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有志活動総選挙 FINALIST PITCH【ONE JAPAN CONFERENCE 2021 レポート:全体セッション②】

ONE JAPANの根幹は、企業内有志活動です。小さな個人のWILLが多くの賛同を集め、大きな価値を創造し、企業を動かす――有志活動の熱気が、経営層やマネジメント層をも巻き込みながら、大企業の中に大きなうねりを生んでいます。
全体セッション②は、各企業による有志活動のピッチを勝ち抜いたファイナリスト4団体による「有志活動総選挙FINALIST PITCH」。ONE JAPANのスローガン「辞めるか、染まるか、変えるか。」の「変える」を選択した4名による、魂のこもったピッチをお届けします。

登壇者
・ 太谷成秀 / NTTグループ /「O-Den」
・ 吉富亮介 / 株式会社マッキャンエリクソン /「McCANN MILLENNIALS」
・ 唐津勇作 / 旭化成株式会社 /「起業家クラブ」
・ 土井雄介 / トヨタ自動車株式会社 /「A-1 TOYOTA」
・ 濱松誠(モデレーター)/ ONE JAPAN 共同発起人・共同代表
・ 竹中花梨(モデレーター)/ 株式会社東芝 コーポレートコミュニケーション部
[コメンテーター](敬称略)
・林千晶 / 株式会社ロフトワーク 取締役会長
・藤吉雅春 / Forbes JAPAN 編集長 兼 取締役

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NTTグループ「O-Den」(太谷成秀)

約1000社・32万人のNTTグループを横串して、「NTTグループ内外との出会いの場」「本業とは異なる学びの場、挑戦の場」を提供しているのが「O-Den」です。

・傍観者…会社や自分の現状に不平不満を言って、何も行動に移さない人
・参加者…現状を変えたいとの思いから一歩を踏み出している人
・主催者…自分以外の誰かを変える行動をとっている人

新人の頃の私は「傍観者」。与えられた目の前の仕事をこなし、不平不満を言って飲んでの繰り返し。2年目のある日、O-Den共同発起人の一杉から聞かれました。「やりたいことはあるの?ワクワク楽しく働いているの?」――当時の私は考えたこともなく、何も答えられませんでした。
後日、O-Denのイベントに参加して衝撃を受けました。「こんなにも心の底からワクワク楽しく働く人たちがいるんだ!」――この原体験が、私が傍観者から参加者へと踏み出す、本当に大きな一歩となりました。

その日を境に、O-Denのイベントに毎回参加するようになり、本業では得ることが出来ないインプットやスキルの向上ができ、多くの仲間もできました。その過程で「私と同じようにモヤモヤする若手を後押したい!」というWILL(意志)が湧き出てきて、20代限定の「O-Den20s」を一から企画し立ち上げました。傍観者から参加者、そして主催者へと変わっていったのです。

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私だけでなく、O-Denに関わる多くの人が参加者から主催者へと自己変革し、本業とのシナジーがたくさん起きてきています。

・新規事業プログラムの有志イベントを開催し、優勝したことをきっかけに社内で検証予算を獲得
・O-Denでつながった有志のメンバーで立ち上げたプロジェクトが会社組織化
・会社公式のNTTグループ横断交流会を毎年開催。ここから億単位のビジネスが創出

気がつくと、O-DenはNTTグループ58社、延べ5千人がつながる規模になり、会社公認の存在にもなりました。
2021年4月には複業・越境をテーマとしたイベントを開催し、NTT東日本の矢野副社長、各社人事部長など経営層・マネジメント層に登壇してもらい、約1,800人の申し込みがありました。

「3.5%の人が動けば社会は変わる」というある有識者の言葉があります。NTTグループの3.5%は約1万人。今日から太谷が代表となり、飯田・山岸の新副代表2名でスタートする新生O-Denではこの1万人をつなぎ、1万人が一歩を踏み出す場を作り、社会に価値発揮していきます。

・コメンテーター質疑(一部抜粋)

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【林】NTTはものすごく規模が大きいので、3.5%の有志だけで1万人になってしまう。逆に大きすぎて動けなくなるのでは……?

【太谷】確かに規模が大きいのですが、1万人がゆるくつながりながら、必要なときに一緒に動けるようにすることが大事だと思います。

【藤吉】傍観者から、参加者を、さらに主催者を増やしていく上で工夫したことはありますか。

【太谷】なるべくリーダーに若手を据え、年齢関係なく全員がそこに挑戦できるチャンスがある、という空気を醸成できたのが大きな要因だと思います。


株式会社マッキャンエリクソン「McCANN MILLENNIALS」(吉富亮介)

McCANN MILLENNIALS(以下「ミレニアルズ」)は、広告会社マッキャン・ワールドグループの各社を横断して結成されたオープンイノベーションユニットです。

私たちはなぜこの活動をしているのか。端的にいうと「生存戦略」です。目の前の仕事に取り組むために技術やスキルを磨いていくことは大事なことです。しかし、これからの「人生100年時代」において、スキルに加えて若いうちに「経験」をどんどん稼いでいかないと生き抜いていけない、という危機感が私たちの中にはありました。

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しかし、経験を高めるために勤務時間外の朝や夜、もしくは休日を削って社外活動を行うとなると、恋人や家族と過ごす時間が疎かになってしまいます。普段の勤務時間の中で経験を高められる機会をつくりたいと思い、私たちはこのミレニアルズの活動を、業務の10%の中で使えるルールを定め、経営層の承認を得ました。
ミレニアルズを「社内複業」の場として活用しよう――私たちは常々そう話しています。実際のミレニアルズにおける社内複業の一例をご紹介します。

・世界初のクリエイティブAI「AI-CD β」を開発。世界40か国・200メディア以上と世の中に多く露出(複業:AI開発)
・海外オフィスと交流できるアジア圏ノマド人事制度の開発(複業:人事)
・サウス・バイ・サウスウエストをはじめとした様々な海外カンファレンスを視察して、会社として情報発信(複業:広報)
・ゲストを招待した自主イベントの開催、メディア運営、連載執筆(複業:イベンター・ライター・エディター)
・さまざまな新規事業&プロモーション協業プロジェクト(複業:事業開発)

これらの複業は、すべてメンバーが主体的に考え、自分たちの手で生み出したものです。私はこれを「バッターボックス」と呼んでいます。バッターボックスを自らつくり、バットを振り続ける。その実践の場こそがミレニアルズなのです。

有志活動は、自分の可能性を広げる場になる――私はそう信じています。皆さんも、有志活動で社内複業を試してみてはいかがでしょうか。

・コメンテーター質疑(一部抜粋)

【林】「社内複業を増やす」と発表していましたが、社外も含めて複業だから、単に「複業」でいいんですよね。その複業のカルチャーを、社内に留まらず外資系のマッキャンこそ先導して社外に拡げてほしいと思います。

旭化成株式会社「起業家クラブ」(唐津勇作)

「旭化成起業家クラブ」とは、社員が個人の成し遂げたいことを実現するための環境づくりを目的とした、旭化成の「知の集合」の場です。発足から2年と歴史は浅いのですが、メンバーは当初の12人から20倍以上の296人に、活動も本社から始まり、現在は6か国15地域まで広がっています。

さて、ここで参加者の皆様に一つだけ問いかけさせてください。有志団体で一部の方だけが持っている熱すぎる想いとその行動、それは全員の結果につながっていますか?私たちは有志団体の結果について次のように考えます。

・有志団体の結果とは、個人のWILLを醸成できる土台の提供

コミットメントを求めるあまり参加ハードルを上げるのではなく、「誰でも入れる敷居の低さ」こそ重要だと私たちは考えています。敷居を低くすることで多様性が生まれ、普段見えない個性が出る。だからこそ「知の集合」が起きるのです。

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パレートの法則によると、組織の上位「20%」が優秀とされます。しかし、残りの「80%」の中にも内に秘めた思いや、アイデアを持っている人はいます。私たちの有志活動で注目しているのは、この「80%」です。

一例を挙げると、研究職のWさんは「人々がもっと健康に暮らしてほしい」という内なる想いを持っていました。思い切って起業家クラブのツール内で投稿し、その想いに賛同する人たちと「セルフコンディショニング部」を設立。当社アクセラレーターの健康食品系企業に参画するまでになりました。彼女は決して前に出るタイプの社員ではありませんでしたが、起業家クラブの敷居の低さこそが、彼女のWILLを引き出し、実現に導いたのです。

私たちが実現したいのは「社内の誰が何をやっているか分からない」状態から個人のWILLを見える化し、お互いに尊重し、起業家精神を持って活動することです。本業で事業化するまでには果てしないプロセスを要しますが、起業家クラブが実証実験の場を提供していきます。社員一人ひとりが旭化成という企業に所属しながら、自己を人生のオーナーとして歩んでいけるよう、サポートしていきます。

・コメンテーター質疑(一部抜粋)

【藤吉】投稿ツールの役割が大きいと思ったのですが、社員が投稿しやすい工夫はしているのでしょうか。モデレーター的な役割の人はいるのですか。

【唐津】特定の人が前に出すぎると投稿しづらい空気が生まれてしまうので、モデレーターは設けないようにしています。事務局の私たちとしては、誰が何をやっているのかを投稿ツールから把握した上で、裏からサポートする。そういったスタンスをとっています。


トヨタ自動車株式会社「A-1 TOYOTA」(土井雄介)

グループ規模36万人。売上30兆円、――改めて、トヨタグループという会社の大きさを実感します。一方で、志半ばで辞めていく同期がたくさんいました。この巨大企業をボトムから変えたい。私たち「A-1 TOYOTA」の5年間の歩みをお話しします。

A-1 TOYOTAではさまざまな有志活動を展開していますが、その中心に位置するのはトヨタグループ有志のビジネスモデルコンテスト「A-1コンテスト」です。5年前の2016年、私たちは手書きの企画メモ1枚を手に、社内を駆け回って協力をお願いしました。そして社内イントラネットに「トヨタを変えよう」という一言を投稿し、A-1コンテストは立ち上がりました。ちなみに、A-1コンテストの「A」はトヨタ自動車の創業者の豊田喜一郎の言葉「阿呆がいなければ新しいものを生み出せない」の「阿呆」に由来しています。

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A-1コンテストのテーマは自由。リーダーの他にフォロワー2人を見つけて活動を開始するのが特徴で、約半年間にわたってメンタリングを通して活動をブラッシュアップしていきます。A-1コンテストをきっかけに、PoC(実証実験)を12チームが実施したり、社外で起業するチームも3チーム生まれました。

A-1 TOYOTAの総参加者数は2,500名近くに上ります。実に500回以上、数え切れないほどの活動を実施してきました。その一例をONE JAPANの3つの軸「VALUE」「PEOPLE」「CULTURE」に分けてご紹介します。

・「VALUE」の軸…社内公募制度の立ち上げに寄与/自動運転や車用アクセサリーの企画コラボレーション
・「PEOPLE」の軸…トヨタ技術会と連携した企画/トヨタ卒業生のネットワークづくり「ALMUNAI」を開催
・「CULTURE」の軸…新人イベントを経年開催。仕組化してONE JAPAN加盟団体に展開/KIRINと新規事業企画制度を共同企画/組合と連携、労使協で1000名近くのアンケートを実施し経営層に共同提言

たった3人から始まったA-1 TOYOTAの活動が、ボトムから巨大企業を変えていく、そのイメージが少しでも皆さんに伝わったのではないでしょうか。
「産業報国」という言葉がトヨタにはあります。次の100年も大企業がもっと社会に価値提供できるよう、私たちはこれからも変わり続けていきます。このプレゼンを聴いている皆さん、一緒に挑戦の文化をつくって、世界をもっと面白くしていきましょう。

・コメンテーター質疑(一部抜粋)
【藤吉】私も創業者の豊田喜一郎さんの本をよく読みました。社内外であらゆる反対に遭いながらも「自動車を開発する」との志を曲げなかったことで、一つの巨大産業を築き上げた。ぜひ、その創業者の気持ちで頑張ってください。

【林】ある意味一国以上の組織でもあるトヨタの中で「変える」選択をしたことで、さまざまな苦労があったと思います。その土井さんの、次の目標を聞かせてください。

【土井】ここにたどり着くまで、いろんな先輩方に助けてもらったからこそ、私たちのような若手がチャレンジさせてもらうことができました。今度は、そのチャレンジで得た経験が、再現性をもって会社の中にインストールされていくような型・仕組みを作っていきたいです。


コメンテーターからの総評

【林】登壇した4社それぞれに、伝えたいメッセージがあって感動しました。それこそONE JAPANが掲げている「大企業こそが変わっていくべき」というビジョンを、まさに体現している4人だったと思います。

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【藤吉】先日、たまたま長崎の出島に行く機会がありました。出島というのは単なる人や物資の出入り口ではなく、異文化の交流によって最先端のカルチャーをつくり上げる「ネットワーク」の機能を果たしていたんです。ONEJAPANも大企業どうしが交流し、ネットワークを築いていく「出島」の機能を果たすことで、世の中が変わっていくのではないか。そう思わされました。

【林】「有志」というとどことなく「非公式」のニュアンスが強いのですが、今日のプレゼンを聴いて、もう有志活動が「有志」の時代は終わって、「公式」になっていくな、という考えを強くしました。こういう活動がむしろこれからの会社をつくっていくし、それをやらないと企業が存続していかないことに、経営層やマネジメント層も気づいている。

【藤吉】昔はよく会社の中で「地下組織」や「Bチーム」を作れ、などと言ったものですが、もはやサイドでなくメインストリームに来てしまったという気がしますね。

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【林】かつて高度経済成長の時代は、「企業」を軸に、企業としてやりたいことを実現する時代でした。ただ、これからは「個人」が軸になっていき、社内・社外を問わず、個人がやりたいことを実現する。そして、その個人の想いを受け止めるために企業が存在していく――そんな時代になるのではないでしょうか。

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・構成:堀尾 大悟
・編集:岩田 健太、福井 崇博
・デザイン: McCANN MILLENNIALS
・撮影:伊藤 淳 
・グラレコ:山内 健
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