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変革を推し進める企業現場に迫る 社員の力を最大限に引き出す組織づくりの葛藤とリアル【ONE JAPAN CONFERENCE 2021公式レポート:CULTURE④】

真に変革を推し進める企業。その現場では、何が起こっているのか。組織カルチャーづくりをめぐる葛藤とリアルに迫ります。パネリストは、埼玉大学 経済経営系大学院准教授の宇田川元一さん、三菱重工株式会社シニアフェローの平野祐二さん、日本電気株式会社 カルチャー変革本部長の森田健さん。モデレーターにエール株式会社 取締役の篠田真貴子を迎え、議論しました。

【登壇者】(敬称略)
・ 宇田川元一 / 埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
・ 平野祐二 / 三菱重工株式会社 シニアフェロー(民間機セグメントエアロストラクチャー事業部長)
・ 森田健 / 日本電気株式会社 カルチャー変革本部長
・ 篠田真貴子(モデレーター) / エール株式会社 取締役

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会社をやめずに「変える」を選ぶ

【篠田】平野さんは事業部のトップとして、変革を進めてきました。その取り組みについて教えてください。

【平野】40年前、三菱重工業に入社して以来、民間航空機の構造を作る仕事に関わってきました。その間、民間機の需要が増え、事業は右肩上がりに成長を続けて40年間で売り上げが10倍になりました。

コロナ禍前までは、生産量の増加に伴って、スケジュール優先で目の前の生産に集中せざるを得ない場合もあったため、品質への影響やコスト競争力の低下等が懸念され、更なる改善や、抜本的な改革の必要性を感じてました。そこで10年ほど前から、職制単位での改善も進めながら、組織風土改革に携わる専門組織も作って、改革に取り組んできております。
また近年では、コロナ禍によって航空機の需要が激減し、従来の生産量の2割から3割まで落ち込む中で、これまでの延長線上ではない更なる改革の必要性について、痛感しております。

そんな中、私自身が事業部のトップになった3年前から心掛けていることがあります。
私自身も含め、「変わらなければいけない」と伝えるため、現場とのコミュニケーションを活発にすることです。その際は、私から一方的にメッセージを発信するだけではなく、現場がそれをどう受け止めたか、アンケート等で本音を聞いたり、タウンミーティング形式で直接対話を重ねたりしてきました。


【篠田】日本電気株式会社(NEC)は全社をあげて改革に取り組んでいます。森田さんはどう関わってきましたか。

【森田】私は1995年に入社し、営業やマーケティングに携わってきました。しかし、2012年ごろに会社の業績が悪化し、辞めようかと悩みました。ONE JAPANの標語でいえば、「辞めるか、染まるか、変えるか」。そのとき「変える」を選びました。経営企画本部という経営のど真ん中に飛び込んでいって、それ以来、企業変革に取り組んできました。

働き方や人事制度を含め、組織が大きく変わったのは、とくにこの3~4年です。コミュニケーションのスタイルを変え、社長が社員と対等に語り合う機会を増やしてきました。社員からは、「大企業病」「内向き文化」といった厳しい言葉も出ました。社長は衝撃を受けたことで、本気で改革に取り組むきっかけとなり、具体的な施策も打っています。対話とアクションを重ねることで、社員が経営陣を「信用してもいい」と思えるようになっていきました。この局面をUn-freeze(解凍する)と定義づけているのですが、特に重要だったと思います。

慢性疾患型の業績悪化に効く変革

【篠田】宇田川さんは企業変革や組織の戦略について研究されています。その方向性について教えてください。

【宇田川】埼玉大学で経営戦略論を教えています。研究テーマは、大手企業やスタートアップ企業などがもう一度イノベーティブ(革新的)になるにはどうしたらいいかという「再イノベーション化」や、マクロ的な企業変革です。

企業を変革しなければいけないと、みなさんが感じています。企業変革というと「抜本的な変革」、すなわちV字回復のイメージが強い。もちろんそれが必要な企業もありますが、多くは急に業績が落ち込むのではなく、調子が悪い状態が続いていて、売上高が主力事業で2%ずつ減っているといった「慢性疾患」ともいうべき状況です。その場合は、なだらかにしっかりと回復させていく取り組みが必要と考えます。今日は、現場でどのような取り組みが日々されているかについて、お話を聞きたいと考えています。

【篠田】私はエールという会社で、企業変革のラスト1マイルをつなぐ支援をしています。企業、組織で働く人が、社外の人材に定期的に話を聞いてもらうサービスを提供していますが、それだけで突破できることがあると実感します。

平野さんは対話をされてきて、現場での変化をどう感じていますか。

【平野】風土改革の取り組みを始めてから、様々な点で改善している実感はあります。自分自身のメッセージも、以前はA41枚に文章のみまとめてメール等で送るか社内放送するだけでしたが、半年前に動画なども掲載できる配信サイトを作り、何人ぐらい見ているかをチェックしながら伝えています。1,000人のうち600人が見ているのがわかり、「気にしてくれている」という手ごたえを感じています。

対話とアクションで距離を縮める

【篠田】森田さん、対話の場を持って、見えてきた変化について教えてください。

【森田】社内調査の参加率が3年前は26%だったのが、今は90%になりました。社員の声を聞いて、アクションにつなげていくことを続けていき、どこかのタイミングで社員が「信用してもいいのかな」と思ったのでしょう。経営と現場はかつて離れていましたが、両方から歩み寄った感じがしています。過去に急に改革をしようとしてうまくいかなかったこともありますが、いまは信用が生まれ、変革がしやすい環境になっていると感じています。

【篠田】森田さん、平野さんはトップに対話の姿勢がある例でした。一方で、「トップに変わろうとする姿勢がない場合、現場では何ができるのか?」という質問が来ています。

【宇田川】トップが「戦略はこうだから、こうしなさい」というふうに決めたことを伝えるだけだと、社員の元気が出なくなります。その風景の中にメンバーの居場所が感じられないからです。森田さん、平野さんの話は、社員一人ひとりが「変革していく」という自発性をどう作っていくか、対話をしながら丁寧に取り組んだということかと思います。社員が感じている「もやもや」を、会社も同じように感じ、良くしようと動いてくれているのか、あるいは戦略や制度に自分の声がどう扱われているのか、そこが注目されていると思います。

経営トップが社員の声を聞いて変革しようという姿勢を持っていない場合どうするか。私もよく経営トップの方と話しますが、「何も感じていない」というわけではなく、どこから手をつけていいかわからず、現場にとって核心をついたアクションができていないのが実態かと思います。「これをすれば会社はよくなる」といった具体的な施策は、むしろトップ層は待っていると思います。アイデアやメッセージの「投げ方」は考えながら、伝えていく必要があるでしょう。

ただ「一気に会社を変えよう」と気負わなくていいのではないかと思います。身の回りで変えていきたいこと、嫌だなと思うことについて、手だてを考え、少しずつ変えると見えてくる風景は変わる。それを重ねると、上層部に伝える内容の質が上がります。

トップも社員からの提案を待っている

【篠田】ご自身の経験から、学びや教訓はありますか。

【森田】社員の生の声を何らかの形で経営陣に伝えていくことを、諦めずに取り組んでほしいです。私のように中間で対応する人も現れますし、いつかは状況が変わっていきます。会社という大きな単位で考えると大変なので、チームや部署からまず変革していくことが良いと思います。

【平野】宇田川先生が「慢性疾患」という言葉を使われていたのが印象に残っています。40年間同じ仕事に携わっているとわからないこともあり、コロナが変革の必要性に気づくためのいいきっかけになりました。かつて組織の長は、自分だけで考えると割り切っていた部分もあったかもしれませんが、今は違います。つながるツールもある。事業部長としても、こうしてほしいという依頼があれば、それを実行していくのが自分の役目だと思っているので、みなさんもぜひ提案してみてください。

【宇田川】「組織のなかで対話することは、誇りを持って生きること」と考えています。一歩踏み出さなければ変わらないので、いい会社を作るため、あきらめないで対話を続けてほしい。必死にもがいて方向性をさぐっていると、互いの歯車がかみあうタイミングが必ず来ます。

【篠田】「あきらめないでほしい」という言葉でセッションを終わりにしたいと思います。みなさん、ありがとうございました。

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構成:猫村 りさ
編集:高柳 秀平 、香西 直樹
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:原純哉

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編集:高柳 秀平 、岩田 健太
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:中野 友香(モカ)

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