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「春ピリカグランプリ」朗読配信ウラ話/⑧「われらのピース」 作:くま

「春ピリカグランプリ2023」個人賞入賞作品の朗読について、読ませていただいた感謝と作品への向き合いを綴っています。

今回は「ピリカ賞」を受賞された、くまさんの「われらのピース」についてです。

作品朗読にとりかかろうと、ページを開いた時に目に入ったのがタイトルの写真でした。眼下に広がる雲海を前に佇む人影。もともとの写真を撮影された方のキャプションを拝見すると、まさに『富士山の山頂付近での写真』とのこと。物語の世界観にあった素晴らしい写真を見つけられたようです。

高校時代にワンダーフォーゲル部に所属していた私は、大雪山系の白雲岳の山小屋付近で、同じような光景を目の当たりにしたことがあります。
その瞬間、世界の心理のひとつに触れたような気がして、言葉を失い、呆然と立ち尽くした記憶があります。

「神聖」な瞬間に交わした家族の約束。
神話の本質は『父殺し』だ、という話を聞いたことがあります。『父殺し』とはギョッとする表現ですが、わたしたち人類は、何かしらの形で父・母から受け継ぎ、越えていかねばなりません。
「われらのピース」は『父との和解と継承』という、家族の中の小さな神話が語られたように感じました。

この作品を朗読するうえで意識したのは以下のような点です。
・主人公について性別を特定できる記載がなかったので、女性であろうと思いつつも、どちらともとれるようなトーンで。
(のちに、くまさんご本人が「女性」とコメントされていました)
・富士山頂のシーンは優しく、穏やかに。
・シーンチェンジの看護師の呼びかけは、ハッと気づく感じに。
・50代男性患者の声は、主人公の父を想起させるようなイメージで。
・回想シーンの父は、主人公が10歳(小4)で上に兄、姉がいることを加味して、40代前半くらいの想定で。

親のこと、家族のことに思いを馳せながら読み進められる今作、朗読もお試しいただけると幸いです。

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