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ONE JAPAN5周年記念対談~これまでとこれから~ #3 濱本隆太&土井雄介

大企業の若手・中堅社員を中心とした企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」は2021年9月で5周年を迎えました。現在では55社3000人が集うまでに拡大したONE JAPANですが、世の中に、「挑戦の文化をつくる」ための活動は日々続きます。ONE JAPANに深く関わるメンバーに、ONE JAPANのこれまでとこれからについて、それぞれの想いを聞きました。
第3回目はONE JAPAN幹事の中でも新鋭の2人、大企業変革者支援プログラム/ESG担当の濱本 隆太インキュベーション担当の土井 雄介への対談インタビューです。

挑戦へのワンアクションを踏み出すきっかけを与える―ONE JAPANでの役割

―まずは自己紹介を兼ねて、お二人の本業での業務内容を教えてください。

濱本:パナソニックの「コーポレート戦略・技術部門 エネルギー事業開発室」というという部署で、エネルギー関連の事業開発テーマの一つをリードしています。また、サステナビリティ経営を推進するための全社横断型のコンソーシアムの運営事務局も担っています。

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土井:トヨタ自動車で、新しい技術開発や未来の構想を担う部署、そして出口として新規事業を担う部署どうしが連携し、新規事業を創出する仕組みである「事業創生プラットフォーム」を2020年に立ち上げました。現在はそのプラットフォームの企画/運営を担当するなど、3つの部署にまたがった横断的な仕事をしています。
加えて、かつて出向していた「株式会社アルファドライブ」というベンチャー企業に今も籍を置いて仕事をしています。なので、「本業」と聞かれたらトヨタとアルファドライブ、その2つですね。共通しているのはどちらも社内から新規事業を生み出す、いわゆるインキュベーション、アクセラレーション支援が僕の役割です。

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―お二人ともそれぞれの会社で未来の経営課題に取り組んでいるのですね。続いてONE JAPANでの役割や取り組んでいることを教えてください。

濱本:大きく二つあります。一つは大企業から世の中の変革に取り組む挑戦者を支援するプログラム「CHANGE」の運営事務局のリーダーを務めています。もう一つは、日本の企業活動を通じてESG&SDGsを社会実装することを目指すプログラム「BRIDGEs」の立ち上げと運営をしています。

―BRIDGEsは、2021年6月のカンファレンスも盛況でしたね。

濱本:オンラインでの開催となりましたが、おかげさまで1,257名の方にご参加いただき、小泉進次郎環境大臣や元・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道さん(現・テスラ社外取締役)、トヨタ自動車CSO大塚友美さんなど、SDGsのフロントランナーの方々にスピーカーとしてご登壇いただきました。
サステナビリティ経営がグローバルで大きな潮流になっている中で、日本の大企業はその潮流に乗り遅れているのではないか――BRIDGEsでもこれまで70回以上にわたって勉強会を開催していますが、そのたびにそんな危機感を抱いています。小泉大臣は「SDGs“する”」と表現しましたが、まさにSDGsを「名詞」から「動詞」にするくらい、BRIDGEsに参加する一人ひとりがSDGsの課題に対してワンアクションを踏み出せる後押しをしていきたいですね。

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土井:最近では本業で社内新規事業のインキュベーションに携わっていることもあって、同様の社内インキュベーション担当(公募制度事務局など)の人たちのための支援コミュニティ「incuβ(インキュベータ)」を立ち上げました。
スタートアップなどは、日ごろから外部との交流や情報交換を活発に行っていますよね。一方で大企業の場合、最初のフェーズではアイデアソンなど華々しくイベントや交流を行うのですが、そこから事業を形にしていくフェーズに入ると機密性を重視しすぎるあまり、途端に外部との交流が途絶えてしまいます。
僕自身もベンチャーに身を置きながら、大企業ならではのそういった閉塞感を感じていたので、機密はしっかりと担保しながら、できるだけ大企業の社内インキュベーション担当者どうしがノウハウや課題をシェアできるコミュニティをつくりたいと思いました。それが「incuβ」を立ち上げた動機です。この活動を通じて、社内新規事業の成功確率を上げる支援ができればと思っています。


有志活動で受けたバッシングの嵐―有志団体・ONE JAPANとの出会い


―お二人がそれぞれ所属する有志団体に参加するきっかけと、ONE JAPANに参加するきっかけは何だったのでしょうか

土井:社会人2年目の時、会社の同期を介して、当時Panasonicの2年目だった安藤さんに会う機会がありました。そこでパナソニックの有志活動「One Panasonic」の話を聞かせてもらって、いい意味で「うわ、パナソニックやべぇ!」と(笑)。ちょうど「そろそろただの飲み会から卒業して社内で真面目な活動したい……」と思っていたタイミングだったので、刺激を受けましたね。その半年後くらいに、「ONE JAPAN立ち上げるから来てみなよ」と誘われて、その流れでONE JAPANに加盟しました。有志活動は5人くらいのメンバーで朝活のようなことをやっていたのですが、そこで「トヨタをもっと面白くするために、ビジコンやろう!」という話になり、立ち上げていきました。

※A-1立ち上げ経緯は下記noteを御覧ください。

濱本:僕は、会社の先輩の濱松さんとの出会いがきっかけですね。濱松さんが企画したOne Panasonicのイベントに参加して、400人くらい集まっている光景をみて、「経営幹部との距離は思っていた程遠くはないのかも。自分自身もこんな繋がりを創る側になりたい!」と思って。そこから「One Panasonic」の幹事をやることになり、濱松さんがONE JAPANを立ち上げるタイミングでONE JAPANの運営にも加わりました。

土井:One Panasonicとの出会いやONE JAPANのイベントへの参加を機に、トヨタでも先輩方と一緒に新しい有志活動を立ち上げました。それが、「A-1 TOYOTA」という社内有志のビジネスモデルコンテストを中心とした活動です。ただ、有志活動を始めた当初は、もちろん自分たちの考えや活動内容がまだまだだったというのはありますけど、とにかくバッシングの嵐で……「何、秘密結社みたいなことやってるんだ」と言われたり、同期の飲み会でも「土井はちょっとぶっ飛んでるからね」と冷ややかな反応を受けたり……。帰り際に上司にPCを取り上げられたこともあります(笑)。

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濱本:僕はOne Panasonic、ONEJAPANとかれこれ7年ほど有志活動に携わっているから、バッシングは浴びるほど受けたなぁ(笑)。今も現在進行形でいろんな声はあります。


本業と有志活動の「越境」サイクルが自己成長につながるーONEJAPANに携わる原動力

―多くの批判を浴びながらも、お二人が今日まで社内の有志活動やONEJAPANでの活動を続けてきたモチベーションは何だったのでしょうか。

土井ONEJAPANに参加したこと、「A-1 TOYOTA」を立ち上げたことが、僕にとってキャリアの大きな転換点になりました。A-1が起点となって立ち上がった社内公募制度「B-project」では僕自身もプレーヤーとして2年連続で事業採択され、外での越境活動をきっかけに役員付の特命業務担当になり、社内で初のベンチャーへの出向、社内インキュベーション支援……と、自分のキャリアがどんどん拓けていったんです。
そういった自分の歩みを振り返ると、本業で批判され、くじけそうになっても、有志活動では同じ悩みを抱えていたり、頑張っている仲間がいる。彼らと切磋琢磨し、共感したり励まされたりすることでガソリンをチャージして、それを本業のほうに還元していく――自分の中で両方の場を「越境」するサイクルが確立され、そのサイクルを回していくことで、本業でも少しずつ認められていったし、だんだん自分自身のキャリアアップや成長につながった実感があります。
だから、僕と同様に社内の壁にぶち当たって閉塞感を感じている人のために、ONE JAPANがその壁を突破するためのオプションを提示していきたい。ONE JAPANを、大企業の中で苦しんでいる若手中堅のみなさんの加速装置にしていきたい。そんな思いで活動に携わっています。

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濱本:未来に向けた新しい取り組みというのは、“P/L経営”の短期的な視点で見るとどうしても「緊急性が低い」と判断されてしまいます。先ほどお話ししたサステナビリティの課題などが典型ですよね。だから、ONE JAPANで取り組んでいるCHANGEやBRIDGEsも「そんなことやっている場合じゃないだろう」とみられがちです。だけど、緊急性が高くなった頃にはもう会社は手遅れな状態になってしまうと思うんです。
その長期的な課題に対する重要性を自ら認識して、周りに何と言われようとくじけずにポジションを張り続けていく。その姿勢が、結果として会社の長期的な成長につながることを信じています。そういう使命感のようなものが僕にとってのモチベーションですね。


「認められる」から「結果を出す」のフェーズへ―有志活動・ONE JAPANの「これまで」と「これから」

―それぞれの会社の有志活動にも長く携わり、ONE JAPANにも設立当初から参画しているお二人ですが、昔と今とを比較して、有志活動やONE JAPANの変化をどのように感じていますか。

土井:ONE JAPAN、ひいては会社の有志活動というものが、この5年間で少しだけ市民権を得た気がしています。少なくともトヨタの中ではONE JAPANやA-1 TOYOTAのこと多くの人が認知してくれるようになりました。有志活動を立ち上げた当初と比べると、「いい取り組みだよね」と応援してくれる人も増えてきました。

濱本:One Panasonicはかれこれ10年近く活動していますが、改めて思うのは、濱松さんをはじめ僕たちの先輩方が先に走って道を切り拓いてくれたこと。当時は今よりもっと批判があったはずなのに、先輩方が壁にぶち当たりながらもその壁を少しずつ突き崩してくれた。サッカーに例えたら先輩方が前線で戦ってくれたおかげで、気づいたら僕たちが走るスペースができていた、みたいな(笑)。僕たち以降の世代がその恩恵を受けていることを実感しています。

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「文化をつくるのに10年かかる」とよく言うけど、ようやく文化になってきたのではないかという手応えを、会社の中では感じています。今の経営幹部の中にも有志活動を応援してくれる人が増えてきています。

―最後に、これからのONE JAPANについて、お二人の意気込みを聞かせてください。

土井:この5年間でONE JAPANの存在が少しずつ認められてきたのは素直に嬉しいけど、ONE JAPANとしてはまだ確固たるバリューを見いだせていないと思います。「なんかいいことやっているみたいだけど、その結果何ができたの?」という問いには十分応えきれていない。ONE JAPANとしてもっと結果を出していかないと、「結局遊びなのでは?」という批判に反論できないし、何より、自分自身を含めて頑張っているメンバー達にとってもったいない。この5年間で醸成された有志活動のムーブメントを、きちんと結果として見せていかなければいけないフェーズに入ってきたと感じています。
そのためには、「土井雄介」個人としても、もっと会社の中で認められる人材にならなければいけないと思っています。そのことが大企業の中にもこういう人がいるんだ」というメッセージとなり、想いを持った新たな挑戦者が出てきて、その人がゆくゆくは支援者に回る――そういうポジティブなサイクルが社会で生まれると思うんです。

濱本:今、日本のスタートアップの中でもユニコーンと言われる企業が少しずつ生まれてきています。ただ、日本の場合は良くも悪くも大企業に多くのリソースがあるので、大企業出身者がユニコーン企業をつくる、あるいは大企業の中でユニコーンクラスの事業をつくるような動きがもっと起こっていいと思っています。
私が運営している「CHANGE」では、毎年100人の方がプログラムを受講しています。すなわち、イノベーターの卵が毎年100人生まれている状態。これが100倍の1万人になったら、単純計算ですがユニコーン企業が生まれる確率も100倍に上がりますよね。イノベーターの卵を毎年1万人、10年で10万人生み出すことで、ユニコーン企業を生む土壌をつくっていきたい。それが、僕がこれからのONE JAPANでやりたいことですね。

ーこれからのONE JAPANを担っていくお二人の確かな決意を感じました。ありがとうございました。

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構成:堀尾大悟
インタビュアー・編集:岩田健太(東急/水曜講座)
撮影:濱本隆太(パナソニック/BOOST)
デザイン協力:金子佳市

取材場所協力:Shibuya Open Innovation Lab

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