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組織文化とは何か?―「うちの会社はなかなか変わらない」を変える! 【ONE JAPAN CONFERENCE 2021公式レポート:CULTURE①】

「組織文化は本当に変わるのか?」
「心理的安全性の高いチームづくりとは?」
心理的安全性な組織構築に取り組む石井遼介氏、デジタル庁で
人事、組織開発を進める唐澤俊輔氏、飲食店を経営し「売り上げを、減らそう」の著書がある中村朱美氏が組織づくりについて語る。

【登壇者】(敬称略)
・石井遼介 / 株式会社ZENTech 取締役
・ 唐澤俊輔 / Almoha LLC 共同創業者 兼 COO
      デジタル庁 人事・組織開発
・ 中村朱美 / 株式会社minitts代表取締役(佰食屋創業者)   
・ 塩瀬隆之(モデレーター) / 京都大学 総合博物館 准教授

CULTURE1_グラレコ_中野

組織文化と心理的安全性とは

【塩瀬】みなさんは組織づくりのプロですが、組織文化はつくれるのでしょうか。また、心理的安全性の高いチームづくりについてどう考えますか。
※心理的安全性…組織の中で、立場や経験に関わらず率直に意見を述べられる状態のこと。他人からの評価や批判を恐れる必要がない状態。

【唐澤】組織文化って目に見えないし、結果としてできたものですよね。だからミッション、ビジョン、バリューというような目標を言葉として明確にする。つまり、言語化して、可視化することが大事です。

【中村】上司が変わらないと組織は変わりません。例えば私個人の感情や個人的な数値目標は置いておき、部下が相談しやすい環境をつくる。従業員から相談があったらすぐに返信するようにしています。そうすると組織全体が変わっていきます。「いつだってスタートは上司から」ということを伝えたいですね。

【石井】経営陣は「心理的安全性は不要」と思っている中でも、やれることがあります。例えば、ある部長が、全社に心理的安全性を広めたいという野望を持ちつつも、まずは自部門から心理的安全性を育もうと取り組まれました。部長さん自身のマネジメントを変え、メンバーから意見が出るようになり、結果としてチームがいい仕事をして全社表彰を受けた。つまり、心理的安全性が高いチームをつくると、いい組織になるということを実例で見せてあげると、上層部も関心を持ちやすいです。まずは部門やチームなど少人数から取り入れると広がりやすいでしょう。

【塩瀬】参加者からは「上司も孤独では。心理的安全性が保たれない上司もいる」とのメッセージがきています。

【石井】成果を出すために上司も悩んでいますよね。僕は上司がいい仕事の振り方をしてくれた時にお礼を言いに行くといいと思っています。そうすると上司も「このマネジメントって部下からお礼を言われるぐらいのことなんだ」と感じ、上司の行動も変わるからです。いいマネジメントは直接上司に伝えることがポイントです。

売り上げの“点”を決めて従業員の働き方が変わった

【塩瀬】ありがとうございます。次はパネリスト同士で気になることを質問し合いましょう。

【石井】中村さんの著書『売上を、減らそう。』は、とてもいいコンセプトだと思いました。売り上げを最大化しようとすると皆疲弊していきますよね。一方、経営者として売上減の不安はありませんか。

【中村】タイトルだけ見ると、売り上げや利益を増やすことはあきらめ、働き方の改善だけに注力しているととられがちなのですが、実際は違います。

売り上げの上限という“点”を決めて、コストを削減し利益を最大化することを目指しています。

ただ、この売り上げの“点”を決めることが難しい。私たちは絶対クリアできる上限を設定しています。従業員は必死に頑張らなくても集客できる、毎日完売できるという安心感を得て働ける。会社としても売り上げが減らないという安心を得ることができます。

1つ例を挙げたいのですが、閉店時間ギリギリに入って、従業員から嫌な対応をされた経験はないでしょうか。当社ではある仕組みで解決しています。

一日100食限定で販売すると、残り5食ぐらいになった時に従業員のテンションが上がるんです。最後のお客様は最後の100食目。従業員にとっても嬉しいので、自然と気持ちの良い接客をしてくれます。経営者である私も最後の1人まできちんと接客するよう伝えなくてもいいんです。仕組みで解決できます。


【塩瀬】中村さんが経営する佰食屋は、従業員は好きなタイミングで休暇をとることができます。チャットからの質問で「誰でもいつでも休めると、全員休んだ場合はどうなるのでしょう」と入っていますが、そのマネジメントはどうしていますか。

【中村】皆が同じ日に休み希望を出すと、一番困るのは現場の従業員、つまり自分たちです。そのため、従業員同士がコミュニケーションをとりながら調整しています。経営者と従業員どちらも心理的安全性が担保されます。

デジタル庁の組織文化とMVVの作り方

【塩瀬】では次は中村さんから唐澤さんに質問をお願いします。

【中村】例えば起業してすぐの組織のカルチャーは作りやすいと思うのですが、デジタル庁のような既にある組織はどのように組織文化をつくるのでしょうか。

【唐澤】難しいんですよね。デジタル庁は官僚が約400人、民間企業出身者が約200人の組織でそれぞれの背景が異なります。

そこで部署や役職関係なくオープンに対話できる場をつくりました。まずは対話を重ね、お互いに理想の状態を描きながら歩み寄ります。

デジタル庁では全員で議論してミッション、ビジョン、バリュー(MVV)をつくりました。
デジタル庁のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)

また全庁を横断して、MVVを浸透させるプロジェクトを立ち上げました。有志30人でスタートし、まだこれからですが、一歩ずつ変化を起こしていきたいと思います。

【塩瀬】参加者からは「グローバルで共感できるようなMVVのつくりかたを教えてほしい」という質問が寄せられています。

【唐澤】グローバルの軸で言えば、多様なメンバーで議論を重ねていくことが大切です。

デジタル庁では「官民」と言うと対立が可視化されているようでやめたほうがいいよねとなりました。実際、「官」と言っても出身省庁はそれぞれ違うし、民間企業も大企業からベンチャーまで違うじゃないですか。官も民もそれぞれひとくくりにできない多様性があるメンバーが集まっています。

グローバルなら各国の人が、話し合いのプロセスから入る。各国に持ち帰った時にどういうプロセスでこうなったかということを説明できることが大事です。

結果だけしか見れないと、MVVがどんなに完成されたものでも腹落ちできない。プロセスから参加することが重要です。

心理的安全性、まずはスモールスタートで

【唐澤】私から石井さんに質問です。心理的安全性というと、社員に優しい職場というイメージです。社員やメンバーに自社に対してどう感じているかを問う「組織サーベイ」の時に、心理的安全性を担保するために匿名にしたという話を聞きます。

ですが、本当に心理的安全性が高ければ記名で発言できる。記名だから責任を持つ発言ができると思います。このような“厳しさ”とセットで組織に導入するのが心理的安全性ではないでしょうか。

【石井】唐澤さんご指摘の通り、記名で意見が言えるのが理想です。とはいえ、突然「記名で」と言っても意見は出にくい。まずは匿名からスタートするのもいいと思います。

【唐澤】フェーズがあるということですね。デジタル庁でも組織サーベイを取りたいと思っていますが、記名か匿名かで迷っています。

【石井】僕なら「最終的には記名で言えるようにしたい。だけど、今は匿名にします」というような注意書きをつけるかもしれないです。

【中村】「組織がなかなか変わらない」というコメントもありますが、一番即効性があるのは誰か1人が上司にはっきり思ったことを言うことだと思います。

私が会社員だった時に、直接上司に変えてほしいと思ったポイントを伝えたことがあります。上司自身も意識していなかったことで、その後チームが変わりました。査定への不安などはあると思いますが、有効な手段です。もちろん他の上司に安全性を担保してもらうなどの配慮は必要ですが。

【唐澤】中村さんのキャラクターだからできたということはあると思います(笑)。他の上司の理解も得てからとのことだったので、皆さん急に突撃して驚かれないようにしてくださいね。

【中村】上司と部下、双方で議論できるといいですよね。孤独な上司はチームに弱みを見せられないケースがあるので、弱みを出したり、相談できたりするといいと思います。


【塩瀬】最後に皆さんから参加者の方へメッセージをお願いします。

【石井】組織文化は組織の歴史でもあるので全体を変えることは難しい面もあります。だから、「この1時間のミーティングを変えてみよう」など身近なところで始めるのがお勧めです。会社や上司のせいにするのではなく、「あなたから」リーダーシップを発揮して、小さくてもいいのでワンアクションを起こしてみてください。

【中村】これから忘年会がある会社もあると思います。上司にはビール瓶を持ってお酌するのはやめて、温かいおしぼりとお茶を会場のスタッフにお願いして渡してもらうのはどうでしょう。もちろんスタッフにお礼を伝えることも忘れずに。人と違う行動を起こすことによって人との距離も変わります。

【唐澤】組織文化や心理的安全性に取り組むチームが楽しくやることが一番だと思っています。そうすることで一緒に進める仲間も増えていく。仲間が増えれば組織づくりは加速度的に進んでいくと思います。

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構成:国分 瑠衣子
編集:高柳 秀平 、岩田 健太
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:中野 友香(モカ)

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