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「そのブレストちょっと待って!」 インターンシップの企画、まずやるべきは案出しではなく……?

新卒採用においてますます重要性が増すインターンシップ。それだけに、新たに実施する企業だけでなく、既存のプログラムを見直す企業でもインターンシップの企画をする企業は多いのではないでしょうか。

この記事では、インターンシップを企画する際に何から着手し、何を考えるべきか。その全体像を掴めるよう、3ステップに分けて手順をお伝えしていきます。


1.前提となる情報を整理する

「企画」ということで、いきなりアイデア出しをするのも悪くはありませんが、インターンシップは人事、現場社員、経営陣など多くの関係者で開催するため、コンセンサスを取りながら進めることが重要です。

このステップでは、インターンシップの具体的なコンテンツを考える前に、担当者個人や採用チームの一部メンバーのみで揃えておくべき、前提情報を整理します。

1.1. 目的とターゲット

まずはインターンシップを開催する目的です。ほとんどのケースにおいてターゲットも同時に設定します。例えば以下のような形です。

例1)採用ターゲットのうち、本選考だけではリーチできないxxxの学生と早期に接点を持って採用につなげる
→自社が属する業界とは別の業界を志望する学生や、同業界だが自社よりも採用力の強い企業を志望する学生をターゲットとするケース

例2)本選考に集められているターゲットに対して、内定承諾率を高める
→相対的に採用競合よりも優位な企業や、採用目標に対して母集団が十分に集まり得る企業などのケース

目的が設定できたら、インターンシップの関係者間で認識のズレがないよう、ターゲットの言語化を行いましょう。ターゲットを明確にする方法や、そもそもの採用ターゲットの見つけ方については、こちらの記事をご覧ください。

1.2. 採用競合

ターゲットを定めたら、次はそのターゲットとなる学生を集めるにあたって、競合や目標とする企業を定めます。これはターゲット学生のニーズを把握したり、インターンシップの差別化を図る上で重要なプロセスとなります。

採用競合は1社に絞る必要はなく、数社(複数業界)に絞れれば十分です。採用競合については、以下3つの観点から考えるのがポイントです。

a. ターゲット学生に人気の企業/業界
b. 現在自社とバッティングしている企業/業界
c. 本来自社がバッティングしたい競合

「a. ターゲット学生に人気の企業/業界」については、各社のランキングが参考になるでしょう。OpenWorkやワンキャリアでは、大学別の人気企業ランキングを抜粋して公表しています。

OpenWorkのランキング
東大生が選ぶ、就職注目企業ランキング【ベスト20・完全版】
ワンキャリアのランキング
【3月速報:東大京大 22卒就活人気ランキング】コンサル独占だったTOP10に異変あり?3月以降の「本命」企業はどこだ?

ランキングのリアルタイムでの変化は、ワンキャリアクラウド採用計画の「お気に入りランキング」機能でも確認できます。こちらでは、全100大学をそれぞれ指定して毎週最新のランキングを見ることが可能です(下は「東京大学」の学生からの人気企業ランキングを調べた結果のサンプルです)。

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また、「b. 現在自社とバッティングしている企業/業界」についても、ワンキャリアクラウド採用計画で見られます。

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※補足
自社とよく比較される順:採用計画を立てる卒年度におけるお気に入り数の重複が多い順
自社と内定者が被りやすい順:過去全ての内定実績の重複が多い順


1.3. 集客/開催時期

ターゲットと採用競合が決まったら、集客や開催の時期を設定します。
時期を最適化する際には、以下3つの要素、つまり「3C分析」の要素、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)で考えます。

a. ターゲット学生が動く時期
b. 競合他社が動く時期
c. 自社事情

a. ターゲット学生が動く時期
基本的に、集客はターゲット大学の学生が最も活発に就職活動を行う時期に実施しましょう。学生のエントリーが活発な時期は「ワンキャリアクラウド採用計画」を使えば大学別に調べられます。

以下が実際の画面です。こちらは「早稲田大学」の学生をターゲットにしている企業の設定事例です。

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グラフの実線がエントリー数の推移を表しています。グラフから大学3年生の5月下旬がエントリーのピークになることが分かるため、以下のような設計が考えられます。

グラフを基にした計画設計例
・就活メディアの掲載は5月から開始する
・募集期間(1〜2カ月)を確保し、説明会の初回日程は7月に設定する

就活動向グラフの詳しい操作方法はこちらの記事をご覧ください。

b. 競合他社が動く時期
競合他社の動向を基に、施策の実施時期を決めるのも有力な方法です。「ワンキャリアクラウド採用計画」では、以下のように競合他社の採用施策の時期を調べられます。

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同業他社が多く動く時期は、就活生の注目が業界に集まりやすいので、これらの企業と近しいスケジュールにするのが無難です。

その上で、競合より知名度に劣る場合は先手を打って学生と接触するために少し早めから、逆の場合は競合の手の内が分かった状態で学生にアピールするために少し後半にする、といったように微調整をかけます。

他社スケジュールの閲覧方法はこちらの記事に載っています。

c. 自社事情
企業によっては、インターンシップを開催するための会議室が先々まで埋まってしまっている……などの状況も起こり得ます。会場は外部会議室を借りる、オンライン開催とするなどの方法もありますが、人・場所などのスケジュールを踏まえて物理的に実施可能な時期を考慮に入れましょう。

これらを総合して、集客施策施策をどの期間で行うか、そしてどの時期に開催するかを決定します。

1.4. 自社に対する参加前後の印象変化

ターゲット、採用競合、時期を踏まえ、前提となる情報の最後のピースとして、学生の自社に対する印象の変化を設計します。つまり「参加前に持たれているであろう印象を、参加後にはこのような印象に変える」という、インターンにおけるゴールを定めるプロセスです。

参加前に持たれているであろう印象、参加後に持ってほしい理想的な印象をそれぞれ言語化する際には、フレームワークを用いることで抜け漏れなく洗い出すことができます。

一例としてよく用られるのはリンクアンドモチベーションが提唱している「企業の魅力因子4P:Philosophy(理念・目的)、Profession(仕事・事業)、People(人材・風土)、Privilege(特権・待遇)」です。

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この4Pは、それぞれが2つの中項目と4つの小項目に分かれており、計16項目に分解できます。採用候補者が会社を選ぶ「決め手」も16項目のいずれかに当てはまります。

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※ 出典)リンクアンドモチベーション 内定者フォローとは?
内定辞退を防ぐ具体的なコミュニケーション、方法、施策例をご紹介

なお、フレームワークは検討の補助材料に過ぎないため、4Pの16項目を全て埋める必要はありませんし、自社の魅力が高い項目は、16項目にはないものを書き足したりしても問題ありません。

参加後に持ってほしい理想的な印象、つまり自社のアピールポイントの洗い出し方や、競合他社との差別化の方法などは、こちらの記事に詳細をまとめていますのでご覧ください。


2.コアとなる部分をつくる

ターゲット、採用競合、時期、参加前後の印象変化。これらの前提が揃ったことで、本来の目的に沿ったインターンシップを企画するための方向性が定まりました。

ここからは採用担当個人ではなく、採用チームや、関係する現場社員・経営陣とともに議論をしていくプロセスとなります。主な論点を説明していきます。

2.1. インターンシップを通じて得られるもの

まず考えるべきは、インターンシップを通じて得られるもの、つまり持ち帰ってもらう「お土産」です。

一般的にインターンシップでは(夏頃までに開催されるものでは特に)、お土産がいかにリッチなものであるかがブランド強化の重要な要素となるためです。企画の詳細が詰まった後にも、改めて整理することをおすすめします。

学生がインターンシップを評価する際の観点は主に下記の5つです。これらを通じて、自分の適性や働く面白みを見極めています。


①企業や事業、業界の理解が深まるか
②スキルや知識の習得、自己理解の深化などの自己成長
③優秀な学生からの刺激や魅力的な横の繋がり
④社員との接点から会社の雰囲気や自分との相性を確かめられるか
⑤本選考の優遇や金銭的な報酬など実利的なメリット

これらの観点を参考に、インターンシップを通じて参加学生が得られるものを洗い出します。中でも、自社だからこそ提供できるものや、特に重視したいものを明確にしましょう。

ちなみに、就活サイトONE CAREERでは上記の5つを基準に学生から企業の採用イベントに関するクチコミを集めており、それらクチコミは人事の方々にも「ワンキャリアクラウド採用計画」上でご確認いただけます(※)。クチコミの点数をレーダーチャート化しており、企業視点で各社の強み弱みが分かりやすく表示されているのが特徴です。

(※)クチコミは匿名で個人情報は提供しておりません。また、ご提供しているクチコミはワンキャリアクラウド採用計画上での公開について、学生の規約同意を得たもののみとなります。

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2.2. コンテンツ

提供したいお土産が決まったら、核となるコンテンツを設計していきます。

どのようなコンテンツがふさわしいのかは、今までに記載した「目的やターゲット」などの各項目のほか、業界や事業領域、参加社員などによって異なります。インターンシップは主に下記のような型がありので、コンテンツの企画に悩んだ際は参考にしてください。


①講義/施設見学型 ※1dayに多め
業界や事業の理解を深めるための講義と、それに関連するワークを行うインターンシップで、1日など短期間のプログラムで実施されることがほとんどです。メーカーやインフラ企業などを中心に、企業の関連施設への見学も含まれることがあります。

②事業立案型
新規事業の立案や、地方創生に向けた事業立案、SDGsに関連した戦略立案などを行うインターンシップです。立案する事業の対象は、すでにある事業と関連したものもあれば、ゼロベースに近い形で事業立案を行うケースなどさまざまです。

③ビジネス課題解決/ワークショップ型
現存する事業において課題解決の提案を行うインターンシップです。主な内容は既存事業の課題解決策の提案、顧客への実際の提案に即したワークショップ、過去に行われたプロジェクトの追体験ワークなどです。

④実務体験型 ※主に3週間以上の長期
実際の業務を、担当社員と共に行うインターンシップです。営業、マーケティング、人事、エンジニアリングなど職種はさまざまで、先輩社員の業務の補助から開始します。

2.3. コミュニケーション

コンテンツが決まったら、より効果的なインターンシップとするためにコミュニケーションの機会や方法についても検討しましょう。ここでのコミュニケーションとは以下の2つを指しており、ほとんどの学生が求めているといっても過言ではありません。


①参加社員/経営陣と学生とのコミュニケーション
求める理由:企業や事業、業界の理解を深めたり、自分と会社/社員との相性を確かめたりするため

②社員同士のコミュニケーション
求める理由:会社のリアルな雰囲気、社風を見極めるため

そのため、それぞれのコミュニケーションが取られる機会を事前に設計しておくのがいいでしょう。機会には下記のようなものがあります。

・ワーク中のフィードバック
・発表などアウトプットに対するフィードバック
・面談や座談会などの対話シーン
・ランチなどの飲食
・講義や自己紹介中の社員同士のかけあい

例えば「経営陣と社員がフラットな関係であることを感じてほしい」ならば、ランチには現場社員だけでなく経営陣も同席してカジュアルな話をする、といった仕掛けを設計します。

そのほか、オンラインインターンならではの運営上の注意点や、お土産をより魅力的に伝えるためのコミュニケーション方法について、下記の記事でもまとめていますのでご覧ください。


3. 実施に向けて必要な情報を揃える

コアとなる部分までを作れたら、インターンシップの企画で残るのは実施に向けて必要な細かな調整のみです。
すでにインターンシップを開催された方であればご存じかと思いますが、これから初めて企画する方へ向け、必要な情報を以下に挙げます。


■必要人員
・メンター
・講師/プレゼンター
・運営スタッフ

■開催日程/タイムスケジュール
・全体のプログラムのスケジュール
・上記必要人員について、どの日程/時間で参加が必要か
・具体的な日程/時間
(注意)
※開催の具体的な日時を決定する際には学校の催事(文化祭やテスト日程など)、TOEICなどの外部試験日程も考慮しましょう。
※対面での実施となる場合、遠方から参加される学生の移動時間等を考慮した実施時間としましょう。

■想定コスト/必要備品
・会場費
・参加者交通費
・集客費(主な施策と費用概算はこちらをご参照ください)
・宿泊費
・飲食費(昼食/夕食などの食費、間食、飲料など)
・備品費用(消毒用アルコール/体温計/予備マスクなどの感染対策グッズや、ポストイット/ペン/紙/ホワイトボードなどワークで必要な備品)
・参加者報酬(参加者全員への報酬や、優勝チームへの賞金など。無い場合も多くあります。)


おわりに

インターンシップの企画はプロセスが長く、検討事項も多いため、多くの労力と時間を要するハードな業務です。一方で良い企画を優れたオペレーションで実現できれば、候補者のアトラクトや望ましい印象変化を作ることができるのはもちろん、社内の採用に対する意欲や知見を高めることもできます。この記事が大変な企画業務を少しでもスムーズに、そしてクオリティの向上に役立ちましたら幸いです。

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この記事の筆者

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