クリスチャン・カリオン監督 『パリタクシー』
監督・脚本・制作:クリスチャン・カリオン
キャスト:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン
『タクシードライバー』『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ちょっと思い出しただけ』…タクシーにまつわる映画の名作はすぐに思い浮かぶ。
運転手と雇い主の絆を描いた『ドライビング Miss デイジー』『グリーンブック』といった作品も印象深く、変化球ながら『パリの調香師』もこの系譜の秀作に挙げられそう。
そして『パリタクシー』…たまたま乗り合わせた運転手と乗客の一期一会から始まる人間味に溢れた物語によって、系譜の先に心地よい新風が吹いた。
住み慣れた自宅を後に施設へ向かう終活マダム=マドレーヌに翻弄される、訳ありタクシー運転手=シャルル。パリに点在する彼女の思い出の地を巡る中で人生の過去が紐解かれていき、やがて心を通わせた運転手と乗客の間に強い絆が生まれていく。そして「幸せな衝撃に笑い泣き!意外すぎる感動作!」と公式サイトのコピーにある通り、物語は思わぬ着地を見せる。
「思わぬ」とは言ったものの、察しの良い観客なら何となく着地点は予想できただろう。日本人の奥ゆかしい感覚からすれば違和感もなくはない”衝撃”の結末。それでも、清々しい気持ちでエンドロールを迎えられるのは、人間味溢れる二人へ感情移入できる展開があってこそだろうか。邦画であればじっくりと時間をかけて描写されそうな終盤の展開を、小気味よくコンパクトまとめる感じがフランスっぽいのか、カリオン監督の持ち味なのか…いずれにせよ90分余りの心地良い時間を過ごせたことに間違いはありません。
映画を彩る音楽もまた印象的。ダイナ・ワシントン「This Bitter Earth」がマドレーヌの淡い思い出のモチーフとして流れるほか、同じくダイナ・ワシントンの歌唱による「Sunny Side Of The Street」も心に沁みる(…というより朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が頭をよぎってしまう)。どういう事情か後者はサウンドトラック盤には収録されておらず、残念。
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