馬体のある部分において、「特筆した資質を伝える種牡馬」は存在する
まずはじめに以下の二つの写真をご覧いただきたい。
首の写真である。
A
B
全身の姿とは異なり、ある部分に着目するとより違いがはっきり分かる。
上の写真の二つの首の構造は明らかに異なる。
以前、速く走ることにおいて首の構造が如何に重要かということを本note内の記事で解説した。
(こちら→ゼロでもわかる馬体評価法! 1歳馬のココを見る! ~頭・首編~)
これはクラブ募集時の1歳時点ですでにこの部分の構造は確立されており、成長とともに全身に対するバランスが変わるものではない。
要は、成長の過程で筋肉量が増すとか、骨格が大きくなるといった変貌を遂げていく構造ではなく、外観での形が決まっているものなのである。
それは何故か…。詳しい内容は、上述した以前の記事でしっかりと解説しているので省くが、一つだけここでお伝えしておくと、
この首の形はあくまで目視不可能な内部の構造が輪郭として見えているのである。
この内部の構造が非常に重要で、走れるか走れないかを見極める一つのポイントなのだ。
出資検討する際には、これは絶対に無視できない。
以前の記事では、現存するサラブレッドの首の構造が何種類かにパターン分けできることを解説しており、その中で「理想はこの形!」ということもお伝えしている。
さて、この重要な部分において、非常に良い形を産駒に伝えている種牡馬が存在する。
それがジャスタウェイである。
個人的に、ヴェロックスが現役中距離馬の中で最も好きな馬体構造をしていると過去にお伝えしたことがあるが、
まだ2世代しか産駒がデビューしていないが、その中でもジャスタウェイは首の部分において理想的な形を兼ね備える産駒を出している傾向にある。
もちろん速く走るため、長く活躍するためには健全性を含めて形は重要で、なぜ形が良いことが好まれるかというと、
首の動きの可動域がこの構造に左右されるためだ。
現役生活という期間として考えると、いかに疲れをためずにという点、そして1レースごとに速く走るためにいかに無駄なく後ろからの推進力を前に活かすかという点の2つにおいて首は大切な部分なのである。
この2点において、安心して見ていられる産駒を多く輩出している印象がジャスタウェイにはある。
最初にご覧になっていただいた写真のうち、Aがジャスタウェイ産駒でチャレンジC(GIII)を制したロードマイウェイの首である。
ヴェロックス同様に私が好きな馬体構造をしており、首の部分においても理想的である。
また、Bの写真はそれに対して首が太く短い傾向であるのがお分かりだろうか。
Aに対して、窮屈で柔軟性に欠けるのは明らかである。
ただし、このBのような首であっても、後躯の力が非常に秀でていて爆発的なパワーでこの首の可動性に関係なく走り切る馬もいる。
並外れた後躯の力を兼ね備える馬に限るのだが…そういう馬がいることを忘れてはならない。
実際、このBの写真の馬はサートゥルナーリアなのだ。
2歳時にホープフルS(GI)を勝ち、3歳時に皐月賞(GI)も制している活躍馬である。
本馬は、とんでもない後躯の駆動力をもち、それを原動力に走っているのである。
(下写真:サートゥルナーリアの前駆から後躯にかけて)
ただ、首の構造もあって、全身のバランスが素晴らしくとれているわけではなく、馬体は疲労がたまりやすいのは明らかである。
こういった馬はレースを重ねるごとによって、外観からは見えない負担によって全能力をレースで発揮できない可能性がある。
逆に理想的な首の構造をもつ馬は、たたき良化型である場合が多い。
私は1歳時点のサートゥルナーリアをクラブツアーにおいて見ていたが、正直選ばず出資候補から外した経緯がある。
後躯の能力、そして他の部位においても素晴らしさは感じていたのだが、どうしても首の構造が気になったからである。
後悔はない。
なぜなら、これまで同じような馬体構造の馬で走らなかった馬の方が断然多いからである。
一つのパーツが特に秀でていて、他のパーツをカバーできるような馬はそんなに多くない。
完璧な馬体構造の馬も少ないが、それだけ首の構造が他の部位でカバーするには難しい部位であるということである。
さて、ロードマイウェイとサートゥルナーリアは今週末の金鯱賞に出走する予定である。
両馬がどんな走りを披露してくれるか楽しみであるが、それぞれの馬体、そして臨戦過程が異なることも考慮して観るとさらに面白いはずである。
最後に、クラブ馬の出資の検討の際にはジャスタウェイ産駒において特に今回解説した内容を頭に入れながら見ていただけたらと思う。
(写真は、今週のGallopの誌上パドックから抜粋したものである。)
※作者 一口馬主マスターB
Twitter → https://twitter.com/onemouthmaster2
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