【エヴァ考察】ゴルゴダベースについて(庵野秀明展)
今回は現在開展中の『庵野秀明展』で公開された制作資料を用い、ゴルゴダベースを検討します.途中経過報告なので,おおかた謎の確認になるであろうことを先にお伝えいたします.
1.新旧ネルフ本部
ゴルゴダベースというのは,本編ではダミーシステムの生産場所として名前だけ登場します.そしてこのゴルゴダとは別に,カルヴァリーベースというものも劇中では存在しました(上記2つ目の台詞).このように指摘するのも、聖書の世界ではこの2つの名称は同じ場所を指すからです(“ゴルゴダ“(ヘブル語)とそのラテン語訳の“カルヴァリー“.いずれも髑髏されこうべ/どくろの意).そこはイエス磔の場とアダムの墓があるとされる場所です(現イスラエルのエルサレム付近ですが正確な場所は2説あるようです).以前より劇中で両者を別に存在させた理由を課題としていたところです.
そして今回の展示で次の資料が開示されていました.Qのごく初期のイメージ案.
浮かんでいるネルフ新本部は旧ゴルゴダベースということが分かります.
2枚目で基地の向きがQの本部と同じになります.
このように制作初期では、Qで空に浮かぶネルフ本部はゴルゴダベースという設定があったようです.というのも,これらの資料の隣には第3東京市の本部が地下から持ち上げられたという案が展示されていました(下記画像).
つまり,本編で浮かぶ本部はゴルゴダベースではなく,第3東京市にあった旧本部ということになります.Q本編C-806では基地の壁のネルフマークに「3RD SHIN TOKYO BASE」とあるのでQの本部がネルフ東京本部であることは確定です.
ちなみに上記の資料にはそれぞれ日付が記してあります.上記画像から順に「'10 12/15」「'10 12/23」「'11 6/23」です.この日付からも,旧ゴルゴダベースのネルフ新本部案は没になり、第3新東京市のネルフ旧本部へ変更になったと推測できます.
また,Q以降で2つの基地が併存していたとは考えにくいため,結局のところ,ゴルゴダベースは空白の14年で第3新東京市に飛んできて破壊されたか,そもそも飛ばずにその役目を終えたのか等々が考えられます.どうなったのでしょうか.
ただし,どういうわけかQ以降本編のネルフ本部にはゴルゴダベースの名残りが見られます.変更の経緯について今後明らかになることはあるのでしょうか.
2.ゴルゴダベースの位置
仮にゴルゴダベースが第3新東京市に飛んでくるシナリオがあったとして、どこから飛んで来たのか.元々どこに存在していのかは気になります.
(1)旧南極?
まずはゴルゴダベースとカルヴァリーベースの名前の共通性から、これら2つがともに旧南極にあったと考えられるか検討しましょう.セカンドインパクトはヒトにより意図的に起こされたというのが一般的理解です.海の浄化であえて基地周辺すべてを吹き飛ばしヒトの住めない環境にしたのに、そこに再度基地を設けるということは想定しがたい(しかも後に日本に飛んでくるならなおさらそんな遠くに建てる理由は見出し難い).したがって、この説明は通らなそうです.
(2)新旧北極?
では次に実際にゴルゴダの丘のある、現イスラエルのエルサレム付近はどうでしょうか.ちなみに『:破』冒頭でお馴染みのベタニアも現実世界ではエルサレム付近に位置する土地ですが、たとえば『2.22』の付録冊子にはベタニアベースは旧北極にあるとされています(執筆・氷川竜介氏).
ちなみにセカンドインパクト後のエヴァの世界では、新北極が中東付近に位置することが指摘されています(ただしサードインパクト以前.下記記事参照).
この指摘に従うと,エヴァではベタニアは新北極付近に位置することになります.そういえば司令コンビが防寒対策していたような(破の次回予告).ひょっとして2人でエルサレムに向かっていたとか.
もっとも、空白の14年を描いたとされる破の次回予告との整合性は微妙です.この2人、本部幽閉を逃れてゼーレの本拠地を叩きに向かっていたとばかり思っていましたが、コンテではこの場所はチベットみたいな所だそうです(チベット高原でしょうか、確かに標高が高そうな空模様).まさか陸路でエルサレムまで?何だか某オラオラの日本からエジプトに向かう御一行のよう.しかし、どうやらあてもない旅のご様子で(コンテ「放浪中」)、なかなかつながってくれません.
もしかしたらゴルゴダベースはチベット辺りにあったのかもしれません.仮に基地が実際のゴルゴダの丘とは別の場所に存在したのなら、おそらく名前の由来はカルヴァリーベースのように場所との関連ではなく、基地の役割や基地で生じる出来事に由来するものになりそうです.また何者かが磔になったのでしょうか.
いずれにせよ制作途中の変更もあって直ちに結論を出すのは困難です.皆さんの考察の素材として参考になればと思います.
今回は以上になります.
なお庵野秀明展、展示物が多いのですべて丹念に見るとなると長時間要しますが、エヴァ展示スペースに座れる休憩スペースが設置されているでじっくり楽しめるでしょう(東京会場).
・参考文献
大貫隆ほか監修『岩波キリスト教辞典』(岩波書店、2002年)
木田献一・山内眞監修『新共同訳聖書事典』(日本キリスト教団出版局、2004)
山形孝夫『読む聖書事典』(ちくま学芸文庫、2015年〔初出は1992年〕)
画像:©khara/Project Eva.
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