見出し画像

独立を後押しする曜日替わりカフェ One Table|千葉・松戸市

八柱駅から歩くこと4分。日本の道百選にも選ばれているさくら通りに、曜日代わりの店主が営業するカフェ「One Table」があります。omusubi不動産が創業当時、この物件の隣に事務所を構えており、私たちにとっても想い出の地。シェアキッチンという概念がまだ一般的ではなかった2016年から営業を続けるOne Tableからは、今や松戸で人気店を営むたくさんの卒業生を排出する場所になっています。One Tableの名付けの親であり、一緒に立ち上げを行ったTeshigotoの古平賢志さん、万歳夏恵さん。2022年3月までOne Tableに出店されていたkaumudi coffeeの白石あかねさん。現在のマネージャーであるomusubi不動産の岩澤、代表の殿塚というメンバーで、立ち上げ当初からのお話を伺いました。


プロジェクトのポイント

  • 殿塚が八柱というエリアに着目し、omusubi不動産の事務所を借りる

  • まだ一般的でなかった日替わり店主スタイルでオープン

  • クオリティを担保し継続していくためのルールづくりを行う


お話を伺った人たち

One Table創業期メンバー、Teshigoto・万歳夏恵
One Table創業期メンバー、Teshigoto・古平賢志
kaumudi coffee店主・白石 あかね
omusubi不動産の代表・殿塚建吾
omusubi不動産 街のコーディネーター 岩澤哲野

偶然生まれた日替わり店主という営業スタイル


───こちらの店舗の隣に元々はomusubi不動産の事務所があったとお聞きしましたが、物件とはどのような出会いだったのですか?

殿塚建吾(以下、殿塚) 僕が独立してomusubi不動産をはじめるころ、八柱エリアに事務所を構えようと思って、自転車に乗って探しに行ったんです。通っていた高校がこの辺で馴染みがあったし、松戸駅周辺よりも長閑で好きだったんですよ。さくら通り沿いで探そうと思って来てみたら、空きテナントばかりで(笑)、すぐに決めました。

───駅からも近くていい通りなのに、当時は閑散としていたんですね。

殿塚 そうですね。ただ、八柱にはOrganic CAMOOというオーガニックレストランと、今はなくなっちゃったけどSLOW COFFEEというコーヒー屋さんがあって好きなエリアだったし。この物件は一階がテナントで二階が住居なんですけど、トイレがちゃんと付いてるテナントは一つしかなかったのでそこにしました(笑)。

殿塚 そうしたら何の流れか、大畠稜司建築設計事務所さん、アンティークショップ、てんぷら旬菜天つねさんが次々と同じ建物に入居して満室になりましてその後お好み焼き屋さんがやめて一部屋空いたところで、大畠さんがカフェをやりたいと相談をしてくれたんです。

古平 同じタイミングで大畠さんから僕も話を聞いていて。最初は全国の日本酒を出す店をやりたいという話だったんじゃないかな。トノとは前から知り合いではあったんだけど別々のルートでね。

───古平さんは当時から飲食のプロデュースをされていたんですか?

古平 当時はまだ勤め人で週5で飲食の仕事をしていました。ただ、松戸駅の西口で個人で観光案内所をやっている「ひみつ堂」さんを借りて、不定期で「good music and books coffee stand」というコーヒースタンドを営業してたんです。趣味の延長みたいなお店でしたが、週7日働いていました(笑)。ちょうどOne Tableの話があったころに独立をしました。

殿塚 大畠さんと古平さんとどういうお店にしようかと話している中で、一人のオーナーがやるカフェではなくて、日替わりのシェアキッチンとして、ひとまずやってみようということになって。大畠さんが内装の設計をして、古平さんがネーミングやロゴ、オペレーションを計画しながら進めていきました。

───One Tableという名前はどういう想いで付けられたんですか?

古平 オープン当初はめちゃくちゃでかいテーブル一つだったんですよ。人が繋がる場所をつくりたいという想いがずっとあって。One Tableはいろんな食文化や生産者が一つのテーブルに集まって、つながる食卓というコンセプトなんです。結局テーブル自体は解体しましたが(笑)、想いは残っています。

殿塚 オープン準備もなかなか大変で。什器とかいろんなところからもらってきてみんなで運んだりして笑。だいぶ費用を抑えてつくりました。で、まずは日月の週2日オープンすることになったんです。

万歳夏恵さん(以下、万歳) オープン当初は古平と私でTeshigoto食堂という屋号で出店しました。古平が他の仕事で忙しくなってきたので、私メインで立っていました。週2日はいけるねってなった後しばらくして、友人のSunniy’s coffee&musicさんも別の曜日に入ってくれることになり、段々シェアキッチンになっていきました。

───八柱にはカフェも多くないということですが、反響はいかがでしたか?

万歳 ありがたいことに、始めた頃からお客さんは来てくださいましたね。さくら通りの奥に森のホール21という場所があって、イベントがあるときは人通りもあったりして。

殿塚 オープン前にプレイベントもやりましたよね。まだ内装もできてないからテーブルだけ持ってきて、古平さんがコーヒー出してくれて。すごいたくさん人来てくれましたよね。

古平 そうだそうだ、春くらいだね。ここでこういうお店やろうと思っているんですみたいな話をしながらね。結構人が来てくれたので、いけるんじゃね?と思ったよね(笑)。八柱にもおしゃれな若い人も意外といるんだなと。


気軽に始められるお店から、独立支援の場へ


───白石さんは現在コーヒー屋さんとして出店されているということですが、いつごろから入られたんですか?

白石あかね(以下、白石) 私はTeshigotoさんのFacebookで見てOne Tableのことを知りまして。お客さんとして来ようと思って前まで来たんですけど、おしゃれすぎて入れなかったんです(笑)。

殿塚 そういう人結構いますよね(笑)。

白石 近所だったので何度か来ていて、3回目でやっと入れました(笑)。そうしたら土曜日募集という張り紙が出ているのを見かけて。当時働いていた物販のお店が閉店することになったタイミングだったので、週1日なら自分でやってみようかなと。

古平 飲食未経験だっていうんでね、最初詰めたんですよ。飲食舐めんなよって(笑)。

白石 いや、ほんと仰るとおりで(笑)。最初はすごく緊張しながらやってました。今は松戸駅の近くのbuilding Cでym.というお店をやられているまゆみさんのアルバイトスタッフとしていろいろ教えていただきながら、少しずつ覚えていきました。

───今は何年目になるんですか?

白石 トータルで5年目になります。自分の屋号ではじめてからは2年半くらいですね。もうそろそろ独立して、別の場所でお店をはじめようかなとも思っているんです。One Tableには2年で卒業という流れもありまして。

殿塚 最初はそんなルールはなかったんですけど、コロナの時にOne Tableのあり方を考える機会があって。自分でお店をやりたいという人がきちっと出ていけるには、ある種の締め切りがあった方がいいんじゃないかと思ったんです。

白石 すごくいい制度だと思いました。言われたときはちょっと戸惑いましたけど(笑)。新しく入ってくる人も、独立を前提として入ってこれるので、勢いがある気がします。それぞれの店主さんがOne Tableを盛り上げてくれているので、5年前とは客数も客層も全然違いますよ。

古平 僕たちもOne Tableからは独立して、2018年からTiny kitchen and counterというお店を松戸でやっているんですけど、若いお客さんに「One Tableっていうお店知ってますか?」って聞かれちゃったりして(笑)。

殿塚 うれしいですね(笑)。

古平 omusubi不動産って、面白そうだなと思ったことを、業務範囲とか利益率とかを置いておいてやり始めるのがすごいよね。一人で突っ走るというよりも、周りを巻き込むのがうまくて、いろんなプロジェクトをいいチームでやっているなと。

殿塚 一人じゃ何もできないですからね。ただ、巻き込もうと思ってはなくて、この人に頼んだら楽しんでやってくれるかもみたいのがあるのかもしれない。そういうイメージが湧かなかったらお願いすることはないと思います。

万歳 それはちゃんとみんなにも伝わっていて、トノからお願いされたらちゃんと応えたいという想いがあるよね。ちゃんと人と人として仕事できてる感じがする。

殿塚 恥ずかしいね(笑)。

不動産屋がお店を経営する意義を問い直す


───オープンしてから運営体制はいろいろ変遷がありながら、現在はomusubi不動産が運営を再度担って、体制を整備している状況かと思いますが、昨年マネージャーを引き継がれた岩澤さんとして現在感じている課題はあるのでしょうか?

岩澤哲野(以下、岩澤) これまで運営する中でOne Tableのクオリティが上がってきているので、このクオリティを担保しながらどう継続していくかというのは、考えていかなければいけないかなと。新しく入ってくる店主さんにとっては、ある意味ハードルが高くなっているかもしれませんし、One Tableのブランドに甘えられちゃうという面もあるかもしれません。

───出店したいという方は結構いらっしゃるのですか?

岩澤 ありがたいことに応募は結構ありますね。募集していなくても問い合わせがあるくらいでして。審査基準を設けていたり、他の曜日との兼ね合いなど、One Tableがどうあるべきかは考えていきたいと思っています。

白石 岩澤さんは店主の気持ちをよく汲み取っていただいて、すごく話しやすいですし、とても助かっています。Facebookグループで各出店者が日報のようなかたちで報告をしたり、月に一度全体ミーティングも行っています。冷蔵庫の使い方のルールとか、細やかなところも整備してくださって。

岩澤 昨年はルールをつくる1年でしたね。新しく入られる方に最初に渡す書類が結構たくさんあるんです(笑)。ルールが多くて入るハードル高いかなあっていうのと同時に、運営側がしっかりやってるいい緊張感もあると思います。

───今後チャレンジしたいことはありますか?

岩澤 僕もようやく慣れてきて、これまでは古平さんたちが作り上げてきたOne Tableでしたが、これからは今いる人たちが作り上げていくフェーズなのかなと感じています。2年で卒業というルールがあるので、より学びの場としても機能していくように、レクチャー会をやろうとも話しています。

殿塚 2年で卒業とさせていただいているけど、そこに対して例えば事業計画のサポートとか、できることはいろいろあるんじゃないかと思っています。OBのみなさんからお店の立ち上げ方を教わる機会もつくれるかもしれませんし。もちろん、不動産屋として物件を一緒に探すなどもしていければと考えています。

万歳 本当に愛がありますね。

殿塚 いやいや(笑)不動産屋をやっていて一番つらいのって、お店が経済的な理由で辞めるときなんですよ。退去の連絡って本当につらい。それをなくすために、できることはなるべくやろうと思っています。


古平賢志・万歳夏恵
Teshigoto
松戸を中心に様々な飲食店の立ち上げや立て直し、フードイベント企画などを仕掛ける。
2019年にTiny kitchen and counterを立ち上げ、その三年後に群馬の山間部「六合村」にて新たなプロジェクトをスタート。

白石 あかね
kaumudi coffee店主
10年働いた雑貨店の閉店を期に退職し、カフェ好きが講じてOne Tableでアルバイトを始める。
2年後に同じOne Tableにて自家焙煎コーヒー店「カウムディコーヒー」を立ち上げる。
今年2022年3月末に卒業し、現在は東松戸の「ITAYA内」にて週2日お店を営業している。

殿塚建吾
omusubi不動産代表/宅地建物取引士
1984年生/千葉県松戸市出身
中古マンションのリノベ会社、企業のCSRプランナーを経て、房総半島の古民家カフェ「ブラウンズフィールド」に居候し、自然な暮らしを学ぶ。震災後、地元・松戸に戻り、松戸駅前のまちづくりプロジェクト「MAD City」にて不動産事業の立ち上げをする。2014年4月に独立し、おこめをつくる不動産屋「omusubi不動産」を設立。築60年の社宅をリノベーションした「せんぱく工舎」など多くのシェアアトリエを運営。空き家をDIY可能物件として扱い管理戸数は日本一。2018年より松戸市、アルス・エレクトロニカとの共同で国際アートフェス「科学と芸術の丘」を開催。2020年4月より下北沢BONUS 
TRACKに参画し、2号店を出店。田んぼをきっかけにした入居者との暮らしづくりに取り組んでいる。

岩澤哲野
omusubi不動産 街のコーディネーター/舞台演出家/theater apartment complex libido:代表。
1990年生/千葉県松戸市出身
学生時代に演劇にのめり込み、そのまま表現の道へ。20代の活動の中で色々な地域やまちに訪れたことがきっかけで、次の10年を地域の中から始めていきたいと思うようになり帰郷。同時に自身の演劇ユニットを集団化し、団体の拠点も松戸市に定める。松戸での活動を続けている中で、omusubi不動産の代表から「”まち”を舞台に演出してみないか」と声をかけられ、まちづくり事業にも参加。現在は、演劇とまちづくりのお仕事を通して、広く”場”の演出に奮闘中。
利賀演劇人コンクール2017にて優秀演出家賞(二席)を受賞。BeSeTo演劇祭2018(韓国開催)に日本代表として参加。百景社アトリエ・レジデンスアーティスト。


Photo=Hajime Kato
Text=Takehiko Yanase



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?