詐欺とは呼べない程度の不誠実な営業②

昨日の続きになります。

ケース2 上流国民向けの会員制福利厚生サイトに出店しませんか?

勤めている酒蔵の昼休みに、知らない電話番号から電話がかかってきました。誰だろう、と思って取ると「大手企業や国家公務員など、何百万人も会員がいる一流企業の社員向けの会員制福利厚生サービスの代理人」を名乗るマーケティング会社からの営業電話でした。

昨日の定義に当てはめると、もうこの時点で怪しいですよね。

でも、最初説明を聞いた時には、具体的にどういうことなのかちょっと意味がわかりませんでした。詳しく説明を聞いているうちに、

・大手企業などでは社員への福利厚生の一環として、会員制のサイトを利用できるようになっている。

・その会員制サイトでは、様々な商品やサービスが割り引きで購入できる。

・会員制サイトは企業ごとに独自に作られているのではなく、外部委託されており、僕に電話かけてきたマーケティング会社は、その外部委託最大手企業から外注(ここ重要!)されて、その会員制サイトに掲載するための商品やサービスを探していた

・会員の要望を調べていたら、コロナの影響もあって、キャンプやアウトドアグッズへの関心が高いようだった。そこで色々調べているうちに、僕の作っている商品の存在を知って興味が湧いた。

という感じの話でした。電話で話している限りでは、丁寧で誠実そうな話ぶりです。もっとも、電話口でのそんな印象はなんの根拠にもならないわけですけどね。

実際僕もコロナの影響を見越して、アウトドア向けの商品を販売していたわけですから、自分が想定していた層と、まさに合致する話だとおもい、この営業電話に興味を覚えました。

営業であるので、話半分に聞くとしても、基本的には高年収の客層にアピールできそうな感じではあります。

また、福利厚生のためのサイト、というのが魅力的に感じました。

僕が販売しているローリングストック食は、まず12,000円程度の基本セットをかってもらい、それに加えて月々2,000円程度のサブスクを契約してもらう、という形です。このローリングストックの会員数が当初なかなか伸びなかったのが悩みの種でした。

https://onansasa.stores.jp/items/6135a541a1027529d36e597a

基本セットがなければサブスクを利用するのは困難ですが、初期投資12,000円というのはけっこう高いハードルなのかも、と考えていました。防災用にこういうものを用意しておきたい、という需要は絶対にあるはずです。しかし、自分の金で12,000円は高いと思ったとしても、会社からの福利厚生として貰えるのであれば、欲しがる人も沢山出てくるかもしれない。そして、その人たちがサブスク契約してくれたら、月々の安定した収入に繋がるのでは、という計算が浮かびました。

「面白そうな話ですが、なにか条件はあるのですが?」と僕が訪ねると、相手は申し訳なさそうに、

「初回登録料に五万円と、登録してから二年間の管理費として二万円かかります」

と話しました。ああ、この時点で、さっさと切ったほうが良かったな、と思ったのですが、一応適当に応対して電話を切りました。

まあ、九割方詐欺だろうな、と思ったのですが、調べてみたら確かにそのマーケティング会社が言っていた、大手企業向けの会員制福利厚生サイト自体は存在するようでした。

しかし、ここが巧妙だな、とおもったのですが、

会員制サイトなので、会員にならなければサイトの内容を確認できないわけです。

そして、そのマーケティング会社から後に来たメールでは、ビデオ通話でその会員制サイトにたいして詳しい話をする、と書かれていました。

そして企業の内部の話にもなるから、コンプライアンス的に、セキュリティが守られる必要がある。つまり、ビデオ通話は録画したりしちゃダメよ、などとメールにはありました。

あまり聞いたことのないビデオ通話アプリをダウンロードしておいてくれ、ともかいています。

後でそのマーケティング会社を調べたところ、体験した人の話では、ビデオ通話での説明会では大手企業の名前がバンバン出てきて、ものすごく売り上げが伸びますよ、みたいな話になるそうです。

しかし、実際に登録して効果がなかったときに、「言っていた話と違う」と証拠に出されないために、わざわざそうやっているのかな、と個人的には感じました。

貴重な昼休みの三十分を使ってこのような怪しい営業の相手をしてしまったことは正直腹が立ちましたが、それでもこの会員制サイトについては多少の興味が湧きました。

先述の通り、このサイトに登録されたなら、ローリングストックの入り口としては良いのかもしれない。このような怪しげな業者を通さなくても出店する方法があるのなら、出店してみても面白いかもしれません。

その前に、実際にこの会員制サイトがどのようなものなのか実態を知ってみたいと思いました。

会員にならないとサイトの内容が見られないため、基本的には例のマーケティング会社からビデオ通話で説明を受けるしかありません。しかし、そこで聞く話など都合が良い話ばかりになるに決まっているので、客観的な情報を知りたいわけです。

幸い、弟夫婦が大手企業に勤めているので、この手のサービスを利用したことがないか聞いてみると、電話で聞いた業者とは異なるものの、似たようなサービスは福利厚生として会社から提供されている、とのことでした。

で、実際どうよ? と聞いてみたら、

「あるにはあるけど、使ったことないなあ」という答え。

あくまで僕の弟の意見ですが、

「たしかに割引されているけど、そんなにめちゃくちゃ安くなる、という感じでもないし、登録されている商品とかサービスもあまり魅力的なものが無い」とのことでした。

このサイトに登録されている商品やサービスがどのように選定されているかは分かりません。ですが、僕にかかってきた電話のように、「販売先に困っている商品を、登録料払って貰って登録している」なら、登録料の分コストがかかるから原価が高くなるでしょう。仮に福利厚生として割引されているとは言っても、元が高ければたいして安くもならないのかもしれません。

そして、穿った見方かもしれませんが、福利厚生の一環として採用している会社としても、こういうサービスを提供するコストはかかっても、利用されないほうが負担金額は少なくなるはずなので「利用者の満足感を高めなければ」というインセンティブもないでしょう。

「会社としては福利厚生やってあげてるよ」と形式的には提供しておいて、実際には利用されない方が得だとしたら······まあ、そんなセコいこと考えているか知りませんが、中身にこだわる必要はないですね。

もしかしたら、この会員制サイトをガッツリ使っている高所得者はたくさんいるのかもしれません。

しかし、僕が調べた範囲では「存在は知っているけど、わざわざ使おうと思った事はない」という意見が多かったので、このサイトに登録して貰う必要はないのかな、と個人的には感じました。

この手のサービスは色々あるみたいで、昨日も別の業者から「某大手電化製品販売店の会員登録者向けのサイトに登録しませんか」などというメールが来ました。登録者数はなんと3000万人だそうで、凄い話だな、と思いました(笑)。

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