#ソニックロストワールド のテイルスとソニックの物語について

序文

※以下は色々なことをまとめたかきかけの文章の中から、テイルス関連の部分を抜き出したものです。ただでさえ最近sontails萌えが昂ぶっている中透過されたTwitter企画 #音速一問一答 での最後の質問があまりに内容ドンピシャだったのでいてもたってもいられずこういう形で出すことにしました。

 二兎はおそらく、『描こうと目指しているもの』がある程度明確であれば、実際にお出しされたものには欠けた部分があったとしても、本来完成したであろう部分を加味して評価しがちなのだと思います(もちろん、欠けた部分を惜しくは思いますが)

 その例が『新ソニのゲーム性』であり、『ロスワでのテイルスとソニックの関係性』であり、『フォースのシナリオ』であるわけです。

 新ソニはやろうとしていることに技術が(開発的な意味でも、ハードの性能的な意味でも)追いついていなかった。
でも具体的に説明するまでもなく、今の技術で作り直せば悪いものではなくなるだろうということはわかってくれる人が少なくないと肌感で思います。 

 それはともかく、本題である『ロスワでのテイルスとソニックの関係性』について。あまり言及されているところを見たことがないのですが、ロスワは二人の、特にテイルスの心理・成長に着目してみると物凄くエモ散らかした物語になっています。
ただ、これはWiiU(PC)版を通しでプレイして初めて完成する…逆に言えば、ストーリーのムービーだけをネットで見たり3DS版をプレイしても『足りない』ものとなっているんです。
これを少しでいいから語らせて欲しい。この尊さをみんな共有してくれ。sontailsはいいぞ。

 

ロスワでのテイルス

 ロスワでのテイルスは、エッグマンとの共闘展開にイライラしはじめ、ソニックにも辛くあたってしまう。
特に有名なのがいきなりエッグマンに食って掛かり、ソニックに諌められるシーン。

 直前のシーンで自分もソニックには呆れた態度をとっていたにも関わらず、いきなりエッグマンに敵意剥き出しにしているのが違和感の最たる原因かと思います(そもそもそのシーンでもエッグマンの提案には皮肉を吐いていますが)

 ただ、実際にゲームをプレイしていれば、間にはいくつかのステージもあり、カットシーンは直接的に連なって見せられるわけではない。そして該当のシーンは『エッグマンの工場に辿り着いたところから』始まる。
ムービーこそないものの、『道中合間にエッグマンのいくつかの提案があり、ソニックが行動の指針としてそれを呑んだ』こと(それが「ソニックはボクよりエッグマンを信頼してるんだ!」を補強すること)自体は充分補完できる流れではないかと、個人的には思います。
この時の行動原理自体は「頼られたかったんだよ……」と後で白状してますし、そもそも上記の怒りのピークシーン単体で見ても結局は『エッグマンに向かって「「お前のせいだろ!」」とソニックと仲良く指を突きつける』というオチがついている。

 特に日本ネットでは上記のシーンばかりが取り沙汰され、「ロスワでのテイルスは性格の曲がった嫌な奴」とまで言われがちですが、それは大きな誤解です。
おそらくカットシーンだけをつなげた動画を観た場合、ムービーの挟まれる間隔やシーンごとのオチが意識しづらくなり、余計にそういう印象になるのではないでしょうか?

 そもそもイライラしているのは上記のシーンぐらいで、その後は功を焦って失敗する→よりにもよってエッグマンに助けられるという経験を経て、ちゃんと自らを省みます。

 また、その「頼られたかった」という我欲自体も、見方によれば"子供っぽい"のですが、これは以前の物語を通して『ソニックの後ろをついて回るだけの自分』から脱却した結果芽生えたものとも言えます。特に『カラーズ』でも実際"最終決戦に置いていかれる"という経験を経ているので、なおさら。

 以前に比べて自分に自信が生まれているからこそ『エッグマンに頼らずとも自分がいるのに』という感情が生まれるし、ソニックと一緒に『素直にエッグマンに頼ろう』となれない。技術面でのライバルとしてエッグマンは『真正面から張り合う相手』なので、なおさら。
地の利も六鬼衆の情報も明らかにエッグマンには利用価値があるのだから、予防線は張りつつもエッグマンの言うことを聞く、少なくとも表面上は素直に協力するフリをしておくのが一番合理的なのはテイルスなら当然わかっているはず。
その"合理的な判断"を妨げる幼いエゴというのが、この物語において彼がぶつかり、乗り越えるべきものだったというわけです。

 卓越した頭脳を持ちながらも子供らしい未熟さに振り回されてしまう。そんな本作のテイルスは、ただ"いい子"であるより、操作キャラでない限りともすればただの便利な技術屋・解説役に甘んじてしまいがちな立ち位置のキャラクターとしては、遥かに魅力的な描き方をされていたと、二兎は思います。

 そしてそれはこの点に関しては(自分の失敗のせいであるという直接的な弱みだけでなく)ソニックがテイルスよりはほんの少し『大人な判断』ができているという対比でもある。
ただソニックはテイルスがそういうエゴを抱えていることには気付けなかったから、上記の衝突に繋がってしまうわけです。

 遡ればロスワは
一番最初のステージで"墜落するテイルスのトルネード"から始まり
→上記の仲違い〜一旦の和解
→ソニックをかばって身代わりに拐われる
→頭脳と技術を活かして六鬼衆を出し抜きソニックと合流、改めて"頼れる相棒"としてのポジションにきちんと収まる
→そして最後にED後の隠しステージでは"修理したトルネード"にソニックを乗せて『BELIEVE IN MYSELF』をバックに飛ぶ……
これがどれだけ"象徴"に満ちた物語であるかは、もはや説明するまでもないと思います。

…この項を読んで「なんだそれは知らんぞ」と思った人が、それなりに居るのではないでしょうか。
それが『この物語は動画を見たり3DS版をプレイしても未完成だ』という部分です。

"墜落するテイルスのトルネード"

 トルネード自体はOPムービーで墜落するので、見た覚えはあると思います。問題なのはそのSE。

 本作の一番最初のステージ"ウィンディヒル ZONE1"のBGMは本作の代表曲のひとつでもあり、シリーズの中でもスマブラやmaimai等、他媒体への収録が特に多い曲のひとつです。
本作自体が全体的に楽曲の質が非常に高い中でも、弦楽器メインの明るく跳ねるような疾走感が非常に心地よく、また暖かな色味の画面との融和性も高い独特のサウンドとなっています。それでは、実際にプレイ動画を観て下さい。

 曲の入りに、トルネードとのプロペラ音が入っていますね?
カウントダウンと共に冒険が始まるワクワク感が、まず"蛇行して墜落していくテイルスを追いかける"というソニックの走る理由と共に強く印象付けられるシーンです。
ですがこれはあくまでもSEであるため、外部収録時にはもちろん入っていません。WiiU版だけの特別な演出です。
バイオリンとドラムのスピード感のあるメロディとこのプロペラ音が上手く一体化して、非常に気持ちいいものとなっています。

 また、上記動画の通り本作には通常プレイとは別に「タイムアタックモード」が用意され、オンラインランキングにも対応しています。
タイムアタックモードはタイムでランクが変わり、このステージはゲーム中最初のステージであるにも関わらずSランク条件がやたら厳しく設定されています。
ソニックシリーズの最初のステージはただ気持ちよく走れるからというだけでも特に何度もプレイする人が多いと思いますが、タイムアタックに挑む場合更にこの曲とSEを繰り返し聴くことになる。だからプレイヤーにとっては余計に印象深いものとなっている、明らかに"そう作られて"いる。
ロストワールドの冒険は、ここから始まります。

"修理したトルネード"と『BELIEVE IN MYSELF』

 次はこの動画を観て下さい。

 これもWiiU版限定の要素。本編ストーリークリア後に現れる隠しステージ"ヒドゥンワールド"、その2つ目のZONEです。
見ての通りこのステージでは先程最初のステージで墜落していたトルネードを操作することになります。それも『ソニックアドベンチャー2』のテイルスのテーマソングである『BELIEVE IN MYSELF』をバックに、です。
言うまでもなく、これはテイルスのためのステージです。

 舞台が天空に浮かぶ大陸ということもあって、3DS版のタイトル画面やホーム画面アイコンも空を駆けるトルネードをフィーチャーしたものになっていたりします。トルネードはこのゲーム全体の"象徴"です。
それが墜落し、修理され、ED後にソニックとテイルスを乗せて再び空を飛ぶ姿。
これがそのまま二人の関係性の変化、そしてテイルスの成長のメタファーになっているのは明らかです。

 二人のバディとしての関係性がぶつかった壁、そしてそれを乗り越える流れが、かなりはっきりと本作の根底を流れるストーリーラインの一つになっているわけです。

 この二つのシーンを補完してもなお、本作でのテイルスが理不尽にイライラしているだけだと感じますか?

ソニック視点

 ただ、その中においてソニックが演じた役割というのは、かなり"損"なものであったのは確かです。
何度も先走ってはその度に事態を悪化させ、ついにはテイルスが敵の手に墜ちてしまう(それも自分を庇って)という。
ヒーローというのは常に貧乏くじを引きがちなものですが、そのピンチを極力周囲に及ばせないのがヒーローらしさでもある(ソニアド2でも、新ソニでも、フォースでも、彼はある意味とばっちりと言えそうなレベルでシャドウが怒らせた相手に絡まれている)
その点で言えば本作の彼は未熟さ・若さという点を強調されている。

 しかし滅多にない失態だからこそ、ザボック達六鬼衆に対して余裕のない激しい怒りを見せるシーンがありました。ある意味では『ソニックX』でのダークソニックを彷彿とさせる流れです(逆説的になりますが、『フォース』で本人が半年間痛めつけられていても挑発的な態度を崩さなかったのはこれと好対照なシーンでもあり、双方極めて『ソニックらしい』と個人的には思います)

 以前も一度書きましたが、本作のソニックは他にもエッグマンに助けられたりといった失敗を色々と経て、エンディングにおいて『のんびりする』ことを選ぶようになる。
いつも自分一人で突っ走っていてはどうにもならないこともある、というのがこの物語でソニック個人に与えられた壁であり、物語全体としても一番表面的なメッセージでした。

映画ソニック2こと『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』は8/19日本公開です

 これらを乗り越えて、テイルスの操縦するトルネードはソニックを乗せて飛ぶ。
『ソニックロストワールド』は二人の、特にテイルスの成長に強く焦点を当てて描かれた物語であり、シリーズでもトップクラスの"濃い"描写に満ちていることがわかるだろう!?!!!???!?
映画の二人もやばいぐらいモッフモフで可愛いし、特にテイルスからのクソデカ感情がしっかり描写されてるから絶対見てくれよな!!そしてソニテイソニの尊さにハマれ!!!!!!!映画ソニック2こと『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』は8/19日本公開です!!!!!!!!!!!

(以降、物語全体やカラーズ以降の路線変更等について諸々続く)

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