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ONE JAPAN大企業若手中堅1600人が考えた 「新しい企業様式」【ONE JAPAN CONFERENCE 2020レポート:CULTURE①】

私たちはコロナと向き合う「新しい生活様式」の中で、どのように「新しい企業様式」を築いていけばいいのか。そのヒントを得るため、ONE JAPANは大企業54社の若手中堅社員1600人に働き方に関する意識調査を実施した。調査結果をもとに、サイボウズ社長の青野慶久さんとプロノバ社長の岡島悦子さんが解説する。

【登壇者】
■株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島悦子さん
■サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久さん

【意識調査 ONE JAPANメンバー】
●NHK2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部 副部長 / ONE JAPAN 副代表 / ジセダイ勉強会 神原一光
●株式会社電通 ビジネスデザインスクエア コンセプター / 電通若者研究部(電通ワカモン) 吉田将英
●日本テレビ放送網株式会社 アナウンサー 鈴江奈々(モデレーター)

調査概要:ONE JAPANが加盟企業54社1600人にアンケート調査を実施
期間:2020年8月17~30日
男女比:男性71%、女性29%
年齢:全体の75%が20~39歳以下
役職:非管理職86%、管理職14%

ONEJAPAN 第4回「働き方」意識調査「新しい企業様式」
https://drive.google.com/file/d/1RQu1acBgzYbzrJsOy-SWZy6hxnG_q_Cd/view

■コロナで顕在化した5つの大企業病

ONE JAPANの今回の調査では、「5つの大企業病」を調査項目に設けている。それは、①内向き・社内至上主義、②縦割り・セクショナリズム、③挑戦・仮説検証不足、④スピード欠如 ⑤同質化・新陳代謝不全である。調査に回答した7割の人が、自社にこれら大企業病のいずれかがあると回答した。

【岡島】おそらくコロナでこういうふうに変わったというわけではないと思います。みなさん自分の所属している会社は好きなんだけど、元々この5つの大企業病が気になっていた。それがコロナでリモート勤務になったことでより顕在化しているから、比率として高くなっているんだと思いました。

【青野】おっしゃるとおりだと思います。コロナで企業の俊敏性が求められた時に、ほとんどの社員がテレワークに切り替えてサクサク仕事をこなしている会社と仕事のやり方を変えられなくて全員出社しているような会社に別れた。中にはハンコを押すためだけに会社に行っているような人もいましたよね。企業によって大きく差が出ました。

5つの大企業病のうち、回答者が特に課題意識を持っていたのが「スピード欠如」だ。自分ごととして取り組めているという事例も5つの中では最も少なかった。若手中堅社員がこの課題を解決するのは難しいのだろうか。

【青野】スピードアップのためには社員に権限を渡さなければなりません。それは、経営者じゃないとできないかもしれませんね。

【岡島】例えばすべての社員を在宅勤務にすると決められるのは経営者です。ただし、それに対して声を上げられる企業文化であるかどうかが重要。「このくらいの会議ならZoomでやった方がいいですよ」と若手が気軽に提案できる風土がある会社は変われたのだと思います。

■縦の階層をどのように突破するか

ONE JAPANは意識調査のほか、大企業病を乗り越えるために若手メンバーが実施している技を共有してきた。その一部を紹介した。

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会社の中で自分のやりたいことを実現するためには、職域、職階、権限の違う人を巻き込んで意思決定しなければならない。この縦の階層をどのように突破するかが、スピード欠如を克服するポイントとなる。

■技①「トップダウン・実演販売」
ある若手社員はドローンにまつわる新規事業の会議で、社長に直接実機を見せつつ、このドローンでできることをプレゼンしたことで社長の応援を勝ち取った。これにより周りの社員に対して説明しやすくなり、プロジェクトの推進力が高まった。

■技②「おせっかいおばちゃん人脈活用」
ある若手社員は役員と同期のおばちゃん社員と仲良くなった。その方に協力してもらい、役員会に話を通してもらう、社長と内々に話す機会を得るなどしている。直属の上司に通らなかったからといってあきらめるのではなく、四方八方見渡して強力な人脈をもつ人を見つけ、味方にすることで意思決定をスピードアップしたという例。

【青野】大企業の場合、確かに意思決定権をもつ上の階層の人に話を通すことが難しく、それがスピード欠如の原因になっています。例えば現場の若手メンバーがトップに直談判に行ったら、自分とトップの間にいる直属の上司やそのまたの上にいる人たちが「なぜ俺たちを飛び越す」「俺を通せ」「俺は聞いてない」などと文句を言います。その人たちに目をつけられると会社にいづらくなるから、やりたくてもなかなかできないという現実がある。

その対策として当社で徹底しているのはオープンな場で議論するということ。「kintone(キントーン)」というツールを使って、どんな上司と話す場合もその内容はもちろん、行為自体が可視化されています。上司を飛び越したこと自体がすべてみんなに見える状態になっているので、「俺は聞いてないおじさん」が出てこないわけです。

ただし、重要なのは、フラットにも2つあり、意思決定の階層の話と情報の階層の話は分けた方がいいということ。これだけITが発達しているんだから情報はフラットにすればいい。でも意思決定の方は、ヒエラルキー自体は便利なので機能していれば残せばいいんです。

その好例を紹介しましょう。先日アルカイダと戦ったアメリカの将軍と対談したのですが、アルカイダに負け続けたアメリカの軍隊は、対策として毎日90分間、将軍から一兵卒まで7500人の軍人全員で電話会議をしたというのです。これをしない限り勝てないと悟ったから情報はフラットにした。かといって軍隊のヒエラルキー、指揮命令系統を崩したわけじゃない。つまり情報だけフラットにしてヒエラルキーは残したことでアルカイダに勝った。このあたりに大企業が変わるヒントがあるように思います。

【岡島】大企業で一番やってはいけないのが自分だけでトップに特攻して犬死にするというもの。そうならないためには、同じ志を抱く仲間を集めてチャレンジすることが大事。また、経営層に直談判する際、「私の上司にもうまいこと言っといてください」とお願いするといいでしょう。根回しより、トップダウンの方がうまくいくケースが多いので、それが企業文化として定着すればスピードも徐々にアップしていくのではないでしょうか。

■自分の希望、幸せを突き詰めて考える

意識調査の「所属する企業との関係で重視すること」という設問の回答では、1位は「やりがい・喜び」、2位は「給与・ボーナス」、3位は「ワークライフバランスの充実」、4位は「社会的意義のある仕事」、5位は「成長実感」だった。2位のお金以外は内面を重視するという傾向が見て取れた。マネジメント層は、若手中堅社員の思いを正しく把握しないとコミュニケーションにズレが起こるから注意が必要だ。

【青野】結果だけ見るとこうなるのは当然だと思いますが、本当は一人ひとり全く違うということを経営者側としては認識しなければならないと思います。「やりがい」といっても何によってやりがいを感じるのかは人それぞれだし、給料も多ければいいのかというとそうでもない。自分のライフプランとしてはこのくらいもらえればうれしいけれど、それ以上は求めていないなど、求める給料は人によって違います。

だからこれからのアフターコロナの時代に皆さんにしてほしいことは、自分が職場で働く上で本当にほしいものは何なのかということを自分に問いかけること。自分はどういう理由で何歳までにいくらほしいかと突き詰めて考えてほしい。自分が本当に欲しいものと理由がわかっていなければ、会社と交渉さえもできないので。

【岡島】私も同感です。年収300万円で幸せという人もいれば2000万もらっても幸せじゃないという人もいます。給料は「生きるためにこれだけ必要」というよりは、自分自身の成長と正当な評価が実感できるだけの額で十分という人が多いんじゃないでしょうか。

ですので、コロナをいい機会として、各自がどういう状況が幸せなのか、自分自身のウェルビーイングについて突き詰めて考えることをおすすめします。例えば、今回のコロナでの在宅勤務1つとっても、独身者と、小さい子どもが休校になってずっと家にいるという人とでは状況は全然違います。家族がいる人は家族と幸せのベクトルが合ってるのかということがすごく重要だし、せっかくの機会だからそれをすり合わせてみてはいかがでしょう。

OJC2020グラレコ-CULTURE1糸賀しえり

■「企業」なんて実在しない

【青野】僕はこの設問のタイトルがイマイチだと思っていて、「所属する企業との関係で重視すること」って書いてあるでしょう? でも企業は実在しないんです。誰も企業に触ったこともないし、直接話したこともない。そんな非実在のものとの関係を重視することは不可能なんですよ。「企業との関係」なんて言ってるうちは何も関係は改善されない。だから例えば、自分が働きたいと希望する部署に異動したいと思ったら、人を配属する権限をもっている人と関係をつくろうとしなきゃいけないわけです。そのやり方はいくらだってあるはずです。

【岡島】エンゲージメントという観点では、会社としては働きやすさじゃなくて働きがいということを意識していて、経営者は社員には適材適所で働いて付加価値を出してほしいと思っています。よって、衛生要因よりもどうしたらみなさんが一番パワーを発揮してくれるのかという動機づけ要因について、ものすごく心を砕いています。その中の1つの大きな要素が配置。どんな部署に配置されると一番自分が力を発揮できるのか、活躍できるのか、成長できるのか。みなさんとしては配属は会社が決めるものだ、あるいは出向したらおしまいだと受動的に感じていると思いますが、若手のうちは自ら会社に働きかけて自分が働く場所を取りに行った方がいいと思います。

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■やさしいようで厳しい世界になる

【青野】この日本の、ヒエラルキー大好きないわゆるアンバー(順応型)組織がどこでどう変わるのかをずっと観察してきたのですが、コロナは日本企業が変化するためのいい外圧になっていると感じています。働く人にとってはこんなに強い追い風が吹くチャンスはないので、自分は今後も在宅勤務するんだ、子どもが小さいから家事育児に自分も関わるのだと主張してほしいですね。

会社や経営者に不満をもつ若手はたくさんいるでしょうが、そのような組織を選んで入社しているのはその人自身なんですよね。一番簡単な方法は辞めることで、私は3年でパナソニック(当時・松下電工)を辞めましたよ。それもできず会社に残りたいのなら、会社か自分を変える覚悟を決めて行動しなければ。ただ愚痴を言ってるだけでは残念ながら何も変わりませんよと伝えたいですね。

【岡島】今後人生100年時代になると労働寿命が60年くらいになるので、同じ会社にいる間に三毛作くらいにビジネスモデルが変わるでしょう。そういう変化が当たり前という状況になると、社員は会社に雇ってもらっているんじゃなくて、会社を選び、対等な関係を結んでいるという関係性が健全です。会社としてもあなたに最も成長できる機会を与えられるからわが社で働いてくださいというのが健全な関係性です。

これからAIの進化等で、どんどん仕事が機械に取られていくので、各個人にしかできない仕事を確保しなければなりません。その時、企業様式という意味では、自分はその会社で何を付加価値として出せるのかを明確にしなければいけません。

自由と自己責任がセットという状況がどんどん進めば、個人はもっと活躍できると思う会社に移るし、会社もわが社には合わないと判断したら解雇するなど、やさしいようで厳しい世界観になっていくんじゃないかと思います

構成:山下 猛久
デザイン:McCANN MILLENNIALS
グラレコ:糸賀しえり

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