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藤本智士さん「魔法をかける編集」&「風と土の秋田」出版記念トーク@北書店

10/26(日)、編集者の藤本智士さんのトークイベントに行ってきました。
会場は北書店さん。18時過ぎにはざっと15人〜20人ほどの観客がいらしてました。


第1部と第2部に分かれていて、第1部は藤本さんが考える「編集とは」といった話、第2部では北書店佐藤さんとツバメコーヒー田中さんを交えてのトークイベント(ヒッコリーの迫さんもいい位置に座っていたので、途中から話す側に)。


本日のゲストは、藤本智士さん。兵庫県在住の編集者。大阪に編集部を置いた「Re:S(りす)」や秋田県発行のフリーマガジン「のんびり」が有名です。


しかし一般的な編集者という枠に収まらず、さまざまな肩書きの仕事もしている方。アートディレクションやメーカーさんとの商品開発、イベント企画やまちづくりなども行っています。藤本さん曰く、これもまた編集作業なのだそう。


狭義な編集とはもちろん、メディアを扱う編集です。しかしビジョンに到達するために起こす行動は、すべて編集という作業だといいます。そしてこの広義の編集という技術(=魔法)を地方へも届けたいと本を出版し、自分の足でまわるツアーを行っているそうです。
イベントは、今まで藤本さんがやってきた企画や「編集とは」といった内容から始まりました。


新しいモノ・コトに出会うために


東京ではなく、大阪という一地方で編集を行っていた藤本さん。東京の出版社が出す雑誌の取材を請け負っていました。普通、出版物は広告費で賄われています。そうすると台割りがしっかりと組まれていなければなりません。当然、一地方の編集・ライターは言われた通りに取材をしないと出版社からダメだしをくらってしまいます。たとえば「あんこの特集するから、大阪市の⚪︎⚪︎のお店行ってきて」と言われたら、隣にあるみたらし団子のお店に感動して「いやあ、⚪︎⚪︎のみたらし団子美味しいから、こっち入れた方がええですよ」と言っても「いや、藤本さん、あんこの特集だから」と一蹴されてしまいます。これはどうやっても逃れられない現実です。


そのときに藤本さんは、自分で編集長になって広告が入らない媒体をつくるしかないと思って、「Re:S」を立ち上げました。


もともと小さい頃から、鶴瓶さんの旅スタイルが好きだったそうで、「鶴瓶さんはなんでこんなおもしろい人たちに出会えるんだろう」と不思議に思っていたそう。しかしあるとき、「事前に何も調べずにふらっと行くからこそ、こんなおもしろい人に出会えるんじゃないのか?」と気付きました。だからこそ「Re:S」では、ほとんど何も調べずに「青森に取材に行くぞ!」と言いながら、長野でおもしろい人を見つけて帰ってきちゃうみたいな感じで動いていたそうです。


究極のローカルメディアは自分


今日何を着て、何を食べて、どんな行動を取るのか。その一挙手一投足が自分自身からの発信です。そんな自分に他人は共感したり、感動したりと意図せずとも影響されます。意図的に買い物をし、意図的に食べるものを選び、意図的に考えを口に出す。それはメディアとは自分でコントロールできるものに引き寄せることでもあります。


ローカルだからこそ、できること


ローカルでものをつくっていると「無理だから」とすぐに思いがちです。でもローカルならやれることが実は多いと藤本さんはいいます。とあるイベントで主催者の人に「ゲストには誰を呼ぶのがいいと思う?」と聞かれ、藤本さんは呼べそうな人の名前を出しました。しかし主催者の方は「じゃあ、その人と坂本龍一どっちがいい?」と聞かれ、「そりゃあ、坂本龍一ですかね」と言ったら、「じゃあ、交渉しよう」となったそうです。そして意外にも答えはOK。地方ではこうした奇跡がよく起きるといいます。
地方には良くも悪くも「人 対 人」の文化が残っています。人がよければ、何でもできてしまいます。逆に言えば、人に認めてもらえれば、何でもできるのがローカルの魅力です。


編集とは?
=叶えたいビジョンのために何をどう使えばいいのか?


藤本さんは秋田県のフリーマガジン「のんびり」を作りながら、作ったあとの秋田をどうしたいのかとずっと考えていたそうです。メディアを使って、どう未来をつくっていきたいのか。叶えたいビジョンのためには何をどう使えばいいのかを考え、実行することが編集だといいます。
そのときのメディアは、出版物やwebだけではないということでした。いってみれば、パン屋さんがつくるパンもメディア(=編集)のひとつ。イベントなのか?お店なのか?商品なのか?最適なメディアを選択して、未来へ向かうことが編集です。(斎彌酒造しかり八戸ブックセンターしかり。ここら辺の事例は、本の中に出てきます)

ビジョンを叶えるために、どの方法が最適なのか。一般的なメディア以外に何を使ってどう活用すればいいのか。少しの発想の転換でこんなに仕掛けていけるのかと驚きが多いイベントでした。


第2部は、ローカルが画一化されてきているけどそれは果たしてどうなの?とか、上古町と沼垂の商店街のお話とか、新潟の本屋さんのお話とか。藤本さんからは、ローカルメディアはみんな「地名」を入れすぎているとか、若者の話題にのっかることは大事(例:VALU)とか。佐藤さんも田中さんも迫さんもかなり突っ込んだ話をされていました。

気づいたら、3時間半。ものすごい情報量でした。藤本さんのお話だけじゃなく、新潟で活躍されてる方々の話も含めて聞けたので、地元と関連付けて考えられる機会となりました。

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