【グリッドマン考察】アカネが見た6つの光
今回はグリッドマンから分離した6人目についてです.
1.問題の所在
まずは6人目とはどういうことか,から始めます.
これらの台詞よって,グリッドマンはアカネのコンピュータワールドにやって来た際に,アレクシスに敗北して新世紀中学生と分離していた,ということが明かされます.
また,同様に劇中の第1回冒頭の描写ですが,あのときアカネが見た光はグリッドマンが散り散りになったものだったことも分かります(下記画像).
問題は,この光が6つに散っていることです.
グリッドマンと新世紀中学生4人(キャリバー,マックス,ボラー,ヴィット)で5つ.で,残りの1人はどうした.これが今回取り組む課題です.
2.アンチのアクセスフラッシュ
ことの発端は雨宮監督の次の発言でした.
この発言は『グリッドマン ユニバース』で新世紀中学生レックスとなったガウマの設定について,彼は怪獣とヒーローの間の「狭間」の存在になったという文脈でのものです.ちなみに,ナイトも2代目もそうした中間的な存在であり,レックスはグリッドナイト同盟と新世紀中学生との兼任ということも明かされています(同頁).
さて引用に戻ると,ナイト(アンチ)がグリッドマンの欠けた6人目を補填したということですが,このことにより1つの謎が解明されます.それはTVアニメ最終回でアンチがアクセスフラッシュしたことの意味です.
このアンチくんのアクセスフラッシュは長らく謎でした.筆者の知る限りこれに関する考察はありません.
あのときグリッドマンが電光超人の姿を取り戻すことができたのは,裕太に融合したグリッドマンが覚醒したというよりも,欠けた6人目の穴をアンチが埋めたからだったという理解が成り立ちます.
つまり,フルパワーグリッドマンになっても本来の姿ではなかったり記憶が不十分だった理由は,そもそも1人欠けていたからということになります.
ちなみに「補填」とは通常代替品でするものであり,欠けたものと全く同一物の場合には用いない言葉でしょう.したがって,アンチはオリジナルの6人目ではありません.このことはグリッドマンが6つに離散した時点でアンチは未だあの世界に存在していないことからも明らかです.
では再び6人目はいったいどこに行ったのか.というか誰なのか.
3.黄色の瞳
6人目を考えるにあたり述べておきたいことは当該人物を作品内の人物から探したいということです.
なぜなら雨宮監督自身,次の(監督)作品の話が来たときにグリッドマンは完結しているためその続編を作る予定はなかったと話しています(例えば『SSSS.DYNAZENON超全集』83頁).そこから6人目の謎はアニメ内で一応分かる造りになっていると考えられるからです.あくまで憶測ですが.
これを念頭に置いて結論を先に言えば,6人目の正体は六花ママではないかと思うわけです.
まずはキャラクターの瞳の色分けから始めます.
実は瞳の色には設定があり,赤は怪獣,黄色のキャラは傍観者的,超越的存在だそうです(Blu-ray特典ブック第3巻65頁).
たとえば赤色はアンチや怪獣少女アノシラス(2代目).黄色のキャラは全部で3名でグリッドマン,アレクシス,六花ママです.これはスタッフさんがそう証言しています(上記特典ブックレット).
そのアレクシスと六花ママについて,実は先にキャストが決定し,引用するキャラはそのあとに決めたとか(同第2巻70頁).
そしてキャラクターデザイン担当の坂本勝さんによると,アレクシスと六花ママは監督曰く「このコンピューターワールドのキャラではなくて『SSSS.GRIDMAN』の台本を読んで,ストーリーを知っているというメタ的な部分を含む存在らしいです」(同巻84頁)とのこと.
ちなみにお二人が扮したキャラというのは,雨宮さんが第2監督を務めた『宇宙パトロールルル子』(2016年)のオーバージャスティス本部長とミドリです.
どうしてこのようなメタ的要素があるかというと,自社作品を本編で引用するのがトリガー,引いてはその母体たるGAINAXの恒例だからでしょう.
おそらくこのようなトリガー恒例の遊び要素として過去作のキャラを登場させることが決定し,そのことの作品世界上の説明,辻褄合わせ(設定)がなされた.
ではどのような辻褄合わせがされたのか.黄色の瞳という括りでみると全員アカネのコンピュータワールドの外からやって来た者たちです,グリッドマンとその敵役アレクシスについては,『電光超人』に倣っており特に説明不要といえます.
しかし,六花ママについては外界からの来訪者と言われてもよくわかりません.上記2名のように電光超人に引っ掛けることはむずかしい.最終回,実写のアカネの部屋にミドリの人形が置かれていますが,これはこのことの説明として挿入されたものではなく,むしろデザインの元ネタを示唆するためだと思いますし.
そこで本記事では次のように考えます.すなわち六花ママをグリッドマンの6人目とすることで同じく外からの来訪者,傍観者的存在と位置づけたのではないかと.六花ママの目がグリッドマンと同じ黄色なのは彼女はグリッドマン(の一部)だからという.
このように考えると,世界超越者としての黄色の瞳という設定を作品世界の枠の中に無理なく落とし込んで理解できるようになります.つまり社内の恒例だからというメタ的な説明だけではなく,作品世界と結びついた説明ができます.
というわけで,欠けた光の6人目の正体は六花ママという説でした.アレクシスによって早々にバラバラになったけれど,全員六花の家に揃っていたのです.随分特殊な設定を六花ママに当てたと思いますが,そもそもやろうとしていることが特殊ですし,当初続編を想定していなかったことも考慮すると多少無茶したというのは十分あり得る話かと思います.
ヒーローであるグリッドマンの一部が六花ママ(新谷さん)だったというのはなかなか笑える設定ですが,トリガーならやりかねません.もっとも,その6人目は新世紀中学生のように本人なのか,それともグリッドマンと裕太の関係のように本来の六花ママがいて融合したものなのか,といった細かいことはよくわかりません(そもそもそこまで設定してあるのかあやしい).
今回は以上になります.お読みいただきありがとうございました.
画像:©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会,©︎円谷プロ ©︎2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会,©TRIGGER・今石洋之/宇宙パトロールルル子製作委員会☆彡
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