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ONE JAPAN 事業共創プロジェクト DemoDay 【ONE JAPAN CONFERENCE 2021公式レポート: VALUE②】

「アクセラ担当なんて不要なくらい、事業共創を当たり前に」をコンセプトに「ONE JAPAN事業共創プロジェクト」が始動して1年。ここで何が生まれたのか、「ロスゼロ」「MEDITA」「POL」の3組が共創内容を発表した。スタートアップが大企業と組むことで広がる世界、一方で大企業側のベネフィットや狙いはどのようなものか、大企業社員がオープンイノベーションを使いこなすためにはどう動けばよいのか。今後の事業共創のヒントが詰まったピッチが展開されました。

【登壇者】(敬称略)
[スタートアップ]
・ 田中彩諭理 / 株式会社MEDITA 代表取締役
・ 文美月 / 株式会社ロスゼロ 代表取締役
・ 宮﨑航一 / 株式会社POL 執行役員 事業企画部
[共創担当者]
・ 熊田雄介 / 東急株式会社 沿線開発事業部 開発第一グループ 課長補佐
・ 斎藤謙一 / 富士フイルムシステムサービス株式会社 公共事業本部 本店営業部 戦略推進課 リーダー
・ 関本良平 / 東急建設株式会社 価値創造推進室 イノベーション推進部
・ 用丸雅也 / 株式会社電通 第2クリエイティブ局 / Future Creative Center / 電通若者研究部
・ 吉富亮介 / 株式会社マッキャンエリクソン クリエイティブパートナー
[コメンテーター]
・ 斎藤祐馬 / デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長
・ 中村亜由子 / eiicon company 代表
・ 鈴木健二朗 / 日本経済新聞社 新興・中小企業エディター
・ 福井崇博(モデレーター)/ 東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ 課長補佐

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食品ロスのネガティブイメージをポジティブ転換

福井:「アクセラ担当なんて不要なくらい、事業共創を当たり前に」をコンセプトとして、「大企業で働く誰もが、オープンイノベーションという選択肢を持ち、実行できる状態」を目指してONE JAPANの事業共創プロジェクトは1年前に始動しました。プロジェクトは「知る」「共創する」の2ステップで構成していて、「知る」のステップではデロイトトーマツベンチャーサポートさんにご協力いただき、「出張版Morning Pitch in ONE JAPAN」も6回開催してきました。本日はこのプロジェクトを通して生まれた事業共創のなかから、3組にご登壇いただきます。まずは1組目、フードシェアリングサービス「ロスゼロ」からスタートです。ロスゼロの文さん、共創を進めたマッキャンエリクソンの吉富さん、東急の熊田さん、よろしくお願いいたします。

文:ロスゼロは「作り手」と「食べ手」をつなぐプラットフォームです。「食品ロス」というのは、食べられるのに捨てられる食品のことをいいますが、日本では年間600万トン発生しており、大きな社会課題になっています。そういった余剰商品を消費者に「おいしく、納得して」食べてもらいロスを減らしていくのが、ロスゼロが目指していることです。

この1年、食品ロスやSDGsは注目を浴び、百貨店、旅行会社、総合人材グループ、損害保険会社、自治体などと社会課題解決に向けてご一緒させていただきました。そのなかの1つがマッキャンエリクソンさんとのサブスク事業です。サブスク事業を着手するにあたり、懸念される課題が3つありました。「在庫のばらつき」「処分直前の商品が送られてくるのではないかというネガティブイメージ」「嗜好の違いへの対応」です。この懸念点を、マッキャンエリクソンさんの力をお借りしてポジティブな発想へ転換させ、生まれたのが「ロスゼロ不定期便」となります。

V②ロスゼロ不定期便

在庫不安は「いつ届くかわからないワクワク感」へ、食品ロス商品への不安は「メルマガやブログを通じた情報共有」で理解を高め解消、嗜好のばらつきに対しては「エシカル消費、応援購入に関心のある方から始める」ことで、新たなサービスとしてスタートを切ることができました。ロスゼロ不定期便は、ONE JAPANメンバーを対象とした試行展開を経て、11月より本格展開をします。

国民がいちばんわかりやすいSDGsの取り組み

文:2つ目のコラボレーションとしてスタートしたのが東急さんとの取り組みです。ロスゼロは、大阪本社のスタートアップです。そのため、関東でのオフラインのつながりが弱いという課題がありました。そこで、サステナブルなまちづくりを進めている東急さんとの共創事業として、東急が展開する大井町のPARK COFFEEでの販売会を行いました。スポットの販売会だけではなく、先ほどお話しした「ロスゼロ不定期便」の受付もカフェで行っていく予定です。

中村:マッキャンエリクソンさんと東急さんにとって、この共創プロジェクトから得られるベネフィットはどういったものになりますか?

吉富:マッキャンエリクソン含め広告業界でも、SDGsの取り組みは大変な注目を集めています。積極的に取り組み知見を集めなければ競争に勝てない。ロスゼロさんとの取り組みはそういった意味でも貴重な機会でしたし、この取組みを通じてフードロス削減に貢献できればと思っています。

熊田:一般的には、まちづくりというとインフラをつくり、建物を建てるなどハードから入ることが多いんです。ですが昨今、SDGsをディベロッパーからのメッセージとして発信し、街の方々に共感いただきながらその地域に色をつけ、そこからハードでも暮らしを支えるといった流れが増えつつあります。今回はその大事さに改めて気づくとともに、今後の街づくりを実践していく上でも、いいきっかけになったと思います。

斎藤(祐):ロスゼロさんは今後、どのような企業と組み、どのような取り組みをしていきたいとお考えでしょうか。

文:食品ロスは、国民がいちばんわかりやすいSDGsの取り組みの一つなんですね。「食品」というくらいですから、食品メーカーとの事業共創を一番に思い浮かべられるかもしれません。消費者を顧客に持たれている企業だけでなく、BtoBの企業まであらゆるジャンルの企業との接点を持ちたいと考えています。

理系学生の採用サービスにおける事業共創

福井:2組目は、理系学生の新卒採用サービス「LabBase(ラボベース)」を展開するPOL(ポル)の宮﨑航一さんと、事業共創を進めた富士フイルムシステムサービスの斎藤謙一さん、電通の用丸雅也さんです。

斎藤:まずは私の個人的なことからお話しさせていただきます。会社での私は人事担当でもアクセラ担当でもありません。ですがゲートキーパーとなり弊社人事部マネージャーを巻き込んでPOLさんとの事業共創を形にしました。もともと弊社には、AIやデータサイエンスの勉強会を積極的に開いている理系社員がいます。彼のような変革人材を増やしたいと人事部と話していたところ、このプロジェクトのピッチイベント「出張版Morning Pitch in ONE JAPAN」でPOLさんと出会ったという背景があります。

用丸:私は電通で「広告領域にとらわれないクリエイティブ開発」に従事しています。若手を中心にさまざまな職種の人が集まったバーチャル組織「電通若者研究部」としてONE JAPANに加盟しています。Z世代とも呼ばれる若者の間では今、激変している価値観があります。それは「働き方」です。働き方をただ開発するだけではなく改革するという視点で、POLさんと電通のクリエイティビティで、産業とアカデミアの間に架け橋をつくっています。

大学の研究と産業界をつなぐプラットフォーム

宮崎:それでは私からPOLの事業概要について説明したいと思いますが…その前に、以下の3つに共通するものは何だと思いますか?

①インターネット ②LED ③C言語

実はこの3つ研究から誕生したイノベーションなのです。大学の研究はさまざまなイノベーションの源泉となっています。ですが残念なことに、「大学の研究」と「産業界」の間には大きな溝があります。理系の学生や研究者からは、研究が「将来にどうつながるのか?」「社会の役に立つのか」うまくイメージできていないという声を多く聞きます。一方で、産業界は「どこでどのような研究がなされているのか」「どのような研究が自社の役に立つのか」を全て把握するのは難しい状況です。

そこで2017年にリリースしたのが、優秀理系学生の採用プラットフォーム「LabBase」です。従来は教授推薦やOBの紹介などでしか、研究を活かせる場所を知ることができませんでした。それがこの公開スカウト型のLabBaseを通すことで、選択肢を増やすことができます。

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ONE JAPANのピッチイベント「出張版Morning Pitch in ONE JAPAN」をきっかけに、学生・若手研究者個人と民間企業が一緒にプロジェクトに取り組む2つのJoint Researchが進んでいます。1つが富士フイルムシステムサービスさんとのプロジェクトで、理系の変革リーダー人材を輩出するインターンシッププログラムの企画設計をしました。このインターンシッププログラムが従来と違う点は人事だけでなく、最前線で活躍するSE職を巻き込んだことです。現場社員の業務に入り込むような実践型、実務型のプログラムとした結果、内定につながった事例も出ました。昨年に続き、2回目の開催も現在検討中です。

もう1つ、電通さんとのプロジェクト「LABmeets」では、研究のための研究ではなく、研究を経営課題解決に生かすインターンシッププログラムを企画設計しました。具体的には、遊戯施設を運営するイオンファンタジーさんの経営課題に理系学生が「研究を活用した解決策」を社長に提案するというものです。イオンファンタジーの経営層からは「子どもがどんなときに喜んでいるのか、もっと理解したい。AIを活用して子どもの遊びを科学できないか」という問いかけがありました。このプログラムの肝は、「人事部からではなく経営部門から予算を頂いた」というところにあります。経営層が実践までコミットしたプログラムである、というところがポイントでした。遊んでいる子どもの行動をAIカメラで収集・分析し、行動データとするモデルを提案。優勝チームのアイデアがJoint Researchに発展し、現在も研究が進んでいます。

これからも、大学の研究と産学会の新しい関係性を提示していきます。


鈴木:大変興味深い取り組みだと感じています。ひとつお聞きしたいのが、企業側から課題を提示されるのか、それとも学生さんの方から積極的に課題の提示があるのか、どちらでしょうか。

用丸:今回は「LABmeets」最初の取り組みとして、イオンファンタジーさんから経営課題を提示されました。ただ2回目以降に関しては募集中で、企業側から要望があれば学生さんから課題提示を行うということもあるかもしれません。

建設現場の熱中症対策に「ヘソ」周辺に装着するデバイス

福井:最後の3組目は、体温変動データを取得できるウェアラブルセンサーを開発するMEDITAの田中彩諭理さん、東急建設の関本良平さんです。

関本:東急建設では、工事現場での夏の熱中症対策は必須です。ただ、心拍や体の表面温度を測るだけでは充分な対策は難しいため、深部体温の変動データを取得する良い方法や装置を探していました。そんななか、ONE JAPANを通して出会ったのがMEDITAでした。

田中:早稲田大学発のベンチャーMEDITAは、おへそと深部体温の相関性を発見し、ウェアラブルデバイスによる体温変動の解析を行っています。CEOを務める私は、IoTベンチャーの経営企画を経て起業、CRO(研究責任者)の丸井朱里は、体温に関する早稲田大学の研究者です。

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熱中症死亡労災のうち、3人に1人が建設現場勤務なのをご存知でしょうか。蒸し暑いなかで運動や仕事をしていると体内で熱が発生、体外に熱をうまく捨てられず体に熱が溜まると熱中症を発症しますが、これは深部体温をうまく計測できていないと事前にキャッチできません。そこで私たちの出番です!

感染症や肝炎、小児発熱への応用も

田中:弊社のウェアラブルデバイスの特徴は大きさは約4㎝と小型でありながら、分刻みでの体温と体動の同時計測が可能で、2日ほどの長期間の計測もできます。熱中症を引き起こすリスクがある環境のなかで、へその温度は直腸温度(深部体温)と近い推移を示すため、おへそ周辺を測るウェアラブルデバイスなら深部体温をキャッチし、熱中症のリスクを減らせるというわけです。そこで8月の猛暑下と10月の平温下の2回、東急建設様の工事現場でPoC(Proof of Concept:実証実験)を実施しました。

5名のうち1名が実際に熱中症になったのですが、熱中症の直前では深部体温が上昇し続け、最高温度の保持時間も長いということがデータからわかりました。

今後は、現場従業員の体温変動データをクラウド上に送り、管理者にアラート通知し熱中症を防ぐ、熱中症予防システムを構築していきます。建設現場に限らず誰もが安全に、そして健康に働ける未来をつくっていきたいと考えています。

斎藤(祐):田中さんに質問です。建設現場や工事現場以外での活用方法として思い描いているものはありますか。

田中:現場系の職場だけではなく、現在も猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症や肝炎など、おもに体温変動が起こる疾患にも応用が可能だと考えています。あとは小児発熱に関しても課題感を持っていますので、取り組んでいきたいと考えています。

斎藤(祐):いちばんの強みは何ですか。

田中:これまで「深部体温の連続変動」は直腸でしか測れないものでした。私たちは体温センサーと体動センサー両方使うことによって、「深部体温の連続変動」という取得しづらいデータを取ることができます。また、体温変動の解析もなかなかできなかったところをできるようになった、という技術に強みがあります。

オーディエンス賞は「ロスゼロ」チーム

福井:最後に、「オーディエンス賞」の発表です。オーディエンスの皆さんには、登壇した3組のなかで「最も共感した、応援したい」取り組みに投票をいただきました。

V②オーディエンス賞

オーディエンス賞は「ロスゼロ」チームです。ロスゼロの文美月さん、東急の熊田雄介さん、マッキャンエリクソンの吉富亮介さんおめでとうございます。代表して文さん、ひと言お願いします。

文:ありがとうございます。「ロスゼロ」が受賞できた背景には、みなさん食品ロスを自分ごととしてとらえている、ということがあるような気がします。企業でも家庭でも食品ロスの問題があるという課題意識があり、ビジネスとしても解決ソリューションが続々と出てきている。これは大きなチャンスです。食品ロスはこうやれば減らしていけるんだということを、より多くの企業様とお話しながら、知見をお借りし、「もったいないを価値あるものとして提供」し、社会を変えていきたいと考えています。本当にありがとうございました!

福井:文さん、ありがとうございました。

「アクセラ担当なんて不要なくらい、事業共創が当たり前な状態」が大企業のスタンダードになる日まで、今後もプロジェクトは続きます。今回の3組はもとより、今後のプロジェクトもご支援いただけると幸いです。みなさん、ありがとうございました!

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構成: 中原 美絵子
編集: 福井 崇博、香西 直樹
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ: 原 純哉

■ONE JAPANからのお知らせ
ONE JAPAN 2冊目の書籍「なぜウチの会社は変われないんだ!と悩んだら読む 大企業ハック大全」(ダイヤモンド社)
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