見出し画像

月百姿 心観月 手友梅

盲目の戦国武将・手友梅(てのゆうばい)は、背中の指物には竹の短冊で歌を掲げた。備中国吉城では、毛利の軍勢に多勢に無勢で戦い討ち取られた。皆がかつてない盲人と涙を流したという。芳年は歴史に消えた無名の士に光を当てた人だった(小早川に滅ぼされた三村家の人間か)、目録では読み違えて平友梅とされている。

暗きより 暗き道にも迷はじな 心の月のくもりなければ

和泉式部の有名な和歌「暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端の月」から本歌取りしつつ、内面的表現へと昇華した。本作に月は直接描かれていないが、心で観た月(しんかんのつき)を指す。

徳川の時代には関ヶ原の西軍に挑む者達は題材にしやすかったのかもしれない(尼子や大内の家臣も扱われる)が、維新以後に毛利の旗が踏まれているのはメッセージがあったのだろうか。摺りも大変良い1枚。

空摺り


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?