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快投続く現役ドラフト大竹耕太郎。活躍の裏にある「慣れ」の数値化

■ 現役ドラフトで活躍の場を得た大竹。何が起こっているのか

 阪神・大竹耕太郎が素晴らしい投球を続けている。ここまで防御率は0.40。昨季までの主戦・青柳晃洋が苦しむ中、新戦力がそれにかわる活躍だ。

 大竹といえば、昨年12月に行われた現役ドラフトでソフトバンクから阪神に移籍した投手である。ソフトバンクでは2018-19年に、あわせて一軍で150イニング以上を投げるも、その後は厚い選手層に阻まれなかなかチャンスを得られなかった。そんな投手がここまではリーグを代表するような活躍を見せている。

 ただここまでの活躍の要因に幸運が重なっていることは否定できない。インプレー打球がアウトになる割合(DER)は通常、投手の能力にかかわらず.700前後に収束するが、今季ここまでの大竹は.731。アウトになる割合が高い。

 また出した走者を本塁に還さず、残塁させる割合(LOB%)も運が大きく関わる要素だ。これについては平均が75%ほどに収まるのが普通だが、今季の大竹はなんと94.6%。これは今季40イニング以上を投げたNPBの投手31人の中でトップの値だ。当然ではあるが、防御率0.40に幸運は混ざっている。

 しかし幸運だけとも言えないのも確かだ。セイバーメトリクスの基本である奪三振、与四球による評価で見ても、奪三振割合K%16.4%は2019年以降の自身最高値。さらにすごいのが与四球割合BB%で、1.8%とここまで168人の打者と対戦し、3つの四球しか出していない。

■ 大竹は「初物」だから打ちづらい?リーグをまたいだ移籍による「慣れ」のリセット効果

 大竹はなぜ突然好成績を残せるようになったのか。その要因のひとつとしてヒントになりそうなのが、「慣れ」の問題だ。

 近年、セイバーメトリクスの世界では「周回効果」という概念が注目された。打席を経るごとに「慣れ」により打者が投手に順応していくことは、以前から実際にプレーする選手から証言されていたが、これが定量的に示されたのだ。

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