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悔しさすら感じられなかった『挫折』

人生において挫折って
どれくらい味わうものなのでしょうか。
そう多くはないと思います。

そして挫折って必ずしも
失敗したときに味わうものなのでしょうか。
わたしはそうは思いません。

なぜなら
わたしが挫折を味わったのは
コンクールに通らなかった時でも
受験に受かれなかった時でもなかったから。


わたしが挫折を味わったのは
大学に入ってから
ピアノを弾くことが、音楽を知ることが、
楽しくて仕方なくて
呼吸するかのように練習をする
あの人を見た時でした。

わたしが日々自分と戦いながら
ときには苦しみながら練習しているのに対し
その人は好きだという気持ちだけを燃料に
頑張れている。

自分と戦いながら練習するわたしには
正直限界が見えてしまっているし伸びも遅い。
でも、ただただ好きだ!
という気持ちで練習するあの人は
伸びの早さも可能性も桁違い。
だって音楽を好きでいる限り
無限に成長すると思うから。



ああ、この人には一生敵わないんだなあ。



そう思いました。
そこに悔しさは皆無で
俯瞰で自分を哀れむかのような、
別世界の人を見るような気持ちでした。




「その人を見たとき
正直、哀しかったんだよね〜
だって一生敵わないわけじゃん?」

なんの話の流れかは忘れたけれど
わたしが感じた挫折を
ふと友だちにこぼしたことがありました。

するとその子は言いました。

「う〜ん、まあ人は人だからね。」

人は人。
月並みの言葉だけれど
とても心が軽くなりました。

わたしはこれまで
この言葉の使い方を誤ると
自分自身を甘やかしかねない
と思っていました。
人は人、の正しい使い方はこれだったのか
とそのとき気づきました。



友だちは、こう続けました。

わたしとあなたが音楽にかける熱量って
けっこう近いと思う。
もちろん音楽は好きだけれど
一生練習していられるかと言ったら
それは出来ない。
たしかにその人には一生敵わないけれど
苦しみながら練習する私たちにしか
味わえないこともある

教える立場になったときに
その経験ってすごく大きいと思う。

ほんと、そうだよなあ。
我ながらいい友だちをもちました。




人生ではじめて経験した"挫折"のお話でした。

そして

わたしの大事な友だちの話でした。


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