おうち
思い出をダラダラ書いただけ。いつにもまして乱文、オチなし。
バブルの煽りを受けて父の店は調子が良かったらしい。レストランと式場が一緒になってて、稀に遊びに行くのが楽しかった。
その頃は庭のついた一軒家に住んでいた。
(元々はアパートで暮らしていたらしいが、ほぼ物心ついていなかったようで、思い出せない。
母が手術で家を空けた日、真っ暗な部屋でブラウン管が父の坊主頭越しに煌々としていたのだけを覚えている。)
当時はちっとも気に留めなかったが、素敵なお家だった。
お庭には大きな木が2本もあって、ピンクと赤のバラが沢山植えてあって、金木犀があって、ツツジの蜜もいくらでも吸えたし、雑草すら花束みたいな白い花をいっぱい咲かせていた。家の裏はドクダミがワサワサしてた。
玄関は吹き抜けの高い天井からシャンデリアがぶら下がってて、ステンドグラスがキラキラしてた。
テレビも冷蔵庫も新しいものだったし、オーブンレンジなんかは一等良い物らしく、引っ越した今も現役だ。
二階には大きな出窓のある広い部屋があって、その出っ張りに座って庭を眺めるのが好きだった。それ以外は二階でする事が無かった。
なにも置いていなかった。毎晩お布団を敷いて寝ていたから、夜以外は寝室も空室になった。
でも、図画工作で描いた絵や、学校でもらった賞状とかは額に入れて飾ってもらえた。
ご飯も美味しかった。食べたいものはいくらでも食べさせて貰えたし、良いお肉も事あるごとに食卓にあがった。
お父さんが買ってきた家電と家具と、仕事場から持ってくる食材、お手製のバースデーケーキ。
大きすぎて食べ切れないから小さくしてってお願いしたら、次からケーキが薄っぺらくなったのは可笑しかった。
いつかお父さんから逃げるためにずーっと空っぽだった、お父さんが買ったお家。
そのお家に、誕生日のほんの数分だけ停まるピカピカの赤い車。
お父さんはずっと気付かなかったのかな。
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