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ボトムアップの有志活動から始まる変革の一歩【ONE JAPAN CONFERENCE 2020 PEOPLE②】

ONE JAPANの根幹にあるのは、それぞれの企業で展開される社内の有志活動だ。何をきっかけに有志活動を立ち上げたのか、活動を広げるまでにどのような壁や苦労があり、その先にどのような楽しさや喜びがあるのか。ONE JAPANのメンバーたちが、ボトムアップから始まる“有志活動のリアル”を語り合った。

【登壇者】
東洋製罐グループ ワンパク 共同発起人 加藤優香理さん
NTT東日本 O-Den 共同発起人・代表 一杉泰仁さん
AGC AGseed代表 北野悠基さん

【モデレーター】
リクルートワークス研究所 研究員 古屋星斗さん

OJC2020グラレコ-PEOPLE2-石川

■育休明け、誰もやっていないことをやろう

【古屋】有志活動を始めるには、最初の一歩をどう踏み出すかが最大のカギになります。まずは、みなさんが今の有志活動を始めたきっかけから伺えますか。

【加藤】私は2013年に第一子を出産し、2015年に仕事に復帰したのですが、育休明けは暇だったんです。復帰後にルーティンのない部署に異動したのですが、会社の中で誰もやっていないことをやってみたいなと

当時の私には、「社内のつながりが希薄になっているのではないか」という課題感がありました。若手社員や中途入社した社員が急に辞めてしまったり、体調を崩して会社に来られなくなったりする人もいて。私が入社した頃は先輩や同僚がよく相談にのってくれたり、気にかけてくれていたりしたので、そうしたつながりが薄れているような気がすると感じていました。それで社内の人たちがつながるための活動をしたいと思い、2016年に東洋ガラス社内で有志活動「ホットワークス」を始めました。2018年からは東洋製罐グループ全体を横断するコミュニティ「ワンパク」を立ち上げて、トークセッションやワークショップなどを行なっています。


■NTTが変われば、世界が変わる

【一杉】私は「NTTを変えたい」という青臭い思いをこの10年間ずっと言い続けてきました。世間ではNTTを「親方日の丸」とか「ぬるま湯に浸かっている」と散々言われますし、当時は私自身もそう思っていました。でも一方で裏を返せば、もしNTTがイケてる会社に変わることができたら、他の会社も「あのNTTが変われたのだから、うちの会社も変わらなければまずい」と思ってくれるのではないか。つまりNTTが変われば、他の会社が変わり、社会が変わって、ゆくゆくは世界が変わる。カッコつけているのではなく、本気でそう信じて取り組んでいます。

ただ会社の中を見渡すと、ワクワク働いている人が少ない。まずはそこから変えたいと思い、5年前にNTTグループ横断の有志団体「O-Den」を立ち上げました。最初は数名でスタートし、ゼロイチのフェーズ、1から10のフェーズと徐々に取り組みを拡大して、今は10から100を目指すフェーズに入っています。とにかくひたすら地道に続けることで、ここまで活動を広げることができました。

【北野】私の場合は有志団体の設立メンバーではなく、立ち上げたのは前任者です。その当時私は3年目だったのですが、実は有志活動を冷めた目で見ていました。「こんなキラキラした人たちがいるんだな」と。私は開発職としてACGに入社し、製造現場に入って三交代で日夜働くという泥臭い仕事をする毎日でしたから、有志活動なんて自分には縁遠い話だと思っていたんです。

ところがある時、仕事のストレスが溜まり過ぎ寮でドンチャン騒ぎをしてしまい、ボーナスをカットされまして(笑)。一生懸命会社に尽くしていたつもりなのですが、その時初めて、「自分は何のために働いているんだろう?」と思ったんです。会社を辞めることも考え、実際に転職活動もしました。しかしその過程でACGという会社を改めて外から見てみると、「とてもいい会社だ」と思えた。。一方で、当時の私を含め目の前の仕事に追われている人たちは、その良さを感じられずにいるのだということにも気づきました。

AGCの良さを知ってもらい、ハートに火がついた若手が増えて欲しい。そう思い社内公募制度に応募して、2017年に会社の良さを社内外に伝えるため広報・IR部に異動しました。それと同時に、有志団体の活動にも本格的に参入したというのが経緯です。


■変わるために自分は何かやったのか?

【古屋】今は有志団体の代表を務める北野さんが、最初は冷めた目で活動を見ていたというのが興味深いですね。みなさんも本業とは別の活動をすることに対して、社内からやっかまれたり、それこそ冷めた目で見られたりして、モヤモヤした経験があるのではないでしょうか。

【北野】私は今、若手が元気に働けるようにしたいと思い、各拠点をオンラインでつなぎ社長との対話の機会を設けているのですが、そこで聞くのは「ここは工場だから新しいことはできない」「上司の理解が得られない」といった言葉が多くて、そこはモヤモヤしますね。自分たちが変われないことを、「会社が悪い」「中間管理職が悪い」と組織のせいにするのは簡単です。でも、「じゃあ、変わるために自分は何かやったの?」と問いたくなる。

ただ、私もかつては同じ立場だったので、「変われるはずがない」と思ってしまう若手の気持ちもよくわかる。だからこそ、有志活動を通じて変わるきっかけを与えることが重要だと感じています。


■「意識高すぎる系」になれば仲間が増える

【加藤】私が有志活動を始めた頃、ONE JAPAN発足時に参加団体として東洋製罐グループの名前を出し、メディアでも参加企業一覧として露出したことがありました。それで社内がざわついて。周囲から、「うちは目立たない会社だし、古い体質だから、ほかの参加企業よりも変えるのは難しいんじゃないかな」と言われたりもしました。始めた当初は一人でモヤモヤすることはたくさんあったし、今も色々考えることはありますが、今では対話して一緒に活動する社内の仲間が増えていっています。有志活動の基本は“自分起点”であり、始めた人が自分の思いを伝えていくことで拓けていくのだと思っています。

【一杉】有志活動をしていると、「意識高い系」って言われるんですよね。私は100万回くらい言われてます(笑)。ただわかったことがあって、さらに突き抜けて「意識高すぎる系」になれば、何も言われなくなる。このようなビジョンというレベルで昇華していくと、むしろ「手を貸そうか」「一緒にやろうか」と声をかけてくれる仲間が増えてきます。

【加藤】私の場合もONE JAPAN参加団体としてメディアに出たことで、有志活動を知った当時の社長が「応援するよ」と言ってくださって。グループの経営会議でONE JAPANや有志活動について共有する機会を頂いて、それをきっかけに「ワンパク」の共同発起人になる人ともつながりができました。だからやはり声を上げたり、行動することが大事。社内に数%は何かやりたいと思っている人が絶対にいるので、その声や行動が届けば、仲間は集まってきます。


■有志活動は本業につながる役得も多い

【古屋】モヤモヤすることばかりではなく、有志活動をやっているからこそ得られるものもあるはずです。みなさんは「これは役得だな」と感じることはありますか。

【北野】そもそも有志活動は、現場の我々にしかできない。社長はできないし、経営層にもできませんよね。組織風土を変えたり、若手同士のネットワークを作ったりと経営層が手の届かない部分を担っているという手応えを感じられるのは、役得ですね。さらに各種メディアを通じてその活動を発信することで、本業のアウトプットにもつなげています。

【一杉】本業につながる役得も多いですよ。私は経営企画部で新規事業創出を手がけていますが、大企業では様々な立場の人たちと関わっていかなければ新しいビジネスは立ち上げられません。その点、私たち有志団体の活動はグループ横断で展開しているので、私が所属するNTT東日本以外の人たちともつながりやすい。例えば有志団体でイベントをやるときに、グループ会社の役員の方々にも社員への声かけをお願いさせていただくこともあります。、こうしてできたゆるいつながりから新規事業に発展することもあるので、非常に大きなメリットです。


■上の人間を巻き込むには“外圧”を使う

【加藤】私も有志活動や社外の活動で生まれたつながりから、仕事やプロジェクトがいくつも生まれました。それを知った当時の社長が、新しいビジネスや事業につながる可能性があるなら、社外とつながる活動をもっと活性化させるべきだとおっしゃって、2年前に新市場創造グループという新しい部署を立ち上げました。これは役得といえるかもしれませんね。新部署を立ち上げる経験ができたことで、社内的にも社外的にも自分のポジションを確立できたと感じていますし、何か新しいことをやりたい人がいたら声をかけてくれるようになりました。

私だけではなく、有志活動に関わった人たちは、それぞれに自分の役割やミッションを見つけています。例えば「ホットワークス」を私と一緒に始めた方も、有志活動や新市場創造グループの取り組みを通じてやりたいことが見えてきたのか、現在はシンガポールでオープンイノベーションを手掛ける部署でイキイキと働いています。みなさんが羽ばたいていく姿を見ると、有志活動を始めて本当によかったと実感します。

【古屋】参加者からは「有志活動を始めたものの失敗した」「上の人は有志活動を応援するとは言ってくれるが、協力を求めると動いてくれない」といった悩みが寄せられています。こうした問題をどのようにブレイクスルーすればいいですか。

【一杉】私の場合、ゼロイチのフェーズでは、偉い人やミドルに何かお願いはしなかったですね。だから“有志活動”なわけであって、別に上の人の許可や協力がないと始められないわけじゃない。最初からそれを求めてしまうと、結局は自分でできない言い訳をして他責にして終わってしまう事が多いので、そこは注意したほうがいいと思います。

ただ1から10のフェーズになると、上の人間を巻き込むことが必要です。その時は、“外圧”を利用すると良いと思います。すでに活動実績があり、メディアに取り上げられたこともあったので、「外ではこんなに認められています」と示せば、ミドルの反応も変わります。


■思いが生まれた原体験を語れ

【古屋】「仲間を作るコツをアドバイスしてほしい」との質問も多く寄せられています。

【加藤】最初は一人一人、口説きに行きました。先ほども話しましたが、自分起点の思いを伝えていくしかない。私の場合は、「辞めていく若手や体調を崩してしまう人たちに、何もしてあげられないのがもどかしい」という思いを伝えました。自分が課題に思っていることや、それを課題だと感じるようになった原体験を自分の言葉で話すことが大事じゃないでしょうか。

思いを伝えて、もし相手が反応を示してくれたら、次は一緒に企画する。「じゃあ、これをやって」ではなく、企てるところから一緒にやって、巻き込んでいく。私はそうやって仲間を作っていきました。

【北野】会って話した時に、「こいつ面白いな」と感じる人っていますよね。この直感がとても大事で、そういう相手は有志活動に集まってくれることが多い。あとは、こちらが自分の本心を率直にさらけ出せるかどうか。加藤さんがおっしゃったように、自分の思いを本音で伝えることが、仲間作りのカギだと思います。


■「有志活動・本業・家庭」の3つのサイクルを描く

【古屋】私は「自分が今できる一番小さな行動」がキャリアを変えると考えているのですが、最後にみなさんの「明日・来月からやれる」目標を聞きたいです。

【一杉】最初に話したように、私は、日々、世界を変えることを目標にしています。というと、どエライことを言っているように聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはないです。何よりもまず変えなくてはいけないのは、社会でも会社でもなく、「自分の世界」です。今日から明日のレベルで、自分の目の前に見える世界を少しでも変えられるようなアクションができたらいいと思っています。だから必ずしも難しいことをやらなければいけないわけではなくて、「誰でもできること」を愚直にやり続けることが第一歩です。その中で「誰でもできるのに、誰もやらないことが必ずあるので、それを誰も真似できないレベルでやりきること」を大事にしています。こうした小さな一歩を日々心がけて歩み続けていきたいです。

【北野】私は、明日から妻を下の名前で呼ぶことにします。何を言っているの?と思うでしょうが(笑)、もちろん理由がちゃんとあります。、家庭を平和にすることは、実は本業や有志活動にもつながると考えているからです。先ほども申し上げたように、有志活動によって本業が活性化するという良いスパイラルが回っていますが、ここに家庭というスパイラルを加えることで、この3つがさらに良いサイクルを描いていく。そんな未来を実現したいですね。

【加藤】私は有志活動とは別に、イノベーターが集う「スナックゆかり」を主宰しているので、「ゆかりんと行くベロベロツアー」をやりたい(笑)。お酒を飲めば、みなさん気持ちがほぐれて自由に思いを語れるじゃないですか。有志活動の原点は、「自分は何がしたいのか」を呼び起こすことだと思うので、これからもそんな場やきっかけを作っていきたいし、みなさんもぜひ自分が本当にやりたいことを思い出して欲しい。そう願っています。

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構成=塚田有香
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:石川 愛

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