見出し画像

有志活動の実践論【ONE JAPAN CONFERENCE 2020レポート:PEOPLE③】

ONE JAPANの根幹でもある社内の有志活動。運営には様々な悩みや課題が生じるが、どうすればいいか。大企業で有志団体を設立し、成果を挙げている実践者たちがTipsやノウハウを紹介する。

【登壇者】
■東京海上ホールディングス Tib 発起人 寺﨑夕夏
■旭化成エレクトロニクス 旭化成起業家倶楽部 発起人 中村磨樹央
■アステラス製薬 A2代表/ONE JAPAN有志団体活性化担当 西浜秀美
【モデレーター】
NHK 報道記者・キャスター 有馬嘉男さん

OJC2020グラレコ-PEOPLE3杉浦しおり


■東京海上「練られた戦術と志願兵」

社内でやりたいことを実現するために、有志団体を立ち上げて運営しているONE JAPANのメンバーはどのようなことを実践しているのか。まずは東京海上ホールディングス株式会社の「Tib(ティブ)」発起人の寺﨑夕夏がそのTipsやノウハウを発表した。

【Tibとは】
・東京海上グループの若手有志団体
・発足:2018年11月
・発起人:4年目の若手2名
・メンバー:グループの若手社員約30名
・特徴:社会にコンテンツサービスを生み出すことに注力
・モットー:テーマは自由に、でもガチで!

【寺﨑】Tibの目的は、大きな変化を迎えている保険業界戦国時代の中でも、東京海上であれば社会にイノベーションを起こせるというわくわく感を持てるという状態にするため、若手が経営を動かすということです。
そのために私たちが大事にしているのは2つあります。1つは「大義・夢を持ち続ける」こと。有志団体の活動は本業にプラスして行うので、「ただでさえ忙しいのになぜ自分はこんな大変な思いをしてまでこの活動に取り組んでいるのだろうか」と疑問に思うこともよくあります。
そんな時はメンバーみんなで合宿をしてミッション・ビジョン・バリューを中心に論議をし、個人がやりたいことを言語化した上で、組織の目標へと昇華させました。
さらに、メンバーが有志活動で何を得るか?が明確でないと動き続けることは難しいので、発起人を中心に経営に近い情報を取ってくるなど、普段、所属している部署ではなかなかできないプロジェクトに参加する機会を提供しました。この2つを実践することによって、多忙で辛い時でも活動のモチベーションを高め、ブレずに突き進むことができています。

大事にしていることの2つ目は、練られた戦術と志願兵をもつこと。保険戦国時代を生き抜くためには、素早い意思決定と、迅速に動ける組織基盤を保つことが必要不可欠です。そのために、メンバーは全員個別勧誘して、ハードルを下げずに誘い続けました。
また、部費を徴収することで、メンバーの所属意識を高めると同時に、自由に戦術を展開するファンドを持つことができました。そして事務局を設置することで、社内の経営層・重要部署、社外とつながり、大きな潮流の中で我々はどういう立ち位置で戦っていくべきかを迅速に意思決定しています。


■社内を巻き込むための3つのTips

【寺﨑】社内を巻き込むためには、主に3つのことを実践してきました。1つ目は社内を巻き込みたいという理由や思いを明確にして周囲に語り続けること。それによって自分たちの拠って立つ場所も明確になりますし、共感した思いの強い仲間もついてきます。
2つ目は、私たちの思いに共感してくれた人を大切にし、彼らとの信頼関係づくりにフォーカスすること。支えてくれる仲間との信頼関係がしっかり築けていればどんな局面でも乗り越えられますし、得に正解のない、変化の多い有志活動ではそれが一番の基盤になると思います。
3つ目は私たちと同じ思いをもつ、実戦を経験した実権者を巻き込んで本気の実戦を積むこと。現在、当社のチーフデジタルオフィサーを中心とした関係部署を巻き込んで、実践の場を用意してもらい、まさに戦っている最中です。

巻き込みTipsとして強調したいのが、「思いは下げず、アウトプットのハードルは下げる」ということ。思いがないと途中で心が折れるので、絶対に下げず、やりたいと思うことを猪突猛進でやるべき。そのアウトプットの出し方は、素晴らしい成果を目指すというよりは、それぞれの団体に合ったものを探していくことがすべてだと思います。アウトプットの質や種類だけに目を向けず、何故私たちは有志活動をするのか?どんな思いを達成したいのか?をぶらさないことが、組織としての突破力、力を発揮する上で効いてきます。
今は乱世で変化も多いですが、それを楽しもうという気持ちで様々な活動に取り組んでいます。少しでも他の有志団体や皆さんと乱世の時代を乗り越えたいと思っています。


■旭化成「有志活動はスタートアップと同じ。PMFしなければ続かない」


次に旭化成エレクトロニクスで「旭化成起業家倶楽部」発起人の中村磨樹央が発表した。

【旭化成起業家倶楽部とは】
・旭化成グループ社員なら誰でも入れる有志団体
・発足:2019年3月
・発起人:15年目の中堅社員
・メンバー:グループの様々な社員約230名(22歳〜65歳まで)
・目的:①留学で学んだことを活かしたい 
    ②やる気のある有志で学び合いたい 
    ③ボトムから会社を変えたい
・特徴:世界中にメンバーがいて、事業領域・地域の枠組みを超えて活動している。Microsoft Teamsを使い、日々オンラインコミュニケーションで繋がっている 


【中村】ビジネスを成功させるために重要なのはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)、つまり自社のプロダクトやサービスがマーケットに適合している状態だと考えます。有志団体としても同じで、有志団体というプロダクトがターゲットである社員に価値を提供しているかどうかを考えることが重要です。そこで、現在の旭化成起業家クラブのリーンキャンバスを作ってみました。
我々にとってセンターピンとなる顧客は、地方・キャリア社員です。それがわかったきっかけは世界中の社員が閲覧できる当社の掲示板に我々の倶楽部の存在を書き込んだこと。すると地方やキャリアの社員がたくさん参加してくれました。彼らは、他職場とのつながりがないとか情報が入ってこないという課題感を持っていました。その解決のためにMicrosoftのTeamsを使って、価値として、知りたいことをすぐ聞けたりおもしろいネタが流れてきたりするようなプラットフォームを提供しました。
Teamsは会社支給のパソコンにインストールされているので、無料で隙間時間に気軽にアクセスできます。だから自身がそれに投下するコストと、利用するためのハードルがものすごく低い。にも関わらず、仲間やネタ、情報を獲得できたり、人材ネットワークが構築できたりします。つまり、得られるプロフィットがコストよりも大きくなるため、エコシステムとして成立し、利用者のコミットが継続すること(価値を感じて使い続けること)になります。

例えば、社員はそれぞれ働く場所も扱っている商品も業務内容もバラバラですが、会社全体の方針であるDX(デジタル・トランスフォーメーション)には、それぞれの部署が取り組んでいます。
しかし、普通に働いている限りでは、サランラップを売っている人とヘーベルハウスを売っている人が、お互いどのようなDXの取り組みをしているか知ることができません。それが、起業家倶楽部のプラットフォームを使えば気軽に質問でき、情報を共有することができます。こういったやりとりが様々な場面で起きることで、プラットフォームを媒体とした集合知が得られます。
さらに、メンバーが増えて規模が大きくなるにつれて上層部への制度改革や事業創造などの発言権も強くなりました。その結果、ネットワーク効果や外部性により、ますますコストより収益が大きくなってくわけです。


■笑顔でとち狂え!

【中村】成功するためには背景が非常に重要です。その大きな要素としてはテクノロジーと文化・価値観の2つが挙げられます。起業家倶楽部の場合、前者は先ほど説明した会社PCへのTeamsの実装です。これで簡単に全世界の社員がつながり、普段言いたくても言えない日常の些細な不満や不安、アイデアなどを気軽に言えるようになりました。それをきっかけに盛り上がり、分科会のようなものまでたくさん生まれています。
後者は、当社はコングロマリット企業であるという点です。そのおかげで多種多様な仕事をし、いろいろな価値観をもっている人たちがいるという企業文化があります。また、グループの社長がコネクトを推進していることや、会社のツールで社員同士がつながっても大丈夫というゆるい社風があることも特徴の1つです。
これらの2つの背景によって、起業家倶楽部は勉強会を中心とした有志の集いからスタートしましたが、現在は全世界に散らばる旭化成グループの社員の情報提供のプラットフォームにまで成長したのです。

巻き込みTipsとして全体を通して一貫して言えるのが、笑顔でとち狂うこと。やはりいつも笑顔で情熱的な人には絶対人はついてくるし、上の人も頼みごとを聞き入れてくれます。事実、僕が尊敬する有志の人たちは常にいい笑顔をしています。
また、先輩や上司にとにかく笑顔で「お願いします!」と頭を下げれば、大した内容ではなくても5回くらいはしょうがないなと了承してくれます。その5回以内に、PMFすること。ターゲットを決め、価値を見出し、彼らに価値を提供する。それができれば、有志活動としてのエコシステムができます。その先に、会社や社会の変革があると信じています。


■ONE JAPAN「有志団体のTipsをnoteで発信」 


最後に、ONE JAPAN有志団体活性化担当「ACTI(アクティ)」を代表して、西浜秀美がその活動と巻き込みTipsを発表した。

【西浜】ACTIはまさに今回のセッション「有志活動の実践論」のテーマと深く関係していて、ONE JAPANに加盟するそれぞれの有志団体をもっと盛り上げたいという思いで活動している事務局です。今日の企画もACTIで考えました。
具体的な活動は3つあります。1つは「代表者との座談会」。有志団体の悩みを話して、意見やアドバイスをもらえます。2つ目は「アクティビング」。有志活動のビジョンの整理や、活動推進の壁打ち役となることで、立ち上げ期や倦怠期の活動を加速化します。3つ目が「Tips投稿@note」。幅広い人に有志団体の活性化に役立つノウハウを伝えるために、今後、noteで共有していく予定です。ONE JAPANのメンバーはもちろん、非メンバーでも閲覧できるようにします。


■「経営層に直メール」をリアルタイムでサポート

【西浜】今日私からは、ACTIへの相談も多い、経営層の巻き込み方に関するTipsを紹介します。
ある団体では、最初のイベントから社長を呼んで賛同を得ることによって、みんなが参加しやすい空気を作っています。社長に勇気を出して直接メールを送るというTipsもあります。経営層も社内の有志団体の活動をポジティブにとらえている人も多いので、このやり方で巻き込みに成功しているという声もたくさん寄せられています。
この時、1人で社長にメールを送ろうとしてもなかなか送れないので、ACTIのメンバーみんなで「今から送ろう、メーラーを起動して、書いて、送って!」とリアルタイムで応援することで勢いづいて送れたというケースもあります。
もちろん、会社の文化や風土によってなかなかうまくいかないことがあります。特に歴史の長い、社員が数万人規模の大企業では若手とトップの距離がものすごくあるので、苦戦することが多いようです。
でも、そのような会社でもまずは共感してくれそうな役員や秘書から巻き込むなど、ステップを踏んで外堀から埋めていく方法で挑戦しています。実際に今回のONE JAPANカンファレンスに会社のキーマンである役員を呼んでいる人もいます。
会社を良くしたいという思いは話せばわかってもらえるケースが多いので、うまくキーマンをつかまえて我々の思いを1対1で伝えながら継続することを大事にしています。


■総務や人事の課題を解決

【西浜】また、経営層やミドル層などに有志団体のメリットを感じてもらうために、総務や人事の企画に協力することもあります。今年でいえば新型コロナの影響で入社式もその後の研修もリモートになり、新入社員が先輩や上司、同期と対面で密なコミュニケーションを取れないという声が、ONE JAPANのいろんな有志団体から挙がりました。
そこで、ONE JAPANに加盟する各団体で新人と先輩が話せる場を作りました。これが大成功で、新人からは「先輩とコミュニケーションが取れてとても安心感が持つことができた」という声や、会社側からも「不安で困っていたところを有志団体に助けてもらい非常にありがたかった」という声をいただけました。同時に新入社員の巻き込みにも成功しました。
いろんな会社、部署、年代の有志同士がつながっているという我々の強みが生きた事例で、これからもこういう状況は続くと思うので、Tipsとして共有したいです。

画像2


■思いを共有するほどに、有志団体は続いていく

【西浜】ONE JAPANに加盟している有志団体は、設立当初の20から現在は50以上に増えていますが、その間に消滅した団体はほとんどありません。それは代表者と同じ思いをもったメンバーが団体内にある一定数いて、代表者と同じレベルの熱量で組織を動かせるように努力しているからです。そのために、代表者はメンバーとの1on1での対話を重ねて熱量を上げ、絆を深めています。
このようなTipsをONE JAPAN内で共有することによって、1人では心が折れそうな時も、周りのメンバーに助けられながら、みんなで前に進み続けることができるのです。


構成:山下猛久 
デザイン: McCANN MILLENNIALS
グラレコ:杉浦しおり

【ONE JAPAN公式Facebookページ】
ぜひ「いいね!」をお願いします!
https://www.facebook.com/one.japan.org/

【ONE JAPAN 公式HP】
公式HPを刷新しました!
https://onejapan.jp/

【ONE JAPAN公式note】
ONE JAPAN事務局インタビューやカンファレンス記事などを随時掲載しています。
ぜひアカウントのフォローをお願いします!
https://note.com/onejapan

【ONE JAPAN公式Youtube】
ぜひチャンネル登録をお願いします!
https://www.youtube.com/channel/UChU_Ara1_5TadYDPkYIgRXA


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?