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新時代を生き抜くために必要なキャリア自律 【ONE JAPAN CONFERENCE 2021 レポート:PEOPLE③】

一人ひとりが自らのキャリアについて主体的に考え、自律してキャリアを築いていくことが求められる今の時代。どのようなキャリアを歩みたいか。自分はどう在りたいか。
激動の時代を生き抜くために必要なキャリア自律について、パネリストが語る。
【登壇者】(敬称略)
・ 井上裕美 / 日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 兼 日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 代表取締役社長
・ 酒井哲也 / 株式会社ビズリーチ 取締役副社長 ビズリーチ事業部 事業部長
・ 曽山哲人 / 株式会社サイバーエージェント 常務執行役員 CHO
・ 藤本あゆみ(モデレーター)/ Plug and Play Japan株式会社 執行役員 CMO/ 一般社団法人 at Will Work 代表理事

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「ロール&レスポンシビリティ」の枠を超えて働きかける

【藤本】キャリアも時代の変化に合わせて変化させていくのが理想ですが、目の前の仕事に追われて世の中の変化を感じられず良い選択をできなかった…という声も漏れ聞こえます。さまざまなキャリアを重ねてきたパネリストの方々に、この変化についてまずお聞きしたいと思います。同じ会社に長くいらっしゃる井上さんの目に映る、会社・社会の変化を教えていただけますか?

【井上】市場や社会の変化も激しい中、会社においても統合や分社など、変化はとても目まぐるしく常に変化を続けています。キャリアの観点では、これまではプロジェクトマネジャーやコンサルタント、営業、技術者といった、ITのプロフェッショナルとしてそれぞれ育つことが定型的なキャリアでした。そこでは、ロール&レスポンシビリティ、つまり一人ひとりが役割と実行責任を明確にしなさいと言われていました。

それが最近では、DXを例にすると技術開発、アプリケーション開発、デザイン、顧客体験の検証、すべての層が1つとなって成功してこそ真の成功といえるようになりました。このとき、役割と実行責任は最低限の部分において必要ですが、それを超えて他のプロフェッショナルとどう繋がっているかが重要だとわかってきました。ロール&レスポンシビリティを守るだけでなく、その枠を超えた働きかけが「豊かなキャリア」形成には必要だと思います。その先にはウェルビーイングがあり、好きなことを自らが切り開いていく、その観点の重要度が上がってきたことも変化の1つだと思います。

【藤本】昔は会社が用意した梯子やレールに沿って働くだけでよかったのが、今は自分で梯子やレールをつくる時代になってきましたね。酒井さんはいかがですか。

【酒井】変わったなと感じることが3つあります。1つは情報のオープン化、2つ目は多様な価値観の受容、3つ目はコロナ禍によるコミュニケーションの内容や質です。情報の取捨選択やコミュニケーションの質など、難しいことが多くなっているように感じます。

【藤本】コロナ禍でテキストコンテンツのやりとりが増え、大きく変化したと感じる場面が多くありました。

人生100年時代に必要な「サードプレイス」

【曽山】転職する選択肢が圧倒的に多くなったと感じます。私は社会人歴が24年ほどありますが、私が入社1年目のときには第2新卒という言葉はなく、私が1年目で中途採用に応募しても受け入れることができる企業がありませんでした。今は転職も当たり前になり、キャリアの幅が拡がった反面、取捨選択に頭を悩ませる時代でもある。しかし、選択の余地がないよりずっといいと思います。

これまで16年、人事をやるなかで、2つの大きな変化がありました。1つは人生100年時代で「ウェルビーイング」(心身が健康で社会的にも満たされた状態)を志向する期間が長くなっていること。人生が長くなったことで選択肢の幅が広がっています。もう1つが「DX」で、ムダな仕事がどんどん削られていることです。するとキャリアについても、感情に向き合うことや対話、チームをつくることなど、人間らしくいられる仕事の価値が上がってきます。ここで、感情に重きを置くと、会社と家族だけでは物足りないなと感じる人が増えるはずです。人生100年時代には、副業や趣味などサードプレイス(第3の場所)によって選択肢や仲間が増えてわくわくできるようになっていく思います。

【藤本】サードプレイス含めてキャリアの選択肢が増え過ぎて、選べずに逆に立ち止まってしまう人もいるように感じます。

【井上】自分の目の前にある仕事にプラスアルファしたコミュニティとの関わりを作ること、触れるだけでも、知見や繋がりが豊かになりキャリアを考えるきっかけになると思います。忙しいときは無理をせず、繋がっておくだけでもいいと思います。

【酒井】会社の中にも偶発的にできた繋がりや薄い繋がりなどサードプレイスはあると感じます。会社の中でも特定のコミュニティでない、薄い繋がりは重要だと思います。

自分の強みを知るためフィードバックを取りにいく

【藤本】よく聞くのが「会社に廊下がなくなった」という話。細く鋭い関係だけで目的を達成するのは早いこともあるけれど、広い繋がりをつくるのはなかなか難しいですね。

【曽山】マイクロソフト社が行った調査(「次の大きなディスラプションはハイブリッドな働き方–そのための準備とは (The Next Great Disruption is Hybrid Work – Are We Ready?)」)では、強い繋がりを持ったチームはさらに強くなり、繋がりが弱いチームはさらに弱くなって細分化、縦割りが進んでいるという結果が出ていました。緩い繋がりの大切さに気づいている会社も多く、サイバーエージェントでは週3日の出社日を設け、「この日にきたら会える」という環境を意識的につくっています。

【藤本】コミュニケーションの問題はみなさん抱えていると思うのですが、キャリア、ウェルビーイングの観点で課題だと感じていることは何でしょうか。

【井上】キャリア形成で大事なのが、自分の強みの見える化だと思います。「廊下がなくなった」ことで、周囲からの「すごいね!」といったポジティブなフィードバックによって自分の強みを知る機会が減ってしまったのだと感じます。ただ、場を設ける・増やすだけでなく、フィードバックし合うことへの個人の意識も重要だと思います。
その際大事なのがキャリアのことだけで繋がるのではなく、その先にあるウェルビーイングの観点。好きなこと、楽しいと思えること、自分自身の情報で繋がることなのかなと思います。

【酒井】弊社(ビズリーチ)では、「キャリアの健康診断」を重視しています。体のことを真剣に考えて健康診断をするのと同じように、自分の生き方についても考える必要があります。弊社では定期的に自分を見つめ棚卸しをする「キャリアの健康診断」を提供しており、社員にも開放しました。この“診断結果”によって転職する社員が増えるかもしれませんが、だとしたら転職されないように働きかけることが企業義務だと捉えています。

人的ネットワークを持つ人と持たざる人の格差

【曽山】「フィードバック」が減っている人は以前にも増して減っていて、フィードバック格差とも呼べる状況が起きています。人的ネットワークが出来上がっている人には声かけがある一方、1年目の社員には声が掛からず、知っている人に仕事が集中しがちです。抜擢においても知っている人に集中し、未成熟な新入社員などは置いていかれてしまうんです。マネジメント層は、未成熟な人に期待し、声をかけることが大切です。

また、コンフォートゾーンにいる若手も多く、人的ネットワークのチャレンジングゾーンに積極的に入っていかないと、一向に声がかからないままに特定のネットワークの中で仕事が回ってしまう、そんな時代だと思います。

【井上】チャレンジングゾーンに入っていけるかどうかは、「心理的安全性」にも関わりますよね。新入社員や中途社員が入っていけるよう、心理的安全性を作るまでは会社も積極的に関与する必要があると思います。

【藤本】みなさんの会社で取り組まれていることはありますか

【曽山】弊社(サイバーエージェント)では、「自走サイクル」という「抜擢」「決断」「失敗」「学習」の4つのサイクルを回して、若手の心理的安全性を高め、自主的に動けるよう働きかけています。この話題は著書「若手育成の教科書」でも紹介しています。

「抜擢」は、たとえば「ネットで情報収集をしてチームにシェアする係」に任命するんです。すると、「決断」してたくさん記事をピックアップします。しかし誰からもフォローされない!ショック!これが「失敗」。そして軌道修正しようと考え「学習」します。このサイクルを回すとオンラインでも成長しやすくなるんです。会社全体を一気に変えるのは難しいですが、周囲から変えることができるんです。

まず褒め、その後ネガティブな話をするマネジメントの極意

【藤本】まず周囲の人に期待する、それに対してフィードバックがある。このサイクルを身近なところで回して心理的安全性を高めていくのですね。フィードバックをもらうための工夫を教えてください。

【井上】役職や上下関係を問わず、フィードバックし合うことはポジティブな行動、という世界観を社内に作っています。

【曽山】日本の企業は、期待することと褒めることができていないから、エンゲージメントが高まらないとよく言われています。そこでマネジメント層には「グッドもっと面談」をお勧めします。部下には、過去を振り返って自分の「グッド」(良いところ)と「もっと」鍛えたいところ(課題感)を3つずつ箇条書きで、面談前に書いてもらいます。そうすると面談時にまず褒めることができ、その後に課題を言いやすくなるんです。

【藤本】最後に、今の若手へひとことお願いします。

【酒井】「向き不向きより前向きにやれ」は、時代にそぐわないかもしれませんが、前向きに取り組むことで行動量が増え、結果につながるということもあるでしょう。いろいろ考え過ぎて立ち止まるより、前向きに動き続けるほうが選択肢も広がり、将来のためになると個人的には思います。どんどんチャレンジしましょう。

【井上】大きく環境が変わっていくなかで、5年後、10年後の自分を想像するのは難しいことです。そのなかで、目の前のやるべきことに邁進するのは前提として、それに加えて、周囲への違和感には、自分自身の言葉で発信することが大事だと思います。結果、失敗しても違和感を放置せず自ら動いてみる。若手の頃を振り返ると、こうした経験が糧となっていると実感します。

【藤本】声を上げるとき、単なる不満ではなく提案も同時にするというのが肝ですよね。ありがとうございました。

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構成:中原 美絵子
編集:堀 杏朱 、香西 直樹
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:大住 早
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