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大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE」決勝ピッチ【ONE JAPAN CONFERENCE 2020 PEOPLE⑤】

ONE JAPANによる大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE by ONE JAPAN」。
当プログラムでは事業メンタリングとウェビナープログラムを3カ月間にわたり実施しながら、応募者が持ち寄った新規事業及び既存事業変革のアイデアをブラッシュアップしてきた。約100チームの中から勝ち上がってきた5チームが決勝ピッチを行った。


【決勝ピッチ登壇者】
■全日本空輸 高野悠さん
■ミズノ 清水雄一さん
■パナソニック 前田瑞歩さん
■損害保険ジャパン 中川量智さん
■愛知製鋼 林 太郎さん
【審査員】
■アルファドライブ 代表取締役兼CEO 麻生要一さん
■内閣府 企画官 イノベーション創出環境担当 石井芳明さん
■デロイトトーマツベンチャーサポート 代表取締役社長 斎藤祐馬さん
■NTTドコモ イノベーション統括部 担当部長 笹原優子さん
■Japan Innovation Network 代表理事 西口尚宏さん
■ロフトワーク 共同創業者 代表取締役 林千晶さん
■Plug and Play Japan 執行役員 CMO 藤本あゆみさん
■パナソニック 代表取締役専務執行役員 中国・北東アジア社 社長 本間哲朗さん
【モデレーター】
■パナソニック イノベーション推進本部/ ONE JAPAN社内変革者支援プログラム担当幹事 濱本隆太

決勝ピッチのトップバッターを飾ったのは全日本空輸の高野悠さん。その後に、ミズノの清水雄一さん、パナソニックの前田瑞歩さん、損害保険ジャパンの中川量智さん、愛知製鋼の林太郎さんと続いた。ピッチの全容をお届けする。

OJC2020グラレコ-PEOPLE5-斉藤


全日本空輸 高野悠さんのピッチ
■地方と都心をつなぐ「地方創生航空券WINGS TO CONNECT」

【高野】みなさん、旅行は好きですか? きれいな景色を見て非日常を体験する、旅って本当に良いですよね。私は日本全国47都道府県を巡って海外以上に素晴らしいモノ・体験・場所があることを肌で感じてきました。しかし昨今は新型コロナの影響で観光産業、交通機関は本当に厳しい状況にあります。経営環境の悪化により廃業する旅館が続出するなど、痛ましいニュースが絶えません。この現状を何とかしたいという思いが今回の「CHANGE」に参加しようと思った最大の動機です。

これまで地方観光産業からこんな声をいただいてきました。「面白いと思うコンテンツを用意してもなかなか都心から人が来ない」「都心から人が来ても有名どころに行ってしまう」「来ていただければ、満足して帰ってもらえると思っている」。一方で都心に住んでいる旅行好きな人は、「旅行はやっぱり非日常の特別な経験がしたい」「国内旅行だとありきたりな旅に終わってしまうんじゃないか。楽しいのかな?」と思っています。

しかし全国各地にはたくさんの人を楽しませる十分な魅力が備わっています。だから国内旅行は間違いなく楽しいし、非日常体験ができます。この2者がつながっていないことが課題なのです。この課題を解決したい。アフターコロナにおいては、観光産業の需要は間違いなく国内から回復します。だから地方と都心を本気でつなぐサービスを用意すれば、この課題を解決でき、地方から日本全体を創生できると考えました。

そこで私が今回提案したい新しいビジネスが「地方創生航空券」です。ビジネスモデルは以下の通りです。まず、我々が常態化している空席分を地方創生航空券として原価で旅行者に販売します。ただし購入時に、旅行者は旅行先で必ずお金を使うという条件をつけます。旅行者が現地の観光業者を訪問しお金を使うことで、実際に収益が発生したら、当該観光業者から我々が「送客料」を得るという仕組みです。

これにより旅行者は「安価に」地方移動ができ、地方の事業者にお金を落とし、経済循環に寄与することができます。地方の観光業者は潤い、我々も収益を得られるという三方良しのサービスです。

実際に本サービスを大分県で検証してみました。羽田-大分間は生活路線であり航空会社は飛行機を飛ばさなければならないので、3割の空席が常態化しています。この状況下で羽田-大分間を最低運賃の2割引きで旅行者に地方創生航空券を販売します。旅行者に大分県各地の素晴らしい観光地を訪ねてもらい、我々が送客料をいただくとして検証しました。その結果、原価で航空券を提供しても得られる送客料により、最低運賃以上の売上を確保できることがわかりました。

このサービスを立ち上げることで、47都道府県の素晴らしい人・体験・モノ・場所と旅行者をつなげたい。また、ANAとしてもコロナ禍の今こそ、「需要があるから就航する航空会社」から、「就航地の需要を生む航空会社」へチェンジする時だと思います。コロナ禍で非常に厳しい今だからこそ、地方を活性化して日本全国を元気にしたい。ぜひみなさんも応援してください。

◆審査員からの講評
【林(千)】次の検証ステップは?

【高野】ANAのマイレージ会員をターゲットとして、ANAが包括連携協定を結んでいる地方自治体がこのサービスに登録していただくことを次のステップとして考えています。

【麻生】旅行代理店が企画しているパックツアーとの相違点は?

【高野】通常のパックツアーの場合は、ツアーで立ち寄る場所の観光業者側が事前にツアーを企画する旅行会社にお金を払って、旅行会社はその観光地にお客様を連れて行きます。しかし、このサービスは実際に旅行者が現地に行ってお金を使わないと、我々には送客料が入ってきません。そこが最大の相違点です。

ミズノ 清水雄一さんのピッチ
■左右別サイズのシューズ提供で「REACH BEYOND」を実現する

【清水】今回私が取り組むテーマは、「シューズ購入の常識をぶっ壊す」です。これまではシューズというものは両足同じサイズのものを買うのが常識でした。しかし、これからは左右で足の大きさが異なる人はそれぞれ左右で違うサイズのシューズを手にすることが出来るという新しい常識を目指しています。

私は2012年にミズノに入社して、4年間シューズ開発に従事しました。ミリ単位のこだわりが究極のフィット感を生むことにいたく感動しました。一方で、足の左右のサイズ差は無視され続けていることに違和感を抱きました。私自身、ずっとサッカーをしていて、右足と左足のサイズが違っていたので、靴選びに悩んだ経験があります。仕事でシューズの奥深さを知るにつれて、足の大きさの左右差という身体的な特徴で自分に適したシューズを手に入れられないことに対する違和感も徐々に大きくなりました。

実際に、当社の足型測定サービスで算出したところ、左右で推奨サイズが異なるスポーツ選手は実は20%もいることがわかりました。つまり本来は左右で異なるサイズのシューズを履くべきなのに、市場の環境が制約となり同じサイズのシューズを履かざるをえないというユーザーが5人に1人もいるんです。

スポーツ選手は練習や試合で長時間、いろんな激しい動きをするので、足に大きな負荷がかかります。実際にスポーツ選手に話を聞くと、「大きい方の足に合わせると小さい方の足が靴の中で動いて親指の爪が内出血して困っている」ということでした。また別の選手は、「出費はかさむけど左右で違う大きさのシューズを2足買って対応している」と言っていました。

つまり、足の痛みかお財布の痛みか、どちらかの痛みを我慢するのが当たり前になっていて、解決できるならとてもありがたいと選手は言っているんです。

この実際に困っている選手の声を聞いて、ますますこの課題を解決しなければいけないと強く思うようになりました。

まずは左右別サイズで履ける喜びを広げるために、左右別専用無料試着サービスを考えています。まずユーザーがシステムに足型や購買履歴を入力するとミズノからお勧めのシューズが提示され、試着用としてシューズが無料で手元に届き、ユーザーは左右で違うサイズのシューズを日頃の練習で試せます。次に、この左右で違うサイズのシューズを履くという経験が気に入れば、定期購入の契約をしてもらいます。すると左右それぞれの足に最適なサイズのシューズが定期配送されます。つまりシューズのサブスクリプションです。

一顧客当たりの想定平均獲得単価は5000円。これをベースに考えると、サブスク半年継続で黒字化が見えてくるのでビジネスとしても十分成立します。

このサービスはミズノにもユーザーにもメリットがあります。やらなければ誰かに自社のシェアを奪われてしまう可能性もあります。

一方、デメリットとしては2つあります。しかしこれも他社とのアライアンスで解決可能です。1つは、既存の流通網では実現できないので、流通網を構築しなければならないという点です。対策としては、某流通企業と一緒に、自社ですでに構築しているサービスをベースに構築し直せば、新たに流通経路を構築する必要がありません。管理コストまで含めて試算すると自前でやるよりもリーズナブルです。

もう1つはシューズが自分の足に合わなかったり、破損したなどの返品・返送コストです。例えば、サブスクプランに加入する時に追加で「返品、交換し放題」というオプションを某保険会社と検討中です。

次のステップは、このビジネスモデルの成功の鍵となるサブスクへの移行がどの程度起こるのかを検証することです。

今もトラブルの種を抱えながら頑張っている彼らのREACH BEYONDをミズノが支えたい。リーズナブルな価値提案を通して、特別な誰かのためのサービスに留めず、1人でも多くの人に価値を届けたい。この思いでこのサービスを実現したいと思っています。

◆審査員からの講評
【笹原】私も左右の足のサイズが違うので、スポーツ用だけじゃなくてパンプス用もあるといいなと思いました。実現するにあたって一番気になるデメリットがメーカー側のコストだと思うのですが、解消するための方法は?

【清水】このサービスを1回のシューズの購入で実現しようと思うと、単品価格に経費や利益をプラスした料金になります。それをサブスクでダイレクトにお客様に届けることで原価で提案できます。この点で他社とアライアンスを組んで既存ではない流通網で勝負する。ここがサービスのキモになるので、現在検討を進めているところです。


パナソニック 前田瑞歩さんのピッチ
■女性の性犯罪被害を撲滅するための歩行者版「ドラレコ」

【前田】私は、1人で外出する女性が路上での性犯罪被害を受けた際に証拠が残らず必要な支援が受けられないという課題を解決します。

とはいえ、性犯罪と聞いても、「ピンとこない」「遠い世界の出来事」と思っている人がほとんどではないしょうか。私は14歳のとき路上で性犯罪被害を受けました。私の親友も同じく路上で被害を受けました。

これらは本当に遠い世界の話でしょうか。被害者である私や友人だけの問題でしょうか。もし、あなたのお子さんやパートナーなど大切な人が性犯罪被害に遭ってしまったら、その本人もあなたも、一生の苦しみを抱えてしまいます。性犯罪はごく当たり前の日常の中で起こり、世界中で苦しんでいる人がたくさんいるのです。その証拠に、世界では少なくとも年間32万件の性犯罪が発生しており、世界の女性の3人に1人が性暴力被害者です。

様々な性犯罪の中で特に解決したいのが、路上で体を触られるという性犯罪被害です。3人に1人の女性は1人で外を歩くことに不安を感じていて、実際に半数以上の性犯罪(強制わいせつ)は路上で発生しています。路上での性犯罪被害の課題は、証拠がないということです。私はこのCHANGEの期間中に実際に性被害を受けた60人にヒアリングを行ったのですが、その中で「被害を受けた際、各機関に相談したけれど証拠がないので適切なサポートを得られなかった」という声がたくさんありました。このように、性犯罪では証拠がないと被害届が出せず、警察が動かないため、犯人は捕まらず、再犯率の高い性犯罪がまた繰り返されてしまうといった悪循環が起こっています。

解決策のない今、被害者は毎日犯人がどこかにいると怯え、外を出歩くことに恐怖を覚え、もっとしっかり犯人を覚えていたらよかった、自分が悪かったんだ、と自責の念に駆られながら苦しんでいます。

この課題を解決するために私が考えたのが「歩行者版ドラレコ」です。メインターゲットは都市部在住の一人暮らしの20代女性で、小型のカメラを体につけて自動で撮影します。動画は個人の顔がわからないようにマスキング処理されており、警察に届け出る際のみに外せます。

商品の特徴は自動記録です。被害にあってしまった女性の半数以上は恐怖で動けないので、証拠を残すためにスマホで撮影したり、通報したり、防犯ブザーを鳴らすことは不可能です。しかし歩行者版ドラレコなら恐怖で動けなくても自動で記録できます。また動画データはクラウドに自動記録されるので、スマホを奪われても壊されてもデータは残ります。データは証拠となり、警察や支援団体が動き、犯人逮捕にも繋がるし、被害を受けた人が適切なケアを受けられるように支えることができます。その支援団体とも連携について議論しています。もっと広まればあらゆるところで衆人環視の目が生まれるので、性犯罪の抑止にも貢献できます。

パナソニックにはボディカメラや監視カメラを警察や街へ導入してきた実績があります。さらに動画庄縮、動画のマスク処理、暗所での撮影技術、手ぶれ補正などのパナソニック独自の技術を転用して、他社では難しい「プライバシーを担保しながらの動画処理」が実現できます。つまり自社の高度な技術を使って、社会問題を解決できるのです。

この歩行者版ドラレコの利用料は、本体代と最初の1年間の使用料で1万5000円です。1年目以降の使用料は月額500円で、動画処理・保管料が含まれます。広める第一歩としては、まずは個人よりBtoBで教育機関や企業へ販売することを検討しています。また世界の15~29歳女性は8.7億人で市場規模は18兆円。性犯罪発生上位10カ国の15~29歳女性だけでも2.7億人もいて6兆円の市場があります。だからより危険性の高い海外で先に実現して逆輸入するというやり方も考えています。

私はこの「CHANGE」を通して多くの性犯罪被害者の声を直接聞き、支援団体の方や社内の技術者ともつながりました。でも実現のためには技術面、法律面、マネタイズ、パートナーとの提携など、まだまだ多くの課題があり検討が必要です。そして、私自身の知見も仲間も足りません。ですので、今日、私のピッチを聞いてくださったみなさんのお力が必要です。何かできるかもしれないと思った方、どうかお声掛けください。そして女性たちが性犯罪で苦しむことのない、安心を享受できる世界をみんなで作りましょう。

◆審査員からの講評
【林(千)】最初に性犯罪と聞いた時、自分には関係ないと思いましたが、考えてみれば私も中高生の頃は日常的に痴漢の被害にあっていました。特に若い人たちの日常を守るという意味ではとても大事なソリューションだと思いました。その上で、性犯罪行為が角度によってはカメラに映らないというリスクはないのかということが気になりました。

【前田】まず1つ目の質問に関してはご指摘の通りで、撮影可能範囲などの技術的な部分では私も悩んでいるところです。実際に被験者にいろいろなタイプのカメラをつけてもらって検証するしかないと思っています。

【本間】モバイルやITの技術で社会問題を解決するのは大事です。でも一方で、特に先進国では個人情報保護の問題がどうしてもつきまとうので、その対策を完璧にやらなければこのサービスは実現できないと思います。この点についてはどう考えていますか?

【前田】おっしゃる通りで、逆に撮影していることで加害者を刺激してしまい、被害がより大きくなってしまう可能性もあります。それに社会的にも勝手に撮影しているということで社会的非難を浴びてしまうかもしれません。それだけは避けたいです。だから個人情報保護はある程度必要なので、自分で撮影した映像を自由に見るというよりは、被害に遭った際に必要な証拠を取り出す時だけ見るというふうにしたいと考えています。その反面、性犯罪を防ぐためには一刻も早くやった方がいいと思います。すでに車のドラレコは出回ってるわけなので、法律的にはNGにはならないと思います。

【本間】確かにドラレコも個人情報を保護するような技術を何も入れないで町中や人を撮影しています。だからもう「歩行者版ドラレコ」をリリースして、技術で社会問題を解決するという流れを作る方がいいかもしれません。ぜひ次のステップに進んでください。応援しています。


損害保険ジャパン 中川量智さんのピッチ
■「DX・イノベーション領域に現場から繋げていく」


【中川】みなさんはSONPOグループに対してどんなイメージをもっていますか? DX銘柄2020に選ばれたり、データ解析のPalantirや自動運転のTier IVとの協業、そしてブロックチェーン技術を活用したMaaSの実証実験など、かなりイノベーションに積極的に取り組んでいるというイメージがあるのではないでしょうか。

しかし現場はそのイメージと同じとはまだ言えない状況です。私は大阪で自動車ディーラーを担当し、自動車保険の販売の推進、マネジメントに従事しているのですが、現場で起きているのは、旧態依然とした競合他社との消耗戦。土日祝日の電話対応は当たり前。見積書や申込書の作成支援など御用聞きに近いことも多い状態です。

これらの業務はテクノロジーで代替できることをわかっていながらも、目の前の数字を作るためにやらざるをえない。だから正直言って現場は疲弊しています。我慢することが仕事なのか。耐えることが僕らの役割なのか。変革を考えることなんてとてもできない。そんな状況でした。

そんな時、この「CHANGE」というプログラムを知り、参加したことで、良質なインプットを得られ、情熱をもった仲間たちと出会えました。そのおかげで、「思考」より「試行」だと、とにかく行動しなきゃいけないと決意することができたのです。

そして自動車営業部2.0というプロジェクトを立ち上げ、そもそも現在の課題認識とは何なのかを改めて考えました。これまで私たちはBtoBtoCのビジネスモデルで、お客様ではなく代理店ばかりを注視していました。でも本来あるべき姿は、代理店とともにお客様を見ることです。なぜこれができないのか。それは保険商品自体が複雑で売り手すらも100%理解できておらず、その結果として保険に加入してもらうことが目的になっているからです。

本来、保険は加入していただいた後にこそ価値を発揮するものです。つまり必要なのは売り手と買い手の真の相互理解。これを実現するために、代理店と一緒に保険という形のない商品をお客様にわかりやすく説明する動画を制作してお客様にお届けするということを始めました。試行錯誤を繰り返しつつ3カ月行動し続けた結果、実績が出てきました。

例えばホンダのディーラーにはお客様向け来店誘導のサンプル動画を作成したところ、「このような動画がこれから必要だと思っていた」「損保ジャパンならではの提案」と大絶賛。 これから1年かけて数千万円の増収を狙っていきます。また、メーカーのホンダにも公認をいただき、東京と大阪の大規模ディーラーからも「このクオリティはすごい」「他の販社へも共有させてほしい」との声をいただき採用が決まりました。これから他の販売会社へも展開していきます。

国産車だけではなく、ジャガー&ランドローバーにも提案。インポーターとも連携しながら、ランドローバーならではのクオリティの高さやステイタスを感じられ、なおかつオリジナルのサービスをわかりやすく伝える動画を作成しご好評をいただきました。こちらもインポーターに承認をいただいた後、全国へ展開していきたいと思います。

このようなブランド保険等のお客様提案動画をきっかけに、マーケティングオートメーション、chatbot、さらにその先へ代理店向けSaaSを展開していきたいと思います。現場の課題に合わせてDXを実装し、現場からデータの基盤を整備することで、SOMPOのイノベーティブな取り組みは花開きます。

現在、6800億円の自動車ディーラーマーケットのうち、当社のシェアは2600億円ですが、この取り組みを継続することで更なるシェア拡大を目指します。今後も現場からDXでイノベーション領域につなげ、お客様から信頼され選ばれ続ける代理店・保険会社を目指します。

◆審査員からの講評
【石井】僕ら行政の現場も旧態依然とした環境のため職員はみんなすごく疲弊して、国民のみなさんにもご迷惑をおかけしています。この現状をDXによって変えようとしているところで、その次は民間のDXをお手伝いしたいと考えているだけに、中川さんの今のお話はすごく刺さりました。これができたのは規制ではなくて純粋な民間の商慣習ということでいいですか?

【中川】全くその通りです。今回このような取り組みができたきっかけは、社内の有志団体SOMPO Cotton倶楽部でこの動画に関するセミナーを開催したことでした。過去最高の170名の申し込みがあり、実は現場もイノベーティブな取り組みをやらなきゃいけないとは思ってはいるものの、なかなか最初の一歩が踏み出せない状況でしたが、その背中を押すという意味でも、社内の有志団体や現場での気づきこそがDXやイノベーションにつながると思っています。

【笹原】新たな価値を投入することでDXの抵抗を減らし、次につなげるという取り組みがとても興味深いですよね。さらにそもそも保険は加入しなければならないので、これをやることで利益は増えないという点が事業としてはつらいけれど、DXにトライするという意味ではすごくいい取り組みだと思いました。

【中川】確かにこの取り組み自体でマネタイズはできないし、短期的に利益を出すのは難しいのですが、現場からDX、イノベーション、そして新規事業につなげていくのがこの取り組みの最も大切な点だと思っています。


愛知製鋼 林太郎さんのピッチ
■被災者の心を温める「水だけで作れるカップラーメン」

【林(太)】9年間で20件。この数字は東日本大震災以降に起きた大規模自然災害の数です。地震だけではなく、台風や水害でも大きな被害が出ています。

統計上、避難を経験したことのある人は16人に1人。いつ誰が避難することになってもおかしくないのです。みなさんは自身が避難することを想像できますか? 

今回の「CHANGE」では、この避難の問題に、愛知製鋼の3名で取り組んできました。実は我々3名とも東海地方の出身なので、小さい頃から「いつか東海大地震が来るぞ」と言われながら育ちました。ゆえに避難所の問題は決して他人事ではないのです。

まずは避難経験のある人たちの生の声を聞こうとヒアリングしました。避難所生活で困ったことを聞いたところ、「あなたが想像する以上に精神的につらい」という声を聞きました。例えば寒さ、プライバシー、トイレなどつらいことは数え切れません。日常とはかけ離れたつらい現実が避難所にはあるということがわかりました。

その中で特に印象に残ったのが、「昨今は食料の備蓄が増えたため、餓死することはないけれど、毎日乾パンやカロリーメイトがつらかった」「温かいラーメンを食べられた時は本当に幸せだった」という声です。大変衝撃的なひと言でした。このおかげで、電気もガスもないストレスフルな避難所生活の中では、お腹だけではなく心も満たす食事が大切ということに気づいたのです。

まずは非常食のポジショニングマップを作成しました。横軸は食べ物の暖かさ、縦軸は食べるまでの手間の多少を表します。お湯を入れて食べられるカップラーメンやスープは確かに温かいですが、そもそもお湯を作ることが避難所では難しいことがわかり、手間が少なく温かい食事の大切さに気づきました。

そこで我々は水だけで作ることができるカップラーメンの開発に取り組みました。通常のカップラーメンとの違いは、底の部分に当社開発の発熱剤と反応用水が入っている点です。これにより、水さえあればたったの3ステップで温かいラーメンが食べられます。まず①水を入れます②底に穴を開けます。その時、中に入っていた反応用水と発熱剤が反応し、発熱剤が水を温め始めます。③蓋を閉じて10分待つ。これだけでお湯がなくても熱々のラーメンが食べられるわけです。

今後は包装メーカーと食品メーカーと協業し、発熱機能付きのカップラーメンを作る予定です。

単価は1個500円を想定しており、まずは昨今人気が高まっている登山市場から入り、そこで認知度を高めて避難所の配備に入っていこうと考えています。収益計画としては2024年頃、初期投資の回収を見込んでいます。

スケジュールについては、検証を終え、当社のトップに提案したところ、自主活動から業務へと昇格しました。今後はプロトタイプを作成し、実用化の実証実験を行い、社外ではアライアンスパートナーを探していきたいと考えています。

◆審査員からの講評
【西口】私は実は日本防災プラットフォームという日本の防災技術を世界に展開する団体の代表理事でもあるので、非常に意義のある話だと感じました。2つ質問があります。1つは水を温める技術はすでに確立しているのですか? 2つ目はどのくらいのサイズを想定していますか?

【林(太)】1つ目の質問の回答は、水を温める技術は1980年に特許を取っていて、その応用として可能だということを実験で実証済みです。2つ目は、日清食品のどん兵衛のサイズをモデルとしています。

【藤本】ビジネスモデルは、まず登山愛好家に向けて売っていくという話でしたが、今の災害発生の規模とスピードを考えると、もっと早く地方自治体に営業を掛けたほうがいいと思うのですが、いかがですか?

【林(太)】世間に広く認知させたいので登山市場から入るのがいいと考えていますが、当社の本社がある東海市役所の職員とはすでに話をしています。こういうところからPoC(概念実証)を回していきたいと考えています。

決勝ピッチの審査発表
■僅差でグランプリに輝いたのは……


【石井】正直言ってこの中から1チームを選ぶのはすごく難しかったです。私たち審査員の共通した見解は、「すべての発表者はしっかりと課題設定をして、想いと熱量もあり、一歩踏み出して人を巻き込んでいるのが素晴らしい。ただ、実際にビジネスとして動かせるかはまだまだこれからなので、頑張ってほしい」でした。

その中から僅差でグランプリに輝いたのは、みんなが必要だと思うことを技術で何がなんでも実現しようという「避難者のために、水で作れる温かいカップラーメンを届ける」プロジェクトです。愛知製鋼の林太郎さん、おめでとうございます。

【林(太)】今回のCHANGEは大変なこともいろいろありましたが、学んだことは非常に多かったです。中でも新規事業を生み出すためにはとにかく動いてみることが大事ということが大きかった。一歩踏み出してお客様の声を聞いて、いろいろ悩むことも多かったですが、CHANGEの仲間たちに相談できたので非常に勉強になりました。社内に新規事業コンテストはないのですが、社長までこのプランを持って行けたので、私自身も会社も変われました。今回、このCHANGEで貴重な経験をさせていただいたので、今後は周囲のみなさんにギブできるように頑張っていきたいです。

【濱本】3カ月間みんなで支え合いながら進めてきたこのCHANGEプログラム。今回5名のピッチを聞いただけで胸がいっぱいになりました。まだこれで終わりではありません。メンターのみなさんにもぜひご支援いただきつつ、この次のステップにみんなで進めていきたいと思っています。

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構成=山下猛久
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:斉藤 久美子

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