も卒業するのかなと思っていた矢先、唐突に今のジャンルにはまりました。
萌えと勢いのまま小説を書いたり漫画にもチャレンジしてみたり、そうしているうちにジャンルの友人もでき、楽しいオン活動に満足していました。

同人誌を出そうと思ったきっかけ

きっかけは同ジャンルの別カプで小説を書いている友人Sの同人誌出版でした。月に一度くらい会って萌え語りをする仲なのですが、「本を作りたいと思ってる」と聞いた時は驚きました。私は彼女のファンなのでまず「買います!!!!」と言いました。

Sは若い頃から同人活動をしていて、ノウハウはよく分かっているようです。私はSと原稿の進捗の話をしたり、彼女がパソコンで校正作業をしているのを見たりしながら、すごいなあ〜とこの時はのんきに感心していました。

立派に文庫本として仕上がったSの小説を手に取った時、心から感動しました。本当に本だ。
ウェブで読んでいた内容も紙に印刷されているとまた新鮮に感じますし、パラパラとめくって気軽に読みたい所を読めるのも嬉しい。本棚に差して、大好きな小説が物理的にそこにあるということがまた嬉しい。

同人誌ってすごい。私も作ってみたいかも。日に日にそんな気持ちが増していきました。

なにからやろう?

私も本を作ってみたいということを、まずSに相談しました。彼女は必要なことをすべて教えてくれました。(ありがとう)

原稿を書く以外にもやるべきことがたくさんあるんですね。この段階ですでに、プロにお願いできることはお願いしようと決めました。デザインはもちろんのこと、組版とかできる気がしなかった……

内容はウェブ再録+書き下ろしに決めました。それなりの厚みの文庫本を作るには七万字くらいは必要と聞いていたのですが、再録分で四万字ほどあったので原稿は問題なさそうでした。(こうして余裕ぶっていたので後日残りの三万字が進まなくてヒィヒィ言うことになる)

コロナ禍でイベントが中止や延期になっていた時期だったので通販のみで販売することも考えたのですが、タイミングよくジャンルのオンリーイベントの予定があったので思い切って申し込みました。これで逃げられないぞ、という意味もあった。

印刷所を決める

まず同人誌の印刷所ってこんなにたくさんあるんだ!と驚きました。それぞれに特色や強みがあるようですが、文庫サイズの小説本ということだけは決めていたので、以下の記事などを参考にしながら選びました。

あとはTwitterで「文庫 同人誌」で検索すると、出来上がった本の写真とともに使った印刷所や用紙を書いてくださっている方もいて、とても参考になりました。

最終的に決め手になったのは取り扱っている本文用紙の種類です。一般の文庫本のようなごく薄くめくりやすい紙を扱っている印刷所は限られているので、ここでかなり絞り込めました。

Twitterで「新潮文庫の紙に似ている」と言われていたワンブックスさんのスカーレットノベルという紙が気になり、用紙見本を取り寄せてみました。
赤暗い感じの色合いといい、触り心地や薄さといい、確かに新潮っぽい。もう絶対これにする!と決めました。

こちら左が今回の同人誌、右が新潮文庫です。

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厚みや手触りも似ています。裏写りはむしろスカーレットノベルの方が少ないくらい。

ワンブックスさんは他にも小説向きの本文用紙をたくさん扱っていて、カバー付き文庫を少部数で出すにはとても良い印刷所だと思います。基本料金内で帯まで付けてくれるし。

デザイナーさんに依頼する

イラストではなくデザイン表紙にするつもりだったので、お願いするデザイナーさんを探しました。
参考にしたのはこちらのまとめ記事。

何ひとつイメージが決まっていない状態でしたが、色々なデザイナーさんの作例を見ているうちになんとなく自分の好みが見えてきました。
写真じゃない方がいいなとか、お花モチーフ使いたいとか、タイトルロゴの雰囲気とか。

表紙と本文組版は別の方にお願いするつもりだったのですが、両方併せたメニューを扱っているデザイナーさんもいました。
ざっと見た感じ、相場は表紙のみで5,000円〜8,000円くらいの印象。組版は3,000円前後でしょうか。目次やあとがきなども単ページとして追加料金で作ってもらえます。

表紙と本文組版に加え、帯とお品書きの作成も同じデザイナーさんにお願いしました。入稿予定日の一ヶ月と少し前のことです。ギリギリ引き受けていただけて良かった。

まもなくデザイナーさんとの打ち合わせが始まりました。物語のあらすじや舞台、キャラクターの設定などをお伝えします。そのイメージに合うデザインにしてくれるのですね。(すごい)

推しカプのイメージカラーを使ってほしいというのは第一にお願いしました。あと全体的にクラシカルにしたいということと、お花モチーフ。
まずいくつか案を出してくださり、細かい所を変更していきました。このあたりのデザイナーさんとのイメージの擦り合わせのやりとりがちょっと大変だったかな。

デザイナーさんに依頼する時は、プランに含まれているのが何案までなのか、追加料金で案を増やしてもらうことができるかどうか確認しておくとよさそうです。私は結構こだわり始めちゃって、いくつか追加で案を出してもらいました。

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このように納品されました。私はトンボの付け方すら分からないので、このまま入稿できる状態に仕上げてもらえて助かりました。

本文を書く

私が自分ひとりでしたことといえば本文を書くことだけなのですが、一番大事なところでもありますね。

普段はスマホのメモ帳にそのまま横書きで書いています。とりあえずウェブ再録分を、縦書きにできるアプリに流し込んでみました。

横書きと縦書きで、読みやすい文章って変わる気がします。本にしたときページの下側がスカスカだとさみしいですし、再録分もかなり加筆修正しました。

原稿のスピードを上げるために、iPadに接続できるキーボードを購入しました。良い商品だったのですが、デスクに向かって書くというのが私には向いていなかった。結局スマホ書きに戻りました。

いつも書いたらすぐにアップしたくなるタイプなのですが、今回はそうもいかないので原稿はなかなか孤独な作業でした。早く萌えを共有したいな、という気持ちでなんとか頑張った。

校正を依頼する

入稿予定日の二週間前に、本文を書き終えました。自分ですべてできる方であれば締め切り直前まで書けるんでしょうけど、人様に頼む場合はそうもいかないです。そこがデメリットといえばデメリットかもしれない。

校正をお願いする方はココナラというサイトで探しました。

「文章校正」で調べるとたくさん出てきます。二次創作OKかどうかまず確認。
内容も費用もさまざまで、誤字脱字の指摘のみのプランから、整合性など含めて総合的に添削してくれる本格的なものまであります。感想付きなんてのもある。どんな特殊性癖でも大丈夫です!という頼もしい方もおられる。

私は総合的に添削してくれる方を選びました。自分の文章は客観的に見るとどうなんだろうと興味があったので。
費用は文字数に比例します。今回は約七万字で11,000円くらいでした。

メールではなくサイト上ですべてのやりとりができるのはいいですね。お相手に本文のデータを送って数日待つと、添削されたデータが返ってきました。これを元に自分で直していきます。
誤字脱字わりと多かったです。依頼してよかった。

本文の組版

校正済みの原稿ができあがったのでデザイナーさんに送ります。
デザイナーさんから「市販の文庫のような組版でいいですか?」と質問がありました。まさにそれです。それでお願いします。

こんな感じになりました。綺麗です。
フォントはモリサワ リュウミン、サイズは12Q(約8.5pt)

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InDesignで作成してもらいました。作中に特殊文字が出てくるのですが、それが一番綺麗に出せるのがInDesignらしいです。Wordですら使いこなせない私には未知の世界ですが、できないことをさらっと請け負ってもらえるのありがたい。ネット上で素人がプロに気軽に依頼できちゃうんだから、すごいですね。

入稿

表紙・帯・本文の入稿データをデザイナーさんから受け取りました。使う用紙をあらかじめデザイナーさんにお伝えしてあるので、印刷所の仕様に合わせてサイズや背幅も計算して作ってくれています。もうこのまま入稿するだけの状態です。

ということであっさり入稿完了。本を作った実感は湧かないものの、プロにお願いしたので無事にできるだろうという安心感はありました。
二週間後のイベントに直接搬入されるので、あとは楽しみに待つのみです。

イベント当日

はじめてのサークル参加でドキドキでしたが、友人Sが最初スペースにいてくれたので心強かった。すっかり忘れていたけど、印刷所の段ボールを開封した時に記念に写真を撮っておけばよかったです。

そんなこんなで、無事に初めての本ができました。本当に嬉しかった。

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表紙はベルベットPPです。なにやら手触りが良いらしいと聞いて使ってみたのですが、しっとりしています。ふわっとレトロな雰囲気の表紙に合っていて満足です。

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本文のめくりごこちも良いです。絶対次もスカーレットノベルにします。
とても薄い紙なので、本文約170ページでこのくらいの厚み。

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この用紙を使う場合、200ページくらいはあった方が見栄えがいいのかもしれませんが、薄くても手に馴染んでいい感じです。

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カバーが少し反ってしまうのが難点ですね。用紙とPP加工の相性とかなのかな。次回は印刷所さんに聞いてみよう。

仕様のまとめ
[ サイズ ] A6(文庫)
[ ページ数 ] 174
[ 本文用紙 ] スカーレットノベル
[ 表紙用紙 ] 紀州の色上質 最厚口 浅黄
[ カバー用紙 ] マットコート110
[ オビ用紙 ] マットコート90
[ PP加工 ] カバーにベルベットPP加工
[ 印刷所] ワンブックス

イベントで同じカプが好きな方と直接お話して、自分の本を手に取ってもらえるというのは格別の体験でした。これはたしかにハマる人はハマっちゃうなと思った。
帰宅してすぐに次回のオンリーに申し込みました。

おわりに

今回外注したもろもろの作業は、本来初心者でもやろうと思えばできるんだと思います。一応パソコンもiPadも持ってはいるし、詳しく説明してくれている記事もたくさんあるし。
でも時間も労力も惜しい。なんとかできたとしても今回のようなクオリティに仕上げることは無理だったと思います。関わってくださった方々に感謝です。

次に作る時も同じデザイナーさんにお願いして、お花の表紙シリーズにしたいな。並べたらきっと可愛い。

そんなわけで、本文を書くだけで同人誌は作れました。何かの参考になれば幸いです。


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