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「空飛ぶストレート」/#ショートショートnote杯

※『新時代フォーミュラ列伝』より抜粋

そのコースの誕生は2046年だった。自動車の可能性を極めるフォーミュラマシンの歴史を一人の男が一変させたのだ。

男の名は佐倉洋一。

マシンの設計・開発を担当していた佐倉は2040年4月、トヨハ自動車社長・豊崎章夫から「新発想のコース設計」プロジェクトのリーダーを命ぜられた。

おりしもF1業界はSDGsの隆盛により、パワーダウン・サイズダウンを余儀なくされ、競技としての魅力を失いつつあった。「新プロジェクト」は名実ともにカーレースの未来を担う取り組みでもあったのだ。

F1の最大の魅力の一つはバックストレートでの最高速。しかし最高速を突き詰めると、ダウンフォースを失ったマシンが空中回転する事故に繋がりかねない。

その課題に佐倉は逆転の発想で挑んだ。

あえてバックストレートにジャンプを誘発する傾斜を作り「空中回転ありきのコース」を作る。

世にいう「空飛ぶストレート」の誕生であった。

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