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採用戦略の「基本のキ」ターゲット設定の3つのステップ

「〇〇な学生が欲しい」。

採用活動を行う際は、必ず要件やペルソナなどを決めると思います。皆さんの会社では、どのようにそれを決めていますか?

地頭が良くて、海外経験があって、コミュニケーション能力や協調性が高い──など、さまざまな要素があると思いますが、このいわゆる「ターゲット設定」は採用活動の成否を分けるほど重要な仕事です。

ターゲット設定がうまくいけば、効率よく母集団形成ができ、広告費やエントリー単価を抑えられますが、逆に失敗すると、お金も時間もかかるばかりで一向に成果につながらない──なんてことも起こり得ます。

昨今は、採用活動にマーケティングの観点を取り入れる「採用マーケティング」という考え方が広がりつつあります。今回はその手法に基づいて効果的なターゲット設定の方法をご紹介します。

●限られたリソースをどこに割くのか? ターゲティングは3つのステップで完成する

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そもそも、なぜターゲットを決める必要があるのでしょうか。

マーケティング戦略におけるターゲット設定(ターゲティング)の目的は、「勝負する市場(マーケット)を選択する」こと。採用活動に使えるお金や時間は有限です。限られたリソースをどこに注ぐかをはっきりさせることが、効果を最大化させる第一歩なのです。

マーケティングでは「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」が重要だと言われますが(※)、採用マーケティングにおいてもそれは同じ。それぞれどういうことか、方法を確認しながら順番に見ていきましょう。

1:セグメンテーション……市場をセグメントで分類する
2:ターゲティング……自社が勝負(投資)する市場を選択する
3:ポジショニング……自社のターゲットへの提供価値を決める

(※)参考:STP分析とは?

【ステップ1】  学生をどうカテゴライズするか?ー「セグメンテーション」のコツは定量化にあり

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初めに行うのが「セグメンテーション」です。市場をさまざまな属性で分類することで、構造を把握する。つまり、世の中にどんな学生がいるのかを把握するということでもあります。ターゲットを明確なものにするためにも、必ず行いましょう。

特に母集団形成においては、文理、学部、専攻、大学、所属団体、地域といった、人によって解釈が分かれない定量的な属性でセグメント分けをすることが大切です。なぜなら定性的なセグメントと比較して、定量的なセグメントの方が具体的な施策に落とし込みやすいからです。

記事の冒頭でも紹介したように、人材要件には「コミュニケーション能力が高い」といった資質にまつわる定性的な属性も混じっていることがほとんどですので、まずは、自社の人材要件を定量的な属性と定性的な属性で分けましょう。

▼定量的な情報の例(マーケットを分類できる)
・文理
・学部
・専攻
・所属ゼミ、研究室
・大学
・所属団体
・地域
・志望業界
・志望企業
▼定性的な情報の例(マーケットを分類できない)
・地頭が良い
・コミュニケーション能力が高い
・協調性が高い
・自ら考え動くことができる
・素直
・大手/ベンチャー志向
・XX(自社のサービスに関連するもの)に興味がある

続いて定性的な情報の中で、定量的な情報に置き換えられそうなものを変換してみましょう。以下がその一例です。「こういうサークルにいたらコミュニケーション能力が高そうだ」くらいの感覚で十分です。

・地頭が良い学生→出身高校群、所属大学群
・コミュニケーション能力が高い→所属団体
・XX(自社のサービスに関連するもの)に興味がある→所属ゼミ、研究室
・大手/ベンチャー志向→志望企業群

このようにセグメンテーションにおいては、可能な限り人材要件を「マーケットを分類できる情報」に変換しましょう。

学生を選考する時、学歴だけで見るべきではありませんが、地域、学力、研究分野、集まる学生の志向などが表れる「大学」というのは、有効な指標になります。

採用担当者としても「『XX大学だから面接を合格にする』ということはないが、内定者の割合から考えると、XX大学と相性が良さそうなので母集団形成時には注力する」という経緯でセグメントを決めるのが本音のようです。

【ステップ2】自社に合うセグメントはどこか?ー「ターゲティング」は絞り込み

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セグメンテーションができたら次はターゲティングです。ターゲティングとは勝負するマーケットを選択することでした。その選択を行うために、2つの側面から現場社員とディスカッションをすることをおすすめします。

1. 自社の現状から「活躍社員」の実績をデータ化する

まずは自社の中でも特に活躍している社員が、学生のときにどのような大学や団体に所属してどんな就活をしていたかをヒアリングします。彼らの属性情報は実証のあるターゲットだからです。

これらのヒアリングには現場社員の巻き込みが必要ですが、活躍社員にとってもその上司にとっても「○○さんのような方を採用したい為話を聞かせて欲しい」というのは嬉しい話です。

採用目標を達成できる企業とそうでない企業の違いに、実は「現場社員の協力を得られているか」というファクターがあります。このようなヒアリングは現場社員を巻き込む良いきっかけにもなりますので是非試してみてください。

2. 会社の将来から逆算して必要なターゲットを言語化する
こちらも重要な視点です。今活躍している社員は今必要な社員であることは間違いないですが、会社の目指す世界と現状のギャップを埋める人材が不足している場合、現在の活躍人材とは違った強みを持つ人を採用する必要が出てきます。

自社の将来に必要な人材は、経営層と話す必要も出てきます。本来人事は人事部に閉じて仕事をするのではなく、このように経営層や現場の役職者としっかり連携をとって初めて本質的な仕事を行うことができます。「今会社に足りていない人材はどういう人材か」経営層にディスカッションを持ち込みましょう。

このように、ターゲットは「今活躍している人」と「これから必要な人」の二種類になることが多く、会社によってはそれぞれを採用する人事担当者や予算を分けているケースもあります。後者を採用する人事は「経営幹部候補ルート」や「IT人材採用」等、対象者を絞った採用に注力して動きます。

このような議論を重ねる中で、セグメンテーションで分類した学生の中でも、特に自社は今どのセグメントに注力するべきなのかが自ずと絞り込まれていくと思います。

【ステップ3】 絵に描いた餅にならない為にー「実現可能性」を考える

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ポイント2のステップを踏むと、さほど現実離れしたターゲットにはなっていないことが多いですが、自社の現状を踏まえると到底採用できないターゲットを設定してしまっては採用は充足しません。ここでは現場や経営層との期待値調整の為にも、どのようにターゲット採用の実現可能性を確認すれば良いのかについてお伝えします。

1. ターゲットになりうる学生は「何人」いるか? 大学の規模と就活の実情をチェック

まずはターゲットになりうる学生の「数」を確かめます。例えば、オンライン化に伴い、今年から地方大も採用ターゲットに加えようとした場合で考えてみましょう。

東京大学の就業者数が約3,700人いるのに対して、名古屋大学は約2,900人、九州大学は約3,000人、北海道大学は約2,000人です。地方大生は地方就職の割合も高いので、どのような就職先がメインになっているかも調べられる範囲で確認しましょう。

例えば以下のような記事を調べることで、名古屋大学は他の地域に比べて愛知県内での就職を選ぶ学生が多いことがわかります。彼らを振り向かせる為には、トヨタグループに勝る魅力を訴求する必要があるのです。

2. ターゲットは本当にウチに来てくれるか? 志望企業から採用のリアリティを考える

数が分かったら、最後は「確率」を考えましょう。

確率を考える為には、そのターゲットがどの業界や企業群を志望しているかを把握します。それらの採用競合と比較して、自社が選ばれる確率を冷静に検討するのです。

ポイント1. ターゲットが見ている企業群を調べる
ターゲットの志望企業を知るには、各社のランキングが参考になるでしょう。OpenWorkやワンキャリアでは、大学別の人気企業ランキングを抜粋して公表しています。

OpenWorkのランキング

ワンキャリアのランキング

ランキングのリアルタイムでの変化は、ワンキャリアクラウド採用計画の「お気に入りランキング」機能でも確認できます。こちらでは、全100大学をそれぞれ指定して毎週最新のランキングを見ることが可能です(下は「東京大学」の学生からの人気企業ランキングを調べた結果のサンプルです)。

お気に入りランキング

まずはここまでで、自社のターゲット学生がどのような企業群を受けているか把握することができます。

ポイント2. 学生を自社に振り向かせることができるか
ポイント1.で調べたランキング企業群を見た時に、学生がそれらの企業と自社と「併願」し自社に「入社」を決める可能性があるかの確認です。

既に新卒採用経験のある人事の方は、これまで自社を受けた学生や若手社員に、ランキングに入っている企業と自社を併願していたり、それらの企業の選考を辞退して自社に入社を決めた人がいるのかを確認してみることで確率を想定できます。また、それらの企業を受けている学生が自社の面接に来てくれたとして、人事として彼らを口説けると感じられるかどうかも重要なポイントです。

はじめて新卒採用をする為イメージがしづらいという人事の方は、ワンキャリアクラウドの担当者が無料で相談をお受けしますので、以下からお問合せください。

ワンキャリアクラウドのお問合せフォーム

ポイント1、2を経て、自社の狙っているターゲットの採用確率は見えてきましたでしょうか。もし格段に高いターゲット設定の場合どうするか。その場合は2択です。一つ目の選択肢は、ターゲットの難易度を下げること。二つ目の選択肢は、今まで以上に予算や時間を割く覚悟で、ターゲットにどうやって興味を持ってもらうかの戦略を練ることです。

【最後に】「ポジショニング」〜ターゲットに合わせた採用戦略の考え方〜

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ターゲティングができたら、最後に選択したセグメント(ターゲット)に提供できる価値を整理しましょう。

ポジショニングとは、自社が訴求するターゲットへの提供価値を決めることです。わかりやすく言うと、ターゲットが自社について「XXXな企業だから入社したい」と話しているイメージを描くことです。

ターゲットへの提供価値を考える上で、実用的なのが「3C分析」です。実は面接のときに自然と「3C分析」を実施している採用担当者の方は多いかと思われます。「どのような軸で就活をしているか」「他にどのような企業を受けているか」などと聞いていませんか?

これらの質問は、ニーズと競合を把握し「その軸だと(その会社よりも)自社が合っているよ」と伝えるために実施しているはずです。母集団形成においてポジショニングを決める上でも、基本的な考え方は同じです。

ポジショニングの設定の為の3C分析
<Customer(学生ニーズの把握)>
ターゲット学生は、キャリアや入社先に何を求めているか
<Competitor(競合とその強み弱み)>
ターゲット学生は、自社のほかにどのような企業に興味を持っているのか。また競合の何が学生にとって魅力的で弱点はどこなのか。
<Company(自社とその強み弱み)>
自社の特徴でターゲット学生のニーズを満たし、競合と比べて優れている点はどこか。また魅力で負けている部分はどこか。

ここからは、これらの情報を調べる方法を説明していきます。

<Customer> ターゲット学生が入社先に何を求めているかを知る
まずは自社の若手や応募者で対象になる人にヒアリングをする方法が有効です。その学生のみならず、周囲の学生がどんな価値観で就活をしていたかを聞いてみるのも良いでしょう。

次は採用パートナーに聞くことです。ワンキャリアも含め、各種採用サービスを提供する企業の多くが第三者的な立場で学生のニーズを聞いています。

ワンキャリアで収集した情報は、以下の資料の各大学生が「入社する企業を選ぶ理由」にもまとめて公開していますので、よろしければご覧ください。

東大生攻略本 | 特集 東大生はこう動く!
早大生攻略本 | 特集 早大生はこう動く!
慶應生攻略本 | 特集 慶應生はこう動く!

実際学生毎のニーズは人それぞれですが、まずはターゲット学生の多くがどう思うかを知ることが重要です。特に選考初期である程対峙しなければならない人数が多い為、個々人のニーズよりもターゲット全体の特性に注目しましょう。

<Competitor>ターゲット学生がどんな企業に興味を持っているかを知る
こちらはターゲット設定のときと同じ話となりますが、各社のランキング記事や「ワンキャリアクラウド採用計画」の大学別「お気に入りランキング」メニューで傾向を知ることができるでしょう。

<Company>自社の特徴でターゲット学生のニーズを満たし、競合と比べて優れている点はどこかを知る
採用競合の中でベンチマークする企業を決めたら、その企業と自社を並べ、何が魅力で勝るポイントかを考えます。必ずしも「有名企業だから、大手だから勝てない」ということはありません。強みと弱みは裏表です。

有名企業であれば、これから有名になる面白さは少ない、大手であれば、調整の多さなど規模が大きいからこそのデメリットもあるでしょう。

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この戦略を練る方法も2つあります。まずは直接聞く方法。実際に競合企業を蹴って自社に内定承諾した社員に聞くことも重要ですが、選考辞退された学生の中で関係値の良い人に、なぜ選ばれなかったかを率直にフィードバックしてもらうのも良い情報収集の方法です。

もう1つはウェブ上のクチコミを見る方法。クチコミには、直接ヒアリングでは聞けない学生の本音が載っています。例えば、就活生のクチコミサイト「みん就」を使えば、企業のクチコミを閲覧できます。

また、弊社で運営している就活サイトONE CAREERのクチコミも「ワンキャリアクラウド採用計画」上で匿名のものが確認できます。クチコミの点数をレーダーチャート化しており、企業視点で各社の強みと弱みが分かりやすく表示されているのが特徴です。

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ワンキャリアクラウド採用計画」を用いた企業分析の方法は、以下の記事からご確認いただけます。

ワンキャリアクラウドで「採用の強み・弱み」を分析する方法

【まとめ】ターゲティングは採用戦略の「第一歩」

いかがでしたか。ここまで長い記事を読んでいただきありがとうございました。最後に改めて、ターゲットを設定する上で押さえておくべきポイントをまとめます。

①ターゲット設定の目的は、限りある資源を効率的に活用すること
②ターゲット設定は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順に行うこと

■セグメンテーション
 文理・所属団体・志望企業群等、採用したい学生をできる限り定量化できる定義で分類する。

■ターゲティング

自社の「現在の活躍社員」と「将来必要な人材」を現場と話し合うことでセグメントの中から絞り込む。

■ポジショニング
3C分析で学生のニーズを把握した上で、自社のどのような魅力が学生の志望度を高められるかを言語化する。

ターゲティングは、採用戦略の全てのはじまりと言えるほど重要なアクションです。ぜひ自社のターゲティングの改善や見直しにご活用くださいませ。


ワンキャリアではより本質的な採用活動を目指す新卒採用担当の方向けに、新卒採用の体系的な考え方から、すぐ活用できる実践方法まで、最新の事例をもとに解説する「 #新卒採用のトリセツ 」を公開していきます。

このシリーズが企業の採用力を高め、そして実践する企業が増えることで、学生の就職活動もより健全になることを願っています。

今後も週1のペースで記事を公開予定です。
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また、今後とりあげるテーマについてリクエストも受付けています。リクエストをいただける方は以下のフォームからご連絡くださいませ。

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この記事の筆者

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