四手網小屋に行った話


先日岡山県九蟠漁協の四手網小屋に行ってきました。

四手網小屋

四手網小屋とは、海の上にせり出した建物に一辺五メートル以上の大きな網が付属した施設のことです。この大きな網を海の中に沈めてから、頃合いを見て網をあげると、その上を泳いでいる魚をすくい上げて捕まえることができます。

九蟠漁協の四手網小屋については既に素晴らしい体験記が存在するので、詳しいことは下記を読んでいただいたほうが良いとは思います。実際僕たちも、この体験記を読んで今回行くことに決めたのですが、現地に行った際に感じたことや「こうしておけばよかったな」という後悔も少なからずあったので、忘備録代わりに記しておきます。


予約方法

九蟠漁協のHPにもありますが、小屋の持ち主に直接電話を掛けて予約交渉を行う方式です。
地元のリピーターが主な客層の様で、初見の島根県人が予約とる際には、やや戸惑う点が多かったです。

僕が小屋の持ち主に電話をかけると「いつ、何人で来るか」を尋ねられました。
「○日に六人で伺います」と答えると「じゃあ、○番の小屋が空いているから」と言われて、どうやらこれで予約は完了したようでした。
予約とった当日に指定の小屋に着くと、鍵は開いているけど中に誰もいません。持ち主に電話かけると「鍵開いてるから、勝手に入っていて下さい。今用事があって九蟠にはいないので、また後で小屋に寄ります」とのことでした。
小屋でしばらく待っていると、夕方ごろ持ち主のおじさんがやってきて、小屋の説明と注意点を説明してくれました。
この時に料金を払うと「朝八時までってことになってるけど、出るのは昼間でなら何時でも良いから。ただしみんなで使う小屋なので、小屋の後片付けと出たゴミの処分だけはお願いします」とのことでした。

ずいぶん気楽というか、軽いというか、地元の常連の善意と良識で成り立っているようなシステムなので、余所者としては逆に「本当に良いのかな?」と恐縮したりもしました。そして、今後もみんながフランクに四つ手網小屋を利用し続けられるよう、新参ものは地元民以上に気を遣って丁寧に小屋を使う必要があるな、とも思いました。

アクセス

四つ手網小屋のある九蟠地区は、岡山市内から車で十五分ほどの距離なんですが、小屋の周辺は干拓によって造成された田んぼと工場地帯に囲まれているので、「すこし走ればだいたい何でも買えるけど、車がないとどうにもならない」立地です。
上の記事ではタクシーを利用している様ですが、自家用車かレンタカーがないとすごく不便なので、できれば一台は車があった方が良いでしょう。

九蟠漁協の住所をナビに入れると、四つ手網小屋が立ち並ぶ小屋付近に着きます。海沿いに走っていけばすぐに小屋が見えるので、あまり迷うことはないと思います。
小屋の入り口付近に持ち主の名前と小屋番号が記されているので、予約した小屋の番号を探します。
ちょっと分かりにくいのですが、小屋の前にある退避所のようなスペースが駐車場となっています。

営業時間

HPなどを読むと、営業時間は17:00~8:00と書かれています。
これは、小屋の持ち主さんが日中他の仕事をしていたり、日が落ちてからの方がたくさん魚がとれたりすることなどから、このような表記になっているようです。
ただ、僕が借りた小屋の持ち主さんの場合、早く着いて先に荷物を下ろして置くくらいはかまわないようでした。
遠方から来る場合、どうしても荷物は増えますし、荷解きの時間もかかります。また、買い出しや晩飯の準備、銭湯に行く時間なども考慮すると、二~三時間前に着いておいた方が良いかと思います。
僕達の場合、
15:00 小屋着。荷下ろし。小屋の設備確認。
16:00 買い出し。
16:30 再び小屋に着。晩飯の準備。持ち主のおじさんに料金を支払う。
という感じでした。
シャワーのない小屋が大半ですので、小屋に入る前に銭湯などに寄っておいた方が良いかもしれません。

(たぶん)持っていった方が良い物

小屋によって備え付けの設備は様々です。
ガスコンロ、水道、エアコン冷蔵庫などは標準装備のようです。包丁や鱗とりなどの調理道具や、フライパン、鍋、土鍋、食器類なども置いてある事が多いです。前の滞在者がデポした醤油や油などの調味料があることもあるでしょう。
ただし、お世辞にも清潔とは言えないし、包丁や鍋は100均で売っているようなちゃちな物なので、まずは一度小屋に行ってどのような道具が揃っているか確認することをお勧めします。
僕は、鱗とりと小出刃、米を炊く用のフライパンとキッチンペーパー、ジップロックなどは持参しました。
途中、ザルとボウルと割りばし紙皿などは100均で購入しましたが、これらは大変役に立ちました。
紙皿は使いにくいので、いっそ100均やホームセンターなどでそれなりにちゃんとした食器を買うのも良いかもしれません。持って帰るのは大変ですが、きれいに洗ってから小屋に寄贈するという手もあります。実際、小屋の中にある鍋や食器はそのようにして増えてるのではないかと思われます。

その他、個人的に持っていくと良いな、と思ったもの。
・油と天ぷら粉
四つ手網でとれるものは1cmくらいの小魚やオキアミなどの小物が多いです。
こういった物はかき揚げにするととてもおいしく食べられます。というか、他の調理法はちょっと思い付かないので、かき揚げの準備は必須です。

・塩、醤油などの基本調味料
最低限塩と醤油があればおいしく食べられると思います。
今回はママカリとかコハダがけっこうとれたので酢締めにしましたが、大変美味しかったです。とれる魚種にもよりますが、酢と昆布もあったら良いかもしれません。

・蚊取り線香
今回は夏場に行ったので、蚊がけっこういました。

・米
一晩小屋にいるとお腹が空くので、ご飯があると嬉しいです。今回は持参した米と、スーパーで買った鯛で鯛めしを作りました。万が一なにも取れなくても、鯛めしがあるので心の余裕ができました。

・大きめのポリ袋
出したゴミは持ち帰るのが原則なので、大きめのポリ袋を何枚か持っていった方が良いと思います。

・釣り道具
目の前が海なので、当然釣りもできます。僕らが借りた隣の小屋の人は何本も竿をだして、うなぎでも狙っているようでした。
僕らも試しに竿をだしてみましたが、驚くほど魚影が薄くて、当たりすらありませんでした。

・BBQセット
BBQできるスペースを併設した小屋が多いので、BBQをする事も可能です。
僕らは今回やりませんでしたが、BBQコンロ、椅子、火ばさみなどは置いてあるようでした。炭と網を買って持っていけば大丈夫だと思います。

BBQスペース

調味料などは現地スーパーに行って、地元のローカル製品を買うのも面白いかもしれません。
醤油味噌酢辺りは大容量で買って、残った分はお土産として持って帰れば家でも岡山の味を楽しめます。

四つ手網でとれるのは基本小魚なので、調理法が限られます。フードプロセッサーを持っていって広島名物の「がんす」とか宇和島の「じゃこ天」なんかを仕込んで、お土産にするのも面白いかなーと思いました。というか、これらの料理はそもそもが、こういう値段の着かない小魚を食べるための方法だったのでしょうから、理にかなっていますね。
「べいか」という小型のイカがそこそことれるので、まとまった量になるのなら、甘口の地醤油に漬け込んで沖漬けにしても良いですね。
「しらさえび」が入ったなら、紹興酒で「酔っぱらいエビ」とかも良さそうですし、わたりがにでカンジャンケジャンとか、アミエビの漬けなんかも良いだろうなーと思いました。
その場でとって食べる楽しみもありますが、一味つけてお土産にするのもキッチン設備のある四つ手網小屋ならではだと思いますし、一つの楽しみだと思います。

小魚を塩漬けにしたスクガラスもどき


四つ手網って楽しいの?

四つ手網は、老若男女問わず誰でも(比較的)安全快適な環境で、経験や知識がなくても気楽に参加できるとても楽しい海遊びだと思います。
僕らは大人六人と子ども二人(四才と二才)で小屋に行きましたが、網をあげるだけなら小さな子どもでもできますし、どんな魚がとれるかは完全に運次第なので誰もが楽しめます。
逆に言うと、釣り好きの人にとっては工夫のしようがないので少しもどかしく感じるかもしれません。
もちろんそういう人は四つ手網の横で竿を出してみるのも良いと思いますが、今回は時期の問題か場所の問題か、非常に魚影が薄く感じました(小さめの針に青虫着けて投げても、アタリすら来なかった)。
四つ手網でとれる魚もせいぜい数センチそこらの小魚ばかりです。
「うなぎとかヒラメの大物がとれるかな?」などと欲深く期待値を上げて行くところではなくて、BBQや持ち寄りの料理を食いながら酒でも煽って、たまに思い出した人が網を上げては小魚を掬う。「またかき揚げかー」などと言いつつ、それはそれでおいしく頂き、アカエイの上がる頻度にしばしば閉口して、万が一大物が入ったら一同大盛り上がり、くらいの空気感で地元の人も楽しんでるんじゃないですかね、たぶん。
今回行ったメンバーはみんな四つ手網を大いに気に入ってくれた様で、口々に「また行きたい」と言ってましたし、上の娘にいたっては、帰宅の間際になって「小屋から出たくない、もっと魚とりたい」と大泣きして地団駄踏むほど楽しんでくれた様です。


小屋に着いたら初手鯛めし(鯛はスーパーで買った岡山産)。これさえ作っておけばもう負けはない。
四つ手網で上げた魚を長いタモで掬いとります
一投目。ヒイラギが多め
小魚はかき揚げにすると超おいしい。ニシナPBの天ぷら粉が非常に良い仕事をしてくれました。
岡山名物ママカリ(たぶん)。この後酢締めにしました。
アカエイの襲来に怯える民草
早秋の雲と朝焼けの四つ手網小屋。
帰宅準備をほぼ終わらせた頃合いに、嫁さんが「最後にもう一回だけ!」といって網を上げたらこの日一番の大物。ボラだけど臭みはなくおいしく頂けました。
持って帰ったボラと、途中で買ったこちの洗い。涼しげで良いですね。


まとめ


「清潔ではない環境には耐えられない」とか「魚が苦手」とかでなければだいたい楽しめるかと思いますので、BBQとかよりも人を誘うハードルは低いかもしれません。なんなら、やろうと思えば外でBBQだってできますし…
もし、四つ手網小屋を借りるのであれば、十人前後の人数を集めた方が楽しめるかもしれません。
料金は小屋単位で支払うので、頭数が多い方が割安ですし、あまり少人数だと網を上げるのが段々億劫になってくるので…
とにかく気楽に楽しめるのが四つ手網の良さだと思います。近所の人は軽い気持ちで一度訪れてみてはいかがでしょう?
小屋の片付けとゴミの処理だけは注意して、末長く小屋を利用できるように心遣いをお願いします。

家からは片道三時間弱かかるので頻繁に通うのはむずかしいんですけど、近所にあったら月一で通うのにな~。

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