いつかの祈り

『プレイ・アゲイン・ミュージック』

以前書いた瀬田薫さんの夢小説なのですが、『MIU404』最終話を控えて書き残しておきたい気持ちはなんだろう、と考えたとき、これについて野暮ながら語っておきたいと思ったので、すこしだけ。

瀬田さんのやさしさについて考えた話です。
瀬田さんのやさしさが『ガールズバンドパーティ!』というやさしい世界でのみ通用するようなものではなく、その世界観からあらかじめ疎外されているような少女に対しても届くものだといいな、という、そういう祈りです。
だからこれは、『ガールズバンドパーティ!』の世界のはじっこにある公園でのお話になっています。

この夢主が図書館に行くようになる、というのは本当に悩ましい描写だったのですが、どうしてもここまではやらねばならないと感じたので苦渋の決断として入れました。
瀬田さんは彼女についてきっと本当に何も知らないと思います。瀬田さんに何か継続的な支援ができるわけではありません。けれど彼女が今後セーフティネットなどにアクセスできる機会を得たとき(あるいは得るために)、自分について他者に言葉で説明できるようになっている必要が、とても傲慢なものさしだけれど、どうしてもあるだろうと思います。
彼女は自分の内面を掬い上げたり将来の計画を立てるのが不得手な子供です。彼女の造形を詰める上で参考にしたのは少年院や性風俗のルポルタージュで、彼女が今後そういったところで生きていく可能性もあるのだろうと思います。もちろんそれもひとつの人生で、様々な楽しいことがあるでしょう。それでも、瀬田さんとの出会いは、自分自身がどう生きてゆきたいのか、しばしば苦しみを伴いながらも考えるきっかけになるのだと思います。

ここからは余談ですが、わたしはカセットテープに深夜ラジオのノイズ混じりの音楽を録って聴くという営みがとても好きです(わたし自身は世代じゃないのでやったことはありません)。
もちろんそれはアーティストにとって望ましい聴き方とは言えなかったでしょうが、それでもその音楽は多くの人に寄り添ったことだろうと思います。しばしば音楽メディアを買うことのできない環境の人にも。
録音のくだりはそういうわたしの浪漫から生まれています。

また、今回は音楽についてあまりよく知らない夢主の視点で書いたので(いやわたしもよく知らんけど……)、彼女がサビっぽいところと言っているのはおそらく間奏だと思います。アンプなどについて一切触れていないのも、彼女にはそれがわからないからです。わからないものは見えないし聴こえないので。裏を返せばそれが見えた時点できっと何かが開けているんだと思います。思いたいな。
瀬田さんは彼女の背景を知らなくたって彼女のことをちゃんと見つめているし、彼女は音楽のことをよく知らなくたって瀬田さんの音楽が聴こえている。そういうお話です。

奇しくも今日は『MIU404』最終話であると同時にCreepy Nuts×菅田将暉の「サントラ」がMステで披露されるようで、こういう話をするなら今日しかないと思いました。本当に好きな音楽なので……うれしいな……

この小説を書いておいてよかったな、と今だからこそ思います。拙い祈りだけれど、たとえ拙くても精一杯の祈りでした。
それでは、また心底から世界の幸福を祈れるようになる日まで、どうか。