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「捕手防御率」はなぜ使うべきでないのか

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野球のプレー評価について多くの謎を解き明かしてきたセイバーメトリクスであるが、いまだに解明できていない部分もある。それは捕手のリード能力だ。球界ではかつてより、野村克也(元南海など)や古田敦也(元ヤクルト)、谷繁元信(元中日など)のようにリードに定評のある捕手がいる。しかしセイバーメトリクスは彼らのリードによる失点抑止力を可視化できてはいない。こうした状況に対し、捕手別の防御率を使えばリード能力を評価できるのでは、と考える人もいるのではないだろうか。

ちょうど先週も、評論家の村田真一氏が読売の捕手評価を論ずる際に捕手防御率を利用する記事があった。現在読売は、岸田行倫、小林誠司、大城卓三の3捕手が併用されているが、その中でも村田氏は岸田のリードに好感をもったよう。その中で実際岸田の捕手防御率がよかったことを紹介している。

「レギュラーを奪う大チャンスよ」躍動の岸田に村田真一氏ハッパ 捕手別防御率は2・28…小林2・25で大城卓が3・09

だが、セイバーメトリクスの世界において捕手防御率は重視されていない。使うべきでないと考えられている。なぜだろうか。今回は捕手別防御率の問題点を解説していこう。

捕手防御率は投手の力に依存する。また投手をそろえても捕手による差は見られない

初めて「捕手別防御率」の概念が提唱されたのは1989年。当時テキサス・レンジャーズに所属していたアナリスト、Craig Wright が著書『The Diamond Appraised』内で「捕手防御率(Catcher's ERA、cERA)」の概念を発表したのが起源とされている。捕手別防御率によって捕手の影響を測ろうとする試みは何も最近始まったわけではなく、昔から行われている。

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