初めて羊文学のライブを観た話
羊文学に惚れている。
初めて聴いた曲は『1999』だった。
この曲を聴いた時、「あ、これは好きになるやつだ」って直感で思った。
それから羊文学の曲を調べては色々聴き漁った。
MVを観たり、ダウンロードして何回も聴いたり、
ずっとお気に入りの曲もある。
着実にこのバンドへの沼を自覚しながら、いつかこの目でライブを観たいと思っていた。
でも思っていただけだった。
実際にライブに足を運ぶまでには至らず、そのチャンスがあれば...という思いだけをずっと温めていた。
そんな思いを実現にするタイミングが6月にまわって来た。それは岩手で初開催された野外フェス「CHAGU CHAGU ROCK FESTIVAL 2024」
このフェスが気になったのは大好きな日向坂46が出演するから。
どんなフェスなんだろうと、公式ホームページを調べていたら出演アーティストが目に飛び込んできて。日向坂が出演するその同日に、羊文学も出演するというではないか。
ああ、これはもう。これはもうそうだ。
このチャンスを逃したら、私はこのバンドを目にすることはこの先きっと無いと本気で思った。
「これはもう行くしかない」
行くと決めたその日に岩手行きの新幹線チケットを予約した。
"好きなもの"がもたらす行動力は時にすさまじくて、超インドアな私を突き動かしてくれる。
岩手まで遠いなとかごちゃごちゃ考えていたことが頭から消えていた。もはや距離とか関係なくなっていた。
"今"見るべきか、それとも、"いつか"見る日のために取っておくか。
ほとんど勢いに近い決断だったと思う。
そうしてフェスの日が近づくにつれて、陽子ちゃんに会える楽しみと初めて羊文学を見れるワクワクは高まっていった。
その時の気持ちは「楽しみ」以外のなにものでもなかった。
迎えた当日。
空、いくらなんでも晴れすぎていた。
これが太陽に愛された日向坂......と思うほど清々しいくらいに快晴だった。
このフェスはどこから観ても、アーティストとの距離が近く感じられた。
首を長くして待っていた羊文学の出番が来る。
この時、幸運にもスタンディングの最前列へ行くことができた。
心臓がバクバクしていた。
「ついに羊文学のライブが観れる。やばい」
次のステージの準備をするために忙しなく動き回るスタッフを見ながら、まだかなあとソワソワしながら待っていた。
そんな心の準備もできていないところに、メンバーがステージ袖から登場する。
出て来ただけなのにカッコよく見えて、ふぁっと声にもならない声が思わず漏れてしまった。
スッと登場したメンバーは颯爽とした感じで、生で見た塩塚モエカはあまりに綺麗だったし、淡い感じで可愛かった。今にも消えそう。
私のほぼ目の前に来た塩塚モエカを、朧げになりつつある記憶の中で今でも鮮明に刻みつけられているままに書くとそう見えた。
メンバーの登場にザワザワし出す観客に、塩塚モエカが微かな声でマイクに向かって呟く。
「まだだよ」
その時のこの瞬間が、なぜだか、私に刺さった。
そのまま流れるように一曲試奏して去って行った。何なんだ、あのカッコよさは。
そして、本番になるとゴリゴリの生音を会場に響かせ一気に観客を惹きつけた。
和むMCとのギャップにやられた。
つまりこの日、羊文学というバンドの音楽とその存在に完全に惚れてしまった。
セトリも全てが最高だった。
『Hug.m4a』に『OOPARTS』、『光るとき』、『more than words』etc...
チャグロックに来て良かったなあと、帰り道その日のセトリを耳に流しながら心の底からそう思った。
私の中でこのバンドへの解像度はまだはっきりしていない。
それでも「ああー!!大好きな音楽だ!」とただ
一心に感じることができた。
すごく好きなものって自分をすごく焦せらせる。でもそれが心地いい。それでしか得られないカッコいい!という気持ちが残っている。
歌は世につれ、世は歌につれ。と言うのであれば、今その曲は羊文学からひとつ選ぶと思う。
私は音楽が大好きで、そこにある音楽の明るさや楽しさを、たくさんの人がいいなぁと思っていることが、共感とは違うところでフェスで感じられた。他者の領域に踏みいることなく実感できているような感覚があった。
それに、今しか生きてくれない音楽はあるんだと思った。衝撃が走った音楽に脳みそ撃ち抜かれて、目が覚めた!と思った時、すでにそのバンドが解散してたら遅いんだね。
バンドが再結成するというのは、人が生き返るのと同じくらい奇跡みたいなものなのかもしれない。それはバンドに限らないけど。
グループも、その人も、同時代に生きてるってだけでも奇跡なのに忘れていたこと。
これから行きたかったライブも増えていくだろうけど、今その音楽が、その人が生きているなら自分から手放す理由なんてどこにもないな。
好きな音楽と好きな歌詞がまたひとつ増えていく瞬間が堪らなく好きだと実感した。
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