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10月8日 才能があるのに伸びない選手

「1日1話,読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」より,日本水泳連盟シンクロ委員長の金子正子さんです。
※肩書は『致知』掲載当時のものです。

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 昔,ライバルのクラブチームが,小さいけれど専用プールを持ったことがありました。「そんなに存分に練習できるチームにはもう勝てません」と選手たちは諦め気味でしたが,「明日も明後日も何時間でも練習できると思ったら,きょうくらいはと思って手を抜くと思わない? あなたたちは二時間しかないけど,工夫して懸命に泳いだほうがずっとプラスじゃない」と私は言い切ったんですね。

 このとき『25メートルプールの1コースを40人くらいで,上下二層で泳いで練習していた』とある。本当に条件の悪い中で工夫して練習し,そして選手に「やっている」という思いを持たせていたそうだ。

 私は条件が悪い中で工夫するということは,選手についても同じことが言えると思います。素質や才能のある子は簡単にできてしまうから,あまりじっくり考えることがないんですね。才能があるのに伸びない選手は,だいたい深く自分を考えることができない子が多い。

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「深く自分を考える」
例えば,自分が取り組んで上手くいったこと,できなかったことを分析したり。自分がいる環境や周りの人との関係について考えたり。
自分にとって,その競技(仕事)に取り組むことはどんな意味があるのか。
その競技(仕事)をとおして,社会や他者にどんな影響を与えるのか,与えたいのか。
「深く自分を考える」とは「自分を哲学する」ことかもしれない。

学校での学習も同じだ。

いつも同じような計算ミスをしてしまうとき,原因を分析して対策を取るのか。それとも「いつもミスしちゃうんです…」と反省して終わるのか。

卒業後の進路を決めるとき,卒業後の自分の姿,生活,あり方を具体的にイメージして選択するのか。模試の点数や他人の意見によって決めるのか。

 「深く自分を考える」とは,自分の内部にある要因を明確にすることなのかもしれない。自分の内部にある感情,考え,そこから生まれる行動を自覚すること。
 Gallupのクリフトンストレングス(旧ストレングスファインダー)の考え方と似ていると思う。クリフトンストレングスでは,自分の感情や価値観,行動と,34資質の診断結果を結びつけることから始まる。診断結果をとおして自己理解を深めたのちに,いま抱えている課題や乗り越えたい壁をどうやって突破していくかをコーチングセッションによって導き出していく。

自分を哲学できる人は,きっとセルフコーチングが出来ていると思う。

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 さて,今日の金子正子さんの記事は,フィギュアスケートの山田満知子コーチとの対談からの抜粋のようです。致知出版社のWebサイトには,最初に引用した部分の続きの対談が掲載されています。

宇野昌磨、浅田真央を育てた名コーチ・山田満知子が語る「伸びる人と伸びない人の差」|致知出版社

私は選手たちが競技生活に打ち込み、世界のトップを目指す中で、素敵な女の子たちになってほしいなと思って育ててきました。技術はもちろん、挨拶もそう、礼儀もそう、プール磨きもすべてそのためなんですね。

 シンクロをやるのは若い間のほんの10数年、長くても20年です。シンクロだけできればいいというのではなくて、競技生活が終わった時に、シンクロやってきてよかった、このコーチの下に習いに行ってよかったと感じてほしいと思いますね。

競技で良い結果を残すだけでなく,素敵な女性になってほしい。
選手一人ひとりの人間性に目を向けていらっしゃるんだろうと感じました。

学校における教育の目的は「人格の形成」。
「あなたは教師として,生徒がどんな大人になってほしいと思っていますか?」
「教師」を「親」や「兄」「姉」,「教師と生徒」ではなく「上司と部下」などに変えて考えてみると,自分の価値観が見えてくると思います。

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