種牡馬にとっての大きな壁 ~3世代の法則~
「偉大なサイアーラインが持続しうるのは、わずか3世代の間である」
と明言したのは、‟ドルメロの魔術師“と言われたイタリアの天才馬産家のフェデリコテシオである。
あるサイアーラインは、他のサイアーラインが栄える道を作る過程において、3代を越える有効性を譲り渡す、という理論だ。
どれだけ一時代に猛威をふるった血であっても、その勢いは世代を重ねるに連れて失われ、続いても3世代までということが、それまでのサラブレッドの歴史の中で当たり前になっていたのだろう。
しかし、それを逸脱する名馬が後に現われる。
しかも、テシオ自身が生産した馬の血を引き継ぐ存在から。
ネアルコの孫にあたるノーザンダンサーである。
彼の誕生から58年が経過したが、今なおそのサイアーラインは世界中で繁栄しており、衰えることを知らない。
現在、ダンジグ、ヌレイエフ、ストームバード、サドラーズウェルズといった産駒たちを中心に、枝葉を広げている。
また、ミスタープロスペクターにおいても同様で、
産駒のファピアノ、ゴーンウエスト、フォーティナイナー、シーキングザゴールド、キングマンボといった産駒たちが枝葉を広げている。
上記の名種牡馬2頭は抜けた存在である。
3世代以上サイアーラインが衰えることなく繁栄している。
そして、共通するのが、世界のどこでもリーディングサイアーになれるポテンシャルをもっている、
もしくは後に種牡馬となってリーディングサイアーになり得る産駒を輩出しているということだ。
配合相手の繁殖牝馬の質を問わず、強烈な遺伝力を持っているということである。
さて、ここから我が国においてこの20年間で席捲したサイアーラインに注目する。
サンデーサイレンス。
日本の血統レベルを一気に世界基準まで押し上げ、産駒たちは世界中で種牡馬になっており、
各国々の一流レースを当たり前のように制覇している。
さて、そのサンデーサイレンスのサイアーライン3世代目にあたる種牡馬の産駒たちが競馬場でデビューしている。
いわゆる4世代目に突入した世代である。
この4世代目の馬達が大活躍し、今後もサイアーラインを繁栄させるものならば、
ノーザンダンサーやミスタープロスペクターと肩を並べるほどのレベルであり、
今後もその血はサイアーラインとして世界中で重宝されることになると考えられる。
この1世代の間が一つの基準になるのである。
2歳サイアーランキングを見てみよう。
9/17現在でトップを走るのは、そのサンデーサイレンスのサイアーライン3世代目にあたるキズナである。
そして、10位以内には同様にリアルインパクトが存在する。
勝ち上がり率も高い堅実性を見せており、キズナは早速重賞勝ち馬を輩出した。
ディープインパクトから派生している馬達であるが、良いスタートを切ったと言える。
それでもまだ初年度産駒たちがデビューしたばかりであり、今後どういった馬達が出てくるか楽しみでならない。
今後、本サイアーラインから種牡馬となり得る存在が誕生する可能性は感じられ、
その場合、この3世代の法則をぶち破り、後世にサイアーラインとして残っていく可能性が十分高まる。
そういった点からも、サンデーサイレンスの血には注目したい。
※作者 一口馬主マスターB
Twitter → https://twitter.com/onemouthmaster2
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